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貴州省赤水市 壮大なジュラ紀の赤い崖

劉世昭=文・写真

赤い山肌と断崖が特徴の碎屑岩の地形は丹霞地形と呼ばれ、中国特有の地形の一種だ。不完全だが、ある統計によれば、中国で発見された丹霞地形は全国で720カ所を超える。

五柱峰風景区の仏光岩

赤水市には8万ヘクタールの竹林があり、中国国内で1人当たりの竹林面積が一番多い市でもある

 貴州省北部にある赤水市の土地には、水に溶けない三酸化鉄や三酸化マンガンが大量に含まれている。それらの成分が赤色であるため、ここの岩石、土、川は赤く染まっている。ジュラ紀に形成されたこの1801平方キロの土地には、1200平方キロにも及ぶ丹霞地形がある。

恐竜の食べ物を保護

赤水へは、まず飛行機で四川省瀘州市へ行ってから、バスで移動するのが便利だ。90キロの距離を走って、赤水に入ると、そこは一面の緑の世界だ。道路の両側に立ち並ぶ大樹が並木道をつくり、地面の大部分は生い茂る植生で覆われている。しかし、遠くへと流れていく赤水河や植物の根元に現れた赤い土が、丹霞地形の彩りを感じさせる。

珍しい連体のヘゴ 中洞滝

赤水に着いてからすぐ、金沙溝にある「赤水桫椤(ヘゴ)国家級自然保護区」を訪れた。「ヘゴ」は漢字で「桫椤」と書き、高さ十メートルになる木生のシダの一種。ヘゴは二億年前のジュラ紀や白亜紀の草食性恐竜の重要な食べ物だった。現在では、絶滅危惧種の植物で、低緯度の地域にのみほんの少し残るばかりで、「恐竜時代から残る生きた化石」と呼ばれている。赤水一帯には、四万本以上が生い茂り、世界でもめったに見られない珍しい風景が広がっている。それらのヘゴは面積133平方キロの金沙溝保護区が育んだものだ。澄んだ空気と一定の湿度と温度があるため、ヘゴは氷河期の厳寒を忍ぶことができたといわれている。

保護区の中では、赤い丹霞石で築かれた石畳の道一面に、緑のコケが生えていて、もとの色が見えなくなっている。コケのせいで滑りやすく、気を緩めるとすぐに転んでしまいそうになる。現地で七元のわらじを買って履くと、幾分歩きやすくなる。

 金沙溝一帯では、ヘゴはあちこちで見掛けるので、その貴重さや絶滅の危機に瀕している現実など、まったく感じられない。高くそびえたつヘゴは、葉がこんもりと茂り、巨大な傘のように見える。低くて太いヘゴは、まるでぶらぶらとのんびりしている小人たちのようである。「姉妹」と名づけられた連体のヘゴは、一本の根から二本の木が育っている、希少な変異例だという。

楊家岩滝群の迎賓滝 柱状の五柱峰

保護区では、200種類以上のシダ植物や500種類以上の種子植物、120種類以上のコケ植物、そして250余種の脊椎動物や百余種の昆虫が生息している。そのうち、希少・絶滅危惧・特有の動植物は百種ほどである。そのため、同保護区は、中国亜熱帯地域の「世界動植物遺伝子アーカイブ」とも呼ばれている。

 

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