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乗客の安全を守る地下鉄安全検査員

文・写真=王焱

2008年6月末、オリンピック開催期間中の安全対策徹底のため、北京の地下鉄は乗客に対して手荷物のセキュリティチェックを始め、世界で最初に地下鉄のセキュリティチェックを実施した都市となった。オリンピック終了後も、この制度は今日に至るまで続けられている。

「こんにちは、お手荷物のセキュリティチェックを受けてください」「ご協力ありがとうございました」。李さんはひっきりなしに流れ込んでくる地下鉄の乗客を微笑みながら誘導する

具体的な業務はいくつかの会社が分担している。北京恒安衛士安全防範技術有限公司はその中で最大の会社で、1、2、8号線、八通線、空港線などの駅の入り口でのセキュリティチェックを担当している。職業専門学校でセキュリティ業務を専攻した李環環さん(20歳)は2008年にこの会社での実習を経て、思いがけず中国で最初の地下鉄安全検査員の一人となった。今や彼女は、地下鉄阜成門駅のある入口のセキュリティチェックチームの班長である。

「私たちの仕事は、駅に入る乗客に荷物をセキュリティチェックの機械に通してもらうことです。疑わしい物を発見したら、乗客の同意を得てから中身を開けさせてもらい、さらに調べます」

安全検査員は法律の執行者ではない。規則で携帯が制限されている物品に対しては、乗客が自主的に放棄或いは他の交通機関に乗り換えてくれることを勧めることしかできない。彼女は言う。「私たちには合言葉があり、万が一、きわめて危険な物を発見した際には、その人を落ち着かせつつ、駅に駐在している公安関係者に、速やかに知らせるようになっています」

セキュリティチェックの機械で疑わしい物が見つかれば、スタッフは乗客に確認する。燃えやすいもの、爆発しやすいもの、腐食性の強い液体は持ち込みが制限されている。アルコール度数の高い酒は1キログラム以上は持ち込みが禁止されている

北京の各駅の多い時で数万人に及ぶ交通量を考えると、「1日に1万の荷物をチェックする」という李さんの話は大げさなものではない。夜は11時まで仕事があるときもあり、翌日が早番であれば、地下鉄の駅に泊まり込むこともある。

手荷物のチェックはわずか5、6秒にすぎないが、チェックの煩わしさを嫌がり、協力したがらない乗客もいれば、安全検査員に腹を立て、ひどく毒づく乗客もいる。しかし、2年間の仕事を振り返って李さんは言う。「最初の頃に比べたら、セキュリティチェックに協力してくれない乗客はずっと少なくなりました」

西直門駅の業務を受け持つセキュリティチェックチームの張傑峰さん(28歳)は語る。「乗客に非難されればもちろんやりきれない思いも味わいますが、自分たちの仕事はある意味サービス業なのだと自覚しなくてはなりません」

非協力的な乗客には、セキュリティチェックの必要性を説明する。笑顔で、礼儀正しく、辛抱強く説明するのが秘訣だという。「乗客が急いで地下鉄に乗りたいという気持ちも理解できますが、私たちは心からみなさんの安全を守りたいと思っているのだということを、乗客にわかってもらわなくてはならないのです」

恒安衛士公司では現場のセキュリティチェックをするスタッフには、1800元の給料のほか、3度の食事、宿舎及び各種保険などが提供される。かつては南方の工場で働いていた張傑峰さんは、この待遇に引かれてやって来た。2年間で、彼は現場の平のスタッフから隊長となり、月収は2400元になった。

「現在、わが社が求める人材は、高卒以上の学歴を備えていることが条件です。採用が決まれば1カ月の業務訓練に参加し、セキュリティチェックの機械の操作および疑いのある物品を見分ける技能を身につけなくてはなりません。訓練が終了し、試験に合格し、北京市公安局防爆安検処が授与する安全検査員資格証を取得してようやく仕事につくことができるのです」

張さんは最後に言う。「地下鉄のセキュリティチェックはこれからもずっと続けられ、私たちの活躍の場はますます広がるでしょう」

 

人民中国インターネット版 2010年8月

 

 

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