上海輸入博で開放姿勢明示日本企業も400社超出展

2020-12-18 10:29:15

陳言  王焱=文

今年、突然やって来た新型コロナウイルス感染症は、世界経済に大きなダメージを与えたが、効果的な感染症予防・抑制対策により、第3回中国国際輸入博覧会(以下、輸入博)は予定通り11月5〜10日、上海で開かれた。中国は今回、大変革の中にある世界に対して開放を堅持する姿勢を明示しただけでなく、世界経済の回復を後押しするために、再び中国の力で貢献した。

 

11月4日に上海で開かれた第3回中国国際輸入博覧会の開幕式では、習近平国家主席がビデオ形式で基調演説を行った(cnsphoto)

 

「世界に開放」

第3回輸入博の開幕式が行われた4日夜、習近平国家主席はビデオ形式で基調演説を行った。習主席は次のように強調した。各国は手を取り合って、協力・ウインウインと協力・分担、協力・ガバナンスの共同開放の促進に力を入れなければならない。中国は開放・協力・団結・ウインウインの信念を堅持し、揺るぎなく全面的に開放を拡大し、中国市場を世界の市場・共有する市場・みんなの市場となし、世界経済の回復を後押しし、国際社会により一層プラスのエネルギーを注入することを宣言する。

おととし11月に行われた第1回輸入博は、世界で最初の輸入をテーマとする国家レベルの大型展覧会だった。貿易自由化と経済のグローバル化、世界へ積極的に市場を開放することを趣旨とした。この2年、輸入博は世界各国の企業の高品質な製品・サービスが中国市場に進出するために「ファストレーン」を切り開き、各国企業がより開放された中国を理解するために一つの窓口を開き、またグローバル経済・貿易の発展のために多くの積極的な要因をもたらし、そして経済のグローバル化のために新たな原動力を注入した。

世界に向けて市場を開放・共有することは、中国にも多くのプラスの効果をもたらす。上海社会科学院世界中国学研究所の沈桂龍所長は、以下の考えを示した。第一に、中国の輸出入貿易がよりバランスを取ることは、貿易の持続可能な発展に有利である。第二に、中国の消費者の選択の幅は大幅に広がり、消費のクオリティーも一段と向上する。第三に、国内企業は輸入博を通して視野を広げ、競争意識とイノベーション意識が高まる。

3回目となった今回の輸入博は、世界的な新型コロナウイルス感染症まん延の影響を受けてはいるが、各方面の協力の願いと意気込みは少しも落ちていない。中国国際輸入博覧局の孫成海副局長による閉幕日10日の発表では、今回の博覧会の成約見込み額は年換算で累計726億2000万㌦となり、第1回の578億3000万㌦、第2回の711億3000万㌦も上回った。3年連続の成功を収めた輸入博は、すでに正真正銘の国際買い付け、投資促進、人的・文化交流、開放的協力の4大プラットフォームになり、世界が共有する国際公共財となった。

 

見逃せない市場チャンス

習主席は次のように述べた。今回の輸入博は特別な時期に開かれた。突然の新型コロナは、各国に大きな衝撃を与え、世界経済にも大きな傷跡を残した。中国が、防疫上の安全を確保した上で予定通りこのグローバル貿易の一大イベントを開催したことは、各国と市場チャンスを分かち合い、世界経済の回復を後押しするという中国の心からの願いを表している。

世界経済が厳しい冬の状態に陥った時、中国経済は最も早く安定・好転の状態を示し、今年第3四半期(7〜9月)にはプラス成長を実現した。このうち、貿易額は0・7%増え、実行ベースの外資導入額は5・2%増え、世界で唯一プラス成長を実現した経済主要国になっている。中国は14億の人口を抱え、中間所得者層が4億人を超す世界で最も潜在力がある大市場だ。どんな国と企業もこの「中国チャンス」を見逃すことはできない。

11月5日に行われた第3回輸入博の最初の記者発表では、1〜9月の実行ベースの外資導入額は1032億6000万㌦で、前年同期と比べ2・5%増えた。16〜19年に中国が受け入れた外資の総額は5496億㌦で、中国は17〜19年に3年連続で世界で2番目の外資導入国となっている。

