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結婚証明書に願いを

 

島影均=文

島影均
1946年北海道旭川市生まれ。1971年、東京外国語大学卒業後、北海道新聞社に入社。1989年から3年半、北京駐在記者。2010年退社後、『人民中国』の日本人専門家として北京で勤務。

新年おめでとうございます。このコラムでは20数年ぶりに北京暮らしを始めた筆者が見たもの聞いた話をお届けします。

昨年晩秋、知り合いの中国人ご夫婦の息子さんの結婚式にお招きいただきました。案内状をよく見ないで、何となく始まるのは午後だろうと思い込んでいました。同じく招待されていた中国人の友人は「午後の結婚式は再婚だよ」と、北京の常識を教えてくれました。日本では午前中の結婚式は多くないと思います。

超高級ホテルの大宴会場です。ざっと数えてみると12人平均の円卓が30卓以上並んでいます。300人を超えている勘定です。午前11時過ぎ、新郎新婦が入場。きらめくミラーボールが回転し、結婚行進曲ではなく現代的な音楽が流れ、大拍手が湧き起こります。2人が腕を組んで歩くのは、バージンロードならぬ赤いじゅうたんの上です。両側には花びらを入れたカゴを携えた女性が並び、2人に祝福のフラワーシャワー。

日本では式と披露宴の2部構成になっているケースが多いと思いますが、この結婚式は豪華一本型です。正面のひな壇に到着した2人は司会者の問いに答える形で、永遠の愛を誓い、指輪交換、キス。次に登壇した立会人が2人にそれぞれ結婚証明書を渡します。ここまでが日本だと教会や神殿で行う儀式でしょうか。結婚証明書は婚姻届に当たるのでしょうが、薄紙のぺらペらな紙一枚ではなく手帳ほどの大きさで、おめでたい色の赤一色です。

この後、ウェディングケーキ入刀。筆者が日本で出席した多くの結婚式に使われていたデコレーションケーキは飾りで、食べられません。ナイフを当てる場所にくさび型の切り込みもありました。今回は本物。面白かったのは、切り取ったケーキをお互いに食べさせあって、愛の交換を見せてくれたことでした。

結婚は人生の一大事業ですが、相手を探し出す苦労は日本も中国も同じなようです。

数年前、中国で大ヒットした春節映画『非誠勿擾』は、結婚相手を探すための新聞かネットの広告の文句だと聞きました。日本では『狙った恋の落し方。』と訳されて上映されました。中国語の意味は「不真面目、からかいはごめんだよ」でしょうから、「おふざけはダメよ」がいいかも知れません。

この映画が人気を呼んだのは「婚活」が軽視できない社会現象だからでしょうね。中国の適齢期の皆さんも相手探しが大変なようです。一人っ子が圧倒的に多数派の1980年以降生まれを「80後」(パーリンホウ)と言いますが、この中の第一集団が今年31歳になります。こちらでは「一人なら男の子」という古くからの考えがまだ支配的で、同世代の男女比にアンバランスが生じていますので、男性が同年齢以下の配偶者を見つけようとすると競争率は高くなります。今年もたくさんのカップルが誕生するでしょうね。中には日本人と中国人のカップルも……。

中野北溟 1923年北海道羽幌町焼尻島生まれ。日展、毎日書道会などの役員を歴任し、現役作家としても札幌を処点に、東京初め全国で活躍中。日中文化交流に貢献し、中国書道界でもよく知られる。

 

人民中国インターネット版 2011年2月11日

 

 

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