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コーヒーともてなしのプロ バリスタ

 

王焱=文・写真

失業中に養成学校で学ぶ

コーヒーは中国人の口に合わないと考える人も大勢いるが、この舶来の飲み物は中国でますます多くの人を夢中にさせている。コーヒー店は都市の隅々にまで行き渡り、商談、くつろぎ、語らいの場として人々に愛されるようになった。

于飛さんの勤務は、早番の日は朝9時から夕方6時まで、遅番の日は午後3時から夜0時半まで。 MOMOカフェの楊店長によると、同店の場合、売り上げの4割をコーヒーが占めるという

于飛さん(25)は、北京MOMOカフェに3人いるバリスタ(専門店でコーヒーを提供する技術者)の一人だ。注文を受けた彼はマシンを操作し、数十秒のうちに香り高いコーヒーをいれると、慣れた手つきでミルクを注ぎ、コーヒーの上にハートマークを描いてみせた。

「これが『ラテ・アート』です。一般に女性のお客様にはハートを、男性には木の葉を描きます。なじみのお客様にはもっといろいろなものを描いてお出しすることもあります」

こう説明する彼の手元のコーヒーには、見る間に白鳥が姿を現した。

ウエイターが運んでいくコーヒーに目をやりながら、彼は自分の思いを口にした。

「コーヒーの上にラテ・アートを発見したときの、お客様の表情を観察するのが好きなんです。喜びの表情が顔に浮かび、写真を撮る人さえいて、こちらもうれしくなりますね。逆に、見ても関心を持たずすぐにまぜてしまう人もいます。これには、少々がっかりしますね」

于さんによれば、この店の主要な客層は周辺の大学生やホワイトカラー。ネットショップの店長や自由業系の人が打ち合わせに使うことも多いという。午前中がコーヒーの注文が最も集中する時間帯で、30分ほどの間に20杯の注文を受けたこともある。

ここでの仕事は約半年になる。一昨年、失業中にインターネットでバリスタ養成学校の広告を見た。日ごろからコーヒーが好きだったこともあって、すぐに申し込み、3ヵ月間の養成課程に通った。

「ラテ・アートをマスターするには、何度も何度も練習しなければなりません。お金を節約するため、醤油をコーヒー代わりに、洗剤を水で薄めたものをミルク代わりにして、練習を重ねたものです」

養成学校のある先生が彼の才能に注目し、中国バリスタ・コンテストに推薦してくれた。コンテストで、彼のオリジナル・コーヒーは審査員に高く評価され賞を獲得した。だが、そのオリジナル・コーヒーはこの店のメニューにはない。

「それは、自分の店を持つまでの秘密です」

それまでに学ばなければならないことが、彼にはたくさんある。

腕が良ければ月収1万元も

北京芸徳前程学校でバリスタ養成講座を担当する南鵬さん(31)が于さんの恩師だ。統計学を専攻した南さんだが、コーヒーマシンの輸入にかかわったことを契機に、コーヒーの世界に足を踏み入れた。それからかれこれ10年になる。

南さんによると、多くの業界と同じように、バリスタも駆け出しのころは月収千元そこそこだという。しかし、時間がたてば腕の良いバリスタにはファンもつき、月収が1万元を超える者も出てくる。

中国のコーヒー業界の現状に話が及ぶと彼は、中国ではコーヒーの消費量が一人あたり年間3杯ほどだと紹介してくれた。米国の場合は、一日3杯。違いは個人の消費力にある。

「コーヒー店では普通のコーヒー1杯が20元ちょっとします。これは、多くの人にとって一種のぜいたくです」

しかし、人々の消費力が急速に高まっている中国では、市場の未来は計り知れないと彼は考えている。これは、ここ数年コーヒー店が増え続けていることからも分かる。

「いつか、中国人が毎日コーヒーを飲むようになったら、世界のコーヒー豆は品不足になるかもしれませんね」

彼はほがらかに笑った。

 

人民中国インターネット版 2011年2月28日

 

 

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