商務部(省)外資司(局)の宗長青司長は、中国はすでに世界のクロスボーダー投資の「スタビライザー(安定装置)」と「避難港」になっていると述べた。さらに商務部は輸入博で「中国投資手引きサイト」を立ち上げ、引き続き対外開放を拡大し、外資の管理体制を整備し、開放的なプラットフォームを強化し、外国投資家の合法的な権益を保護し、ビジネス環境の最適化を続けることを表明した。

まさにこうしたことから、第3回輸入博の魅力は減るどころか増し、多くの世界トップ500社の企業や業界のリーディングカンパニーが続々と出展した。総展示面積は前回から3万平方㍍近く広くなり、世界トップ500社と業界のリーディングカンパニーから合わせて50社近くが今回初めて出展した。一方で、感染症の予防・抑制対策のために入場者数が大幅に抑えられたが、バイヤーの登録は40万人に達した。

 

14日間隔離でも参加希望

今回の輸入博は厳格な感染症対策を取った。これまでと違うのは、今年の輸入博は展示エリアでの小売り、冷凍・生鮮食品の試食を禁止し、輸入コールドチェーン食品のサンプル採取とモニタリング、消毒作業を強化したことだ。全ての出展・参加者と展示エリアのスタッフは全員PCR検査を受けなければならず、初めて入館する際は、7日以内の有効なPCR検査の陰性証明を提示しなければならなかった。

特に海外からの参加者は、入国前の14日間に自主的に健康モニタリングを行うこと、入国時に体温測定とPCR検査を行うこと、入国後は指定されたホテルで14日間の隔離・観察を受けること、さらにその5日目と12日目に再びPCR検査を受けること――が求められた。とはいうものの、多くの外国の企業家は、やはり遠路はるばる数々の困難を克服して上海にやって来た。

「隔離されても行く価値はありますよ」。今回の輸入博に参加した外国の出展企業であるニュージーランドの乳業メーカー「ザ・ランド」(Theland)の研究開発部門のロイ・バンデンク取締役はこう話した。「われわれはこれまで輸入博でずいぶん儲けさせてもらいました。こんなビッグチャンスは、もちろん見逃せませんよ」

ザ・ランドが得た利益とは、中国が輸入博で宣言した開放拡大の約束を現実化したものだ。牛乳を例にすると、これまで輸入牛乳は中国の店頭に並ぶまで8日以上かかっていたが、今ではたった72時間でニュージーランドの牧場から中国の消費者の食卓へ届く。これまでの輸入博で行ってきた宣伝により、ザ・ランドの中国向け牛乳の輸出量は、毎週3万本から同8万本に飛躍的にアップした。今では中国市場はザ・ランド乳業の業務の重心となった。それゆえ、バンデンク氏は自ら輸入博の現場に足を運び、さらに販売ルートを開拓しようと決心したのだ。

 

輸入博が無事に閉幕し喜びを爆発させて記念撮影するボランティアたち。輸入博期間中4000人余りの大学生ボランティアが大会運営をサポートした(cnsphoto)

 

感染対策の「神器」お目見え

今回の輸入博の商業企業展示には、食品・農産品、自動車、技術・設備、消費財、医療機械と医薬・ヘルスケア、サービス貿易などの6大展示エリアが設けられた他、新たに公衆衛生・防疫、省エネ・環境保護、スマート旅行(移動)、スポーツの用品・イベントの4大専門エリアが設けられた。

この中でも、医療機械と医薬・ヘルスケア展示エリアの公衆衛生・防疫の専門エリアが初めて設けられ、各国企業の先進的な公衆衛生・防疫の製品と技術が展示されていた。新型コロナ予防・抑制活動において活躍した各種の「神器」も次々に公開されていた。

米国のダナハー(上海)企業管理有限公司は、スピード感染検査キットを展示した。これは、わずか36分で、新型コロナ肺炎・A型とB型のインフルエンザ・急性呼吸器(RSウイルス)感染症など、4種類のウイルスを検出することができる。このような高性能の検出「神器」は、臨床に的確で実行可能な診断根拠を提供すると同時に、医療組織へのプレッシャーを軽減する。

