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変わってきた牛乳観

 

栄養食品? 日常食品?

 

大半の中国人にとって、牛乳の位置づけは「栄養食品」だろう。それは、中国人の飲食習慣によるものである。

 

スーパーの商品棚にはたくさんの種類の牛乳・乳製品が並べられている 各種の乳製品を宣伝するメーカー 重慶市では、「毎日500グラムの牛乳を飲んで丈夫な中国人に」というキャンペーンが行われた

中国人の牛乳・乳製品の摂取量は今でも、世界水準に比べるとかなり少ない。あるデータによると、中国人の毎日のタンパク質摂取量のうち、牛乳・乳製品からの摂取はたったの一・五グラム。先進国の十分の一だ。その主な原因は、中国人の生活レベルが向上したとはいっても、飲食習慣は大きく変化してはいないからだ。

 

朝食を例に取ると、北方の人は、おかゆや豆乳を添えた油条(揚げパン)、包子(肉や野菜の餡入りまんじゅう)、焼餅(小麦粉を薄く延ばして焼いたもの)を食べる。南方の人は、泡飯(ご飯にしるをかけたもの)やピータンと豚肉のおかゆなど各種のおかゆやワンタンなどを食べる。

 

牛乳とパンの朝食は西洋式だと言われていて、中年以上の人には馴染まない。特にバターやチーズといった乳製品は、調理方も食べ方もよく知らず、その味にも慣れていない。逆に若い人や子どもは、西洋の飲食文化の影響を強く受けているので、このような食品を好む。

 

呂さんのような若い母親は、牛乳は体に良い食品であると信じ、そのことを重視している。客観的に見ても、中国式の朝食は作るのに時間も手間もかかるうえ、大半の若い人は作ることができない。外の食堂で食べるのも時間がかかって面倒だ。その点、西洋式の朝食だったら、牛乳一杯を温め、パンを二枚焼き、そこにハムやソーセージを添えればできあがり。時間も手間も省ける。

 

まだ食べ物が不足していたころ、中国人は米や饅頭、魚、肉といったものを重視していた。こういったものを食べてこそ満腹になり、栄養もあると考えていたのだ。そこで今でも、牛乳は病人やお年寄り、子どもの栄養食品だという考えが残っている。

 

レストランで食事をするとき、あるいは子どもに西洋風のファーストフードを買って食べさせるとき、子どもに牛乳を飲ませようとはしない。

 

また祝日になると、福利厚生の一環として、食用油や飲料などを従業員に支給する会社や事業体があるが、そのなかに牛乳が入っていることは少ない。その原因は、牛乳は病人のための栄養食品であると考えられているため、祝日にそれを支給するのは、祝いのムードに水を差すようなもので、タブーであるとさえ考えられているからだ。

 

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