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「24式」を生んだ楊式太極拳

 

楊澄甫の肖像画
 1950年代、中国は太極拳を全面的に普及させるため、伝統的な太極拳を簡素化した「24式太極拳」を創り出した。この「24式」の基となったのは楊式太極拳である。楊式太極拳の伝承に力を尽くす韓清民さんから、太極拳を学ぶにあたっての心得を聞いた。

韓清民さんが日々修練を積んでいるのは、三代目継承者の楊澄甫(1883~1936年)が確立した套路(型)。現在、一般に普及している太極拳はこの套路だ。楊式太極拳の拳架(スタイル)は主に37の基本動作からなっている。

動きが伸び伸びとして美しい楊式太極拳は、学びやすいうえに健康にも良いと、広く人気を博している。学習者も多い。しかし、急速に普及する中で、要点や「意によって気を動かす」ことがあまり強調されなかったため、楊式太極拳本来の形が次第に忘れられてしまった。太極拳を「体操」や「踊り」 の一種として練習する人も少なくない。

韓さんはこれに対して、太極拳は見かけだけ真似すればいいというものではないと指摘する。「意によって気を動かす」ことを重視し、「形と心を兼ね備える」という境地に入ってこそ、その効果が十分に発揮されるのだという。

正すのは難しい

やぐらの上で楊式太極拳を練習する人たち
 楊澄甫は楊式太極拳を確立した際、たくさんの論述を残した。それは現在に至るまで、初心者の心得となっている。

楊澄甫によると、太極拳は柔の中に剛を含み、綿の中に針が隠れているような芸術である。技術的にも、生理的にも、力学的にも、奥深い哲理が含まれている。そのため、太極拳を習得するには、ある程度の過程や相当の時間が必要で、良師の指導、仲間との切磋琢磨、たゆまぬ練習も大切である。

太極拳を学ぶとき、まずは拳架を練習する。拳譜に基づき、先生の指導のもと、心を休め気を静めて、一つひとつの動作をよくかみしめて覚える。

初心者がとくに注意すべき点は、「内外上下」だ。内とは、力ではなく意を使うこと。外とは、全身をリラックスさせること。上とは、頭のてっぺんを持ち上げること。下とは、気を丹田まで沈めること。

常にこのことを頭にいれ、一つひとつの動きを正確に覚えなければならない。もしもこのことを頭にいれずに練習を始め、間違った動きを覚えてしまったら、それを正すのは難しい。太極拳は、「学ぶのは容易いが、正すのは難しい」と言われている。

手本を示す韓清民さん
練習は、一日に7、8回やるべきで、朝夕は少なくとも一回ずつ行いたい。ただし、酔っ払っているときや満腹のときは禁物。練習場所は、直射日光や強風、湿気を避けて、風通しがよく明るいところがふさわしい。   

10のポイント

 楊澄甫は「太極拳10のポイント」をまとめた。

①虚霊頂勁――頭のてっぺんで物を支えるように頭をまっすぐに持ち上げる。力をいれたり、硬直してはいけない。自然に持ち上がるような感覚。

②含胸抜背――胸をやや内側にまるめ、気を丹田まで沈める。胸を張ってはいけない。「抜背」とは、気を背中に貼り付けること。「含胸抜背」ができれば、脊椎から力を発することができるようになる。

③松腰――腰は体を支配する。腰を緩めて両足でしっかりと立つこと。虚と実の変化は腰から起こる。

④分虚実――虚と実を区別できることに太極拳の意がある。例えば、全身の力が右足にかかると、右足が実となり、左足は虚となる。虚と実を区別できると、簡単に体を動かすことができる。

⑤沈肩墜肘――肩をリラックスさせて自然に下ろし、肘を自然に垂らす。

⑥用意不用力――全身をリラックスさせ、無駄な力をなくし、柔軟に円く変化できるようにする。

楊澄甫が確立した太極拳の套路。この写真は1919年に撮影されたもので、楊式太極拳における最古の写真資料 

 ⑦上下相随――手の動きが腰の動きを誘発し、腰の動きが足の動きを誘発し、視線もそれに合わせて動く。これを上下相随という。

⑧内外結合――精神が主となり、動きを牽引する。精神を集中させることができれば、動きは自然と緩やかになる。手足の動きが心意と合致し、内外が一つにならなければならない。

⑨相連不断――力を発するときは、始めから終わりまで綿々と続き、絶え間なく循環する。長江のように滔々と絶え間なく、ゆっくりと少しずつ動く。

⑩動中求静――静を以って動を制し、動けども静のごとし。拳架の練習は、ゆっくりであればゆっくりであるほどよい。

「師は導くのみ。修行は本人次第」。先達が教えられるのは練習方法だけで、腕を磨くのは自分自身だ。十分に考え、一生懸命練習に励んでこそ、腕前を上げることができると韓さんは諭す。

 

 

人民中国インターネット版 2008年11月4日

 

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