ドイツの自然空気エネルギーソリューション有限公司は、感染症の予防・抑制に当たる医療スタッフなど感染のリスクが高い集団からの特別な対策要求に応じ、ドイツ「Air Estetic」の医療用個人防護システムを持ってきた。これは、空気中の有害微粒物質やウイルス、細菌による侵入・感染から医療スタッフを守るのに役立つ。着脱が便利で使用感も優れており、防護性能は良い。

この他にも、フランス「airinspace」の過酸化ミスト消毒機は、空気や物質の表面を余すところなく徹底消毒する。スイス「Schulthess」の医療用マット洗浄・消毒設備は、CT検査室などの空間を素早く殺菌する。英国「DDC Dolphin」のパルプ製便器粉砕処理機は、患者の汚物の高速消毒処理などを行う。参観者は、輸入博でこうした各国のさまざまな優れた防疫装備を見ることができた。

著名企業の3Mも、今回の輸入博に傘下の防疫製品全シリーズをこぞって出展した。参観者は没入型アプリのシーンを通し、3Mのさまざまなタイプの安全・防護、医療健康製品のバックボーンにあるイノベーションテクノロジーや研究開発の理念を理解した。3Mは、最も早く中国に進出した米国企業の一つだ。また中国も、3Mの米国以外で最大の単一市場となっている。

3Mグレードチャイナエリアの瑋莫林総裁はこう語った。「今回の輸入博は、中国のさらに深まる改革や対外開放の拡大、ビジネス環境の改善という前向きなシグナルを発信しています。われわれは3年連続で輸入博に参加しており、この場を借りて、さらに多くの人に3Mのブランドと製品を良く知ってもらいたいと願っています。現在、感染症の予防・抑制は常態化しており、中国経済は急速に好転しています。われわれは、中国の消費者のハイクオリティーな製品や高い付加価値サービスに対するニーズが大きく高まっているのを見ています。これは3Mに対し、さらに広い市場とより多くの協力の機会を提供してくれています」

 

マイクロソフトのブースでは、人間そっくりのロボットが参観者の注目を浴びていた(cnsphoto)

 

目白押しの「初公開」「初出展」

バイヤーの心をつかむため、今回の輸入博で多くの企業は、次々にイチ押し製品を「初公開」「初出展」として強調した。家庭用オーダーメード化粧品や電動ホイール式掘削機のコンセプトモデル、360度死角なしの医療従事者防護システム……大まかな統計によると、今回の輸入博で世界初公開・アジア初デビュー・中国初出展の新製品・新技術・新サービスは400余りに上った。そのうち、世界初公開のものが半分以上だった。

工業技術・設備展示エリアで、エプソンは水を使わない紙の再生システムを展示した。たった5秒で使用済みの紙は新しい再生紙に変身し、多くの注目を浴びた。展示会場の担当者によると、この「プリント―再生―プリント」というクローズドシステムソリューションは世界初で、今回の輸入博でアジア初公開だという。「開幕してから、多くの省の調達団からの問い合わせを受けました。少なからぬ政府機関もこの設備に興味を示していました」

ゼネラル・エレクトリックの輸入博への出展は3回目になるが、今回は初めてダブルブースの形で出展しただけでなく、同社の最も効率の良いガスタービンや1機の出力では最大の陸上風力発電機を含む「三つの初出展と二つの初公開」を持って来た。

こうした「初公開」「初出展」が今回の輸入博に集まり、お目見えしたことは、中国が進んで輸入を拡大し市場を開放することに対する各国企業の真摯な対応であり、中国市場へのこれまで以上の重視の表れでもある。中国市場の巨大なビジネスチャンスについて、多くの出展企業は、「輸入博は絶対逃がしてはいけないデビューの舞台だ」と考えている。今回の輸入博で赤い果肉のキウイフルーツを出展したニュージーランドのゼスプリ社のダニエル・マセソンCEO(最高経営責任者)は、「赤いキウイは国際市場でもまだなじみのない新品種です。輸入博でこれを初披露したのも、中国市場をより深く開拓していきたいからです」と述べた。

 

参観者が絶えなかった自動車エリアのテスラモーターズのブース。中国の新エネルギー自動車市場は急速に成長しており、10月の新エネルギー自動車の販売高は前年同期比で104.5%増を記録した(cnsphoto)

 

