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「経済大国」から「経済強国」になるには

 

1950年生まれ。1975年、東京外国語大学卒業、日本貿易振興会(ジェトロ)に入る。香港大学研修、日中経済協会、ジェトロ・バンコクセンター駐在などを経て、1993年、ジェトロ大連事務所を設立、初代所長に就任。1998年、大連市旅順名誉市民を授与される。ジェトロ海外調査部中国・北アジアチームリーダー。2001年11月から、ジェトロ北京センター所長を務めた。
今年1月14日、国家統計局が2007年の国内総生産(GDP)の成長率を11.9%から13%へ上方修正しました。これによると、中国の経済規模は3兆3800億ドルで、ドイツの3兆3200億ドルを追い越し、世界第3位になりました。世界の関心が中国に集まる中、ドイツ国営第2テレビは中国を「新たな勝利者」として報道したとのことです(人民ネット1月19日)。

世界第2位の経済規模を有するのは日本で、4兆3800億ドルです。経済規模で中国が日本を抜くのは数年以内とされています。第1位である米国(13兆8千億ドル)にはまだ距離があるものの、東アジアに、二つの経済大国が並び立つことになった意義は少なくないでしょう。

その中国で最近、日本の経済力を意識した論調がやや目立つようです。例えば、2008年12月23日付の『中国青年報』に掲載された論文「日本がなければ、中国の『改革・開放』は今と異なっていたかもしれない」などがあります。(注1)

持ちつ持たれつ

『中国青年報』の論文はまず、1978年10月に「改革・開放」政策の生みの親である鄧小平氏が訪日した折の「このたびの日本訪問で日本の経験を視察したい。日本が科学技術を発展させた先進的経験を中国にもち帰るつもりだ」との発言(注2)を紹介しています。そのうえで、「30年前、日本は中国にとって最大の援助国であり、日本からの多額の借款が両国の経済交流の発展の基礎となった」と評価しました。

さらに「今日、中国が日本経済の再生に大きく貢献するようになった。日本がなくても『改革・開放』は進められたが、そのやり方と内容は同じではなかったはずだ。ただ、歴史が日本を選択し、鄧小平氏が日本を選んだ。日本は中国の『改革・開放』の推進に一役買った」と続け、「これにより中国は活気がみなぎり、これまでに益するところ大であった」と結んでいます。日中両国は「持ちつ持たれつ」の関係にあるということを示唆しています。

日本の人材養成を参考にする

中国は、「経済大国」の次に「経済強国」になることを目指しています。世界第3位の経済大国になったとはいえ、一人当たりGDPでは世界100位以内に入っていません。人口大国なるがゆえに一人当たりGDPが少ないということもありますが、中国が希求する「和諧社会(調和のとれた社会)」や「小康社会(いくらかゆとりのある社会)」を実現させ、経済力に見合った世界的貢献を果たすには、「経済発展の質」が重要との姿勢が、この「経済強国」という4語に込められているようです。

09年1月16日付の人民ネット(注3)は、「中国には3度目の『日本に学べ』ブームが必要」と題する記事を配信しました。この中で、「中国の3度目の日本学習の要諦は『人の教育』に概括される。日本の本来の条件は中国より劣っている。日本の底力は一流の、組織された人材にある」とし、さらに「今日、日本は省エネや環境保護などの新興分野で強い競争力を備えているが、世界がもっとも注目しているのは、日本の教育の成果だ。中日間の最大の開きはここにある」と続け、「中国はどこへ向かうべきか。日本を見れば、必ずその啓示を得られるだろう」と結んでいます。 日本を「経済強国」と見立て、中国が名実ともに世界第2位の経済規模になるまでに、日本経済の底力となった「教育の成果」をチャイナ・パワーの出力アップの参考にしようということでしょう。

中国が世界第二位になる時

スイスの景勝地、ダボスで開かれた2009年のダボス会議は、国際的な金融危機にどう対処するかについて討議が交わされ、閉会の昼食会は屋外で開かれた(新華社)

昨年12月には、新日中友好21世紀委員会(日中両国の友好と発展を促進する目的で設立された政府に対する民間の諮問機関)が、最終報告書を発表しました。それによれば、「今後の日中関係の発展のための提言」として、5点が強調されています。その中でとくに目を引くのが「青少年の交流活動の継続」や「省エネ、環境保護の分野における協力強化」です。

青少年の交流は、「日中の世々代々の友好の基礎となる」ことが期待できます。また、21世紀の今日、鄧小平氏が訪日したとしたら、恐らく「日本の省エネ・環境技術を中国に持ち帰りたい」と言ったでしょう。経済規模で中国が世界第2位になったとき、省エネ・環境保護分野での両国のビジネス交流が大きく貢献しているのではないでしょうか。

いま、日中両国で構築しようとしている「戦略的互恵関係」とは、分かりやすくいえば、「持ちつ持たれつの関係」と言ってよいでしょう。この関係を維持・発展させる秘訣が、新日中友好21世紀委員会の最終報告書にも盛られていると言えるでしょう。

さて、世界第3位の経済規模を有するまでになった中国を世界はどう見ているのでしょうか。今年1月28日、毎年世界が注目するダボス会議が開幕しました。スイスの寒村ダボスに各国の政財界の指導者や企業経営者、文化人などが参加し、地球的規模の課題について意見を交わす場で、中国からは温家宝総理が出席し、講演しました。

世界経済が低迷する中、「危機を越え、再生の道を探る」をテーマにした今年のダボス会議での主役は、中国であったようです。会議の主催者は、「近年ダボス会議で『中国の要素』が顕著になってきた。今日の中国は世界経済秩序を回復する上で、極めて重要な役割をもっている」としています。

世界経済における中国のプレゼンスが高まる中、経済規模で一歩リードしている日本と中国が積極的に双方を意識し合い、もっと次元の高い「持ちつ持たれつの関係」を構築することで、「これにより世界は活気がみなぎり、これまでに益するところ大であった」としたいものです。

注1

そのほかに、中国新聞ネット(09年1月10日)の「冷戦後の中日関係の衝突と融合、世界に融合することが唯一の解決策」や人民ネット(09年1月14日)の「唐朝訪日使節団の驚き」などがある。 

注2

鄧小平氏訪日に関する詳細については、『人民中国』2008年11月号を参照。

 

注3

中国共産党の機関紙である人民日報社が配信する中国関連のネット情報。

 

 

人民中国インターンネット版 2009年4月28日

 

 

 

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