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希望を育む豊饒の大地

あふれる果物の香り

ラオスの市場で売られているさまざまな果物
瀾滄江―メコン川の水源の両岸は、荒涼とした高原で、人家もまれであったが、海に向かって流れていくにつれ、次第ににぎやかになってゆく。海から数十キロ離れた水路には、水上市場がずらりと並んでいる。

その両岸のもっとも有名な産物は熱帯の果物で、次第にメコン川の水上市場に集中するようになった。果物ばかりでなく、数え切れないほどのさまざまな産物も、水路を経由して各地に運ばれる。

メコン川は、ベトナム・ティエンザン省のカントーの近くで九つの流れに分かれているため、「クーロン(九龍)」と呼ばれている。

30年来、ダン・バン・ドンさん(52歳)は、ずっとこのクーロンの水上市場で果物を販売している。海の入り口までおよそ40キロのあたりだ。6人の子の父親であるダンさんは、5艘の船を所有している。

子どもたちはみな大人になり、二番目の息子以外はみなダンさんと一緒に働いている。孫を含む三世代十数人の家族船隊である。

ダンさんの妻はこの船隊の女王様として、家事と家計をつかさどっている。この地の伝統では、男性は肉体労働と社交を担い、女性は家計を握って一家の生活を管理する。ふっくらとした妻は、普段の日は船に座って、孫に歌を教える。

おちびちゃん  

真っ赤な頬に  

鉄のような小さなおてて  

母さんバナナの木を買って  

おちびちゃんを泳がせて……  

頭上にはバナナが実り  

足元にはパイナップル  

倒れても野生の果実を  

その手につかみ……

船室の外を見渡せば、そこは広々としたメコン川であり、世界にあまねく知られる果物天国である。

大地を流れる川は、ひそかにジャングルの地下に染み込み、果樹の根をたっぷりと潤す。季節を問わず、ここには、ライチ、リュウガン、ランブータン、ドリアン、パラミツ、マンゴスチン、ドラゴンフルーツ、サボジラなどあふれんばかりの果実が実っている。

カンボジアのコンボンチャムの風景

特殊な気候と恵まれた自然環境は、熱帯果物の栽培と生産に良好な条件を提供している。種類の豊富な野生の果物は、果物の品種の起源、生物の進化、植物群落および遺伝育種の研究に、種の資源としても役立っている。

この地域の各国では現地産の果物だけでなく、世界からさまざまな果物の品種を輸入し、地元で栽培し、新しい味を生みだしている。全世界で商品として輸出される熱帯の果物は、二カ所に集中している。南米、そしてこの大メコン川流域である。

ベトナムの果物は50の国や地域へ輸出されている。主な市場は、中国、日本及びロシアである。ベトナム貿易促進庁の計画によると、2010年までに、ベトナムの野菜及び果物の生産品の輸出額は10億ドルに達するという。そのうち、野菜が52%、果物が32%を占める。

ミャンマーの果物の輸出総額は、年間1700万ドルとなっており、その大部分をマンゴーが占めている。ミャンマーマンゴーの王様であるセインタロンマンゴー(ダイヤモンドマンゴー)は、主に、マレーシア、シンガポール、バングラデシュ、中国などへ輸出される。2005年から2006年までにミャンマーが輸出したマンゴーは2万62トン、輸出額は1100万ドル以上に達した。

ラオスの熱帯と亜熱帯も果物が豊富で、主にヤシ、パイナップル、ミカン、オレンジ、マンゴー、グレープフルーツ、パパイヤなどがある。グレープフルーツはラオスの名物で、味が葡萄と似ているとしてこの名がついたという。パパイヤは生産量の多い果物で、ラオス全体の年間生産量は10万トン以上に及ぶ。

タイの果物の輸出額は世界第四位であり、中でもドリアン、リュウガン及びランブータンの輸出量は世界一となっている。

 

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