今回の輸入博で初めて登場した「公衆衛生・防疫専門エリア」で、仏サノフィ社が出展したスマート無人ワクチン接種ボックス。同エリアでは、国際的に先進的な公衆衛生・防疫製品と技術が展示された(cnsphoto)

 

食品・農産品展示エリアに出展した米穀物メジャー・カーギルのブースには、揚げたての「チキンナゲット」の香ばしい匂いが漂う。実はこれは大豆やエンドウ豆などが主な原料の「人工肉」だ(cnsphoto)

 

日本企業も負けず積極出展

今回の輸入博には、100余りの国・地域から2000社以上の企業が参加した。その中で、米国企業の展示ブースの総面積は最も広かったが、出展企業の数からいえば、400社を超える日本企業がやはり一番多かった。

三菱電機やオムロンなどが出展したロボット開発の最新成果は非常に目を引くもので、ブースは多くの来場者でごった返した。日本貿易振興機構(JETRO)の手配で、多くの日本の中小企業もかなり広い出展面積を確保し、地方の特産品からヘルスケア・介護用品までさまざまな製品を展示していた。

資生堂は今回、展示面積を昨年の2倍の500平方㍍に拡大した上、来年から中国市場に進出する同社の最高級シリーズ「THE GINZA(中国名は御銀座)」を出展した。資生堂(中国)の藤原憲太郎CEOは、「資生堂としては、中国市場の旺盛な消費欲と購買力に大変期待しています」と意気込みを語った。

「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングは今年が初出展だったが、約1500平方㍍に及ぶ広い展示ブースと巨大な広告看板はとりわけ人目を引いた。実店舗の営業は新型コロナの影響を受けたものの、ユニクロの中国でのオンライン売上高は2倍以上増えたという。

不二越は3年連続の出展で、1300平方㍍余りの展示ブースは工業技術・設備展示エリアの「一等地」にあった。不二越(中国)の劉暁兵副社長によると、新型コロナに大きな影響を受けたが、中国市場での売り上げは新記録だったという。現在、中国での売上高はアジア全体の50%を占めており、北米を上回って同社にとって世界最大の市場となっている。

「一般的な業界の展示会と違って、輸入博は業界を超えたプラットフォームです。会期中は毎日、医療やアパレル、衛生設備など各業界の関係者が来て、問い合わせを受けたり交渉したりしています。クライアントのニーズからヒントを得て、そのニーズを満足するために開発した新技術も多いです」と劉副社長は話した。「輸入博で知り合った江蘇省のある医療設備の製造企業とビジネスパートナーとなり、すでに約10件のシステムソリューションを提供しました。これからまた数千台にも上るロボットの注文が入ると見込んでいます」

パナソニックは今回の輸入博に空気清浄機やエアコン、介護・ヘルスケア用品などの関連製品を出展した。「今年前半、新型コロナが猛威を振るっている時でも当社の売り上げは成長し続け、10%増えました。こんなに素晴らしい実績を得られるのは、中国をおいてほかにありませんね」とパナソニック中国・北東アジア社の本間哲朗社長は評価した。

現在、中日の企業間の協力はやり方が多様化し、しかも絶えず進んでいる。輸入博期間中の11月7日に開かれた中日先端技術交流・マッチング会での、JETRO北京事務所の高島竜祐所長の話によると、中日はすでに第三国でこの交流・マッチング会のような「共同革新」の協力を展開しており、これまでの経験から見れば、成功の鍵は金融や法律、商業・貿易、インキュベーションプラットフォームなどを含む「複合構想プラットフォーム」の構築にあり、そのために協力企業による共同革新が求められているという。

中日デジタル総商会の沈高平会長は同交流・マッチング会で、「中日オンライン・ビジネス投資協力デジタルプラットフォーム」について紹介した。「現在、多くの都市は中日協力をメインとした産業パークを建設しています。私たちは輸入博の後にも、このデジタルプラットフォームの整備を推し進め、中日のオンライン経済交流がより活発になるようにしていきます」

 

日本のNACHI不二越が出展した高速荷作業ロボットシステム(写真・何京盛/人民中国)

 

今回の輸入博の消費財最大のショールームだったユニクロの「明日の博物館」(写真・顧思騏/人民中国)
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