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受験生とともに「臨戦態勢」

 

毎年6月初旬に実施される「全国高等院校統一考試(高考)」は日本の大学入試センター試験に相当する。この高考を受験する子どもがいる全国の家庭と親たちは、どれほど心血を注ぎ、どれほどの成果をあげているものか。

わが家にも今年の高考を受験する18歳の息子がいる。言うまでもなく、早々と「臨戦態勢」に入っており、わが家のあらゆることは彼を中心に回っている。

毎晩遅くまで机に向かって勉強する息

彼は毎朝6時に起きて、朝食をとり、7時半前には学校に着き、早朝自習から張り詰めた学校生活の1日が始まる。昼食、夕食は校内で食べ、午後8時半までの自習を済ませて、やっと帰宅する。われわれは毎晩、ドアのチャイムが鳴るのを今か今かと待っている。疲れきって帰宅する様子、机の上に山積みになっている宿題や連日連夜の勉強疲れでだんだん憔悴の色が濃くなっている顔を見るにつけ、親として何をしてやれるだろう、と気もそぞろになる。帰宅後、ふたことみこと言葉を交わした後、他に言いようもないので「もう少し頑張ってな」と声を掛けるしかない。彼は黙って机に向かい、夜中まで勉強する。

高三のラストスパートの時期に入ると、勉強の密度が濃くなり、競争も激しくなる。テストは毎週行われるほかに、月間テスト、北京市の統一テスト、中間テスト、期末テストなどが頻繁に実施され、その成績表がまるで雪のように降り注ぎ、あたかも「神の声」のようにわれわれ両親の神経を刺激する。時には大いに興奮し、時には緊張のあまりいたたまれなくなる。

中国では受験生が一点でも多く取れるように、多くの家庭が勉強しやすい環境を整えるほかに、課外補習に通わせ、家庭教師を頼むケースが多く、そうした経済負担はばかにならない。わが家も例外ではなく、ここはケチらずに蓄えを使って、4科目の家庭教師を頼んでいる。各科目毎週1回で1回当たり500元(約7500円)から600元(約9000円)の出費だ。さらに、参考書や問題集など余計な支出は決して少ないとは言えない。

息子の1歳上のいとこは米国籍の中国人で、かつて完全に米国式の教育をする北京のインターナショナル・スクールで勉強した。息子の目から見ると、同じ北京にいたいとこは中学生の時から楽しく遊びながら勉強して米国の大学に入学できたように見えるらしい。一方、苦しい受験勉強を強いられ、青春時代を楽しむこともできず、息子にはそれが残念なようだ。最近、こうした受験戦争から逃げ出す道を選び、大学受験前に海外の高校に入学し、そこで直接大学に入る子どもたちもいるようだ。こうした現象は中国式受験地獄を逃れる新たな選択肢になり始めていることを物語っている。

 

編集部主任記者・馮進

 1958年北京生まれ。カメラマン。勤続約30年、編集部部長を務めた。著書に『茶馬古道の旅』など。多数の写真コンテストで受賞。趣味はクラシック音楽鑑賞と卓球。

 

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