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日本の東南ア志向に疑問 拡大する中国市場の再認識を

 

陳言 コラムニスト、日本産網CEO、日本企業(中国)研究院執行院長。1960年生まれ、1982年南京大学卒。中日経済関係についての記事、著書多数。

東京でゆっくり過ごしたいと思い、昨年12月に2週間ほど滞在した。日本の電気製品や食品などは、北京で買おうと思えば買えるようになった今でも、日本の新聞・雑誌・書籍だけは簡単に入手できない。そこで、今回も滞在中に買えるだけの新聞や雑誌を買って、徹夜して読みあさった。中国世論とあまりにも違うことが書かれていることを知り、驚きの毎日だった。

「三菱商事などミャンマーで大型発電、1兆円規模」「ベトナムの原発開発計画と日本の原発輸出」などの記事を読んで、日本企業の東南アジアへの投資が加速していることを感じた。30数年前に大学を出た当時、読んでいた日本の新聞は、大型の投資先は中国だと報じていたものだが、30年で一つの循環が終わり、今は東南アジアに向かっているのだろうか。

労働コストの向上、経済成長率の低下、政治関係のギクシャクなどによって、日本の新聞・雑誌を読む限り、中国は「鼻つまみ者」になってしまっているようだ。私自身も初対面の会社員に、ひどく冷たくあしらわれ、12月の東京の寒さがより身に染みる思いをした。

チャレンジやチャンスが中国のどこにあるのか、師走の東京の街を歩きながら考えてみた。

海外にも広がる消費

 原宿駅で降りて、竹下通り、表参道を歩いた。竹下通りではアフリカ系の人々が大変目立ったが、私の耳に入って来た声はむしろいろいろな中国の方言であり、意外だった。多くの中国人が最新の流行を竹下通りや表参道にやって来て見付けようとしているようだ。中国の消費市場の拡大は、今後も続き、国内市場だけでなく、むしろ積極的に海外に出掛けて消費拡大に努めている。

これから5~8年以内に、多くの業界で中国市場が世界市場の20~30%を占め、世界一の市場になるに違いない。すでにそうなっている業界は幾つもあるが、むしろまだその規模に達していない業界の方が多い。ブランド製品に対する渇望もあり、普通の中国人は国内で開発し、育成するより、表参道を練り歩き、それを発見し、買うことで今のニーズを満足させている。

市場規模が世界の20~30%に達するということは、4、5年以内に中国市場が急速に成長することを意味している。このような高度成長の潜在力も、投資しがいのあるチャンスではないか。

ファッションなど目に見えるもののほかに、現在、中国市場が世界市場の15%を占めている医薬·医療部門は18%にまで成長できるという見方が強いが、それを上回るかも知れない。なぜなら、中国のベビーブーム期、つまり、1963年以降の7年間に生まれた人々は、中国の全人口の45%を占めており、このベビーブーム期に生まれた人々が今年から50歳に達し始め、今後7年間は、どんどん50歳以上の人口が増える。55歳になると、医療·健康にかかわる支出は50歳前の3~5倍になるため、4、5年後には、医薬関連市場の規模は世界の18%にとどまらず、20%、30%、40%になるかも知れない。

また夫婦のうち一人が一人っ子の場合、2人目の子どもも持つ資格を持つことになった。これまでより毎年100万人から200万多くの子どもが生まれ、中国の人口構成は再度変化する。政策の変化によって中国の市場がこれほど急に変化していくことは恐らく昨年の段階では予測できなかっただろう。

新タイプのサービス

 日本では訪問した企業でたまに冷遇されることがあっても、レストランで食事し、また買い物することは私自身にとって大きな楽しみだった。サービスと言えば、やはり日本であり、まだ中国のほとんどの人々はこの日本的なサービスを経験していない。

 今年内に中国の1人当たりのGDPは7000㌦を超えると中国の専門家は試算している。そうなれば中国でのサービスにも新しい可能性が出てくる。

 ただし、サービスと言っても昔のタイプのものではない。私の周りにいる中流階層の人々のスーパーに対する要望に、日本の小売業やスーパーはきちんと応えているだろうか。少なくとも10年前に猛烈な勢いで買い物客が日系スーパーに押し掛けたような現象は、今は少なくなっている。代わりに彼らはショッピング・モールに出掛け、そこで食事し、子どもの遊び相手になり、買い物を楽しむ。さらに彼らの関心は、資産マネジメントに移り、目に見えない要望も出ているが、金融については中国ではほとんど日系企業の影が見えない。

 私自身は、インターネットで日本で直接買い物をしなかったが、中国では昨年時点で、すでに小売総額の9%はインターネットによって販売されている。その割合は、将来3年ごとに倍増してゆくため、ほとんどすべての小売ルートはインターネットの影響を受けるに違いない。今のところ、影響を受けているのは、単価で百~千元の商品だが、その範囲は1500元、2000元の商品にも及んでいくと思われる。日本製品は1500元台のものが多く、店で売るか、インターネットで売るかどうかの選択を迫られている。今後の販売増加予測では、ますますインターネットに占拠され、販売経費の見積もりの低下につながる。深く分析すれば、インターネットによって、商業関連の不動産の家賃は、少なくとも2、3年以内に大幅に下落するはずであり、それでも集客は難しくなるだろう。

 しかし、日本のインターネット・ビジネスは、これから中国ではどのように展開されていくか、ほとんど情報はなく、あまり楽観できないようだ。

中国のチャンスにも

 日本で読んだ記事の中には、いかにもすべての産業が東南アジアに移ろうとしているように論じているものもあったが、インフラ、機械などの産業は、果たして中国から東南アジアに移転して意味があるだろうか。

 日立製作所を訪問した。昨年、現金自動預払機(ATM)、エレベーターなどは前年度よりはるかに多く中国で販売されており、鉄道、機械加工、新素材など成長の見込みがあるカードをほかにもたくさん持っている。20年間中国に技術移転を続け、ミドルクラスの従業員のほとんどが中国人となり、生産される製品は、日立のブランドを使っているので、世界どこでも同様の品質であり、販売もスムーズである。いきなりミャンマーに工場を移して、中国の生産技術と同水準まで持っていくには、やはりまた20年はかかるだろう。日立などは、中国で生産し、中国で販売しているから、労働コストが上昇しても中国で消化できるはずだ。

 ユニクロのように製品は中国で生産し、販売市場は世界となると、確かに労働コストが高くなると、企業も移さざるを得ないが、これは日立などとは根本的に違う。

 今年はいろんな意味で日本企業は中国でチャレンジとチャンスの年である。政治関係の変化はやってくるかどうかはわからないが、東京の街を歩き、日本の生産、サービスの底力を感じて、まだ中国でのチャンスが多くあるはずだと感じるが、日本で読んだ新聞・雑誌は、すでにそれについてはあまり触れなくなくなっているように感じられた。

 

人民中国インターネット版

 

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