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中国史を“旅”して

 

林貢平

私は子供の頃から歴史が好きでした。「歴史を学ぶには、まずは自国の歴史からがベターだ。」と思われる方が多いかもしれません。しかし、私の場合はそうではありませんでした。そう、わたしが初めて触れた歴史は中国の歴史であったのです。

小学三年生の時、私は一つの作品に出会いました。現代の日本人でも大多数の方々が一度は読んだことのある作品、「三国志」です。私が手にしたものは子供がわかりやすく読めるものでしたが、強い衝撃を受けたのをよく覚えています。三国志の英雄たちが繰り広げる物語はもちろんのこと、英雄たちが駆け巡った中国の大地、さらにこのような物語を生み出す中国という国はどのような国なのだろうか、というような興味を持つようになりました。

その時から、私の中国史の“旅”が始まりました。

中国史を旅するなかで私が最も好きになった人物は東漢を創始した光武帝・劉秀です。昆陽の戦いにおいて、百万の軍勢にわずかな手勢で切り込み、勝利を掴むという奇跡のような本当の話は光武帝の魅力であり、心に残っている逸話です。さらには万民が平和に暮らせるように大衆と同じ目線で政治を行うという、人の上にたつ者の手本になるような態度をとっていたことには感動しました。世界史の中で最も評価の高い君主の一人なのではないか、と私は考えます。そのような人物を輩出する中国のスケールの大きさには驚くばかりです。

旅の一環として、中国と我が国日本の歴史的関係を紐解くことも行いました。古代から中国は日本の手本でした。今この文章に綴られている漢字を見ればすぐにわかることだと思います。私たちの先祖は高度に爛熟した中国文明を学び、自分たちに合ったものにしていきました。この証は現在の私たちの生活圏にも見出せます。このようなものに実際に触れると、遥か昔から二国間は深い関係をもっていたのだなと感慨に浸ることがよくあります。

そんな両国の間にも悲しい歴史があります。特に日中15年戦争から現在に至るまでの歴史です。日中戦争時には我が国が中国に多大な損害を与えてしまいました。過去何千年の交流の歴史のある中で本当に残念なことであると思っています。そして私も大変申し訳なく思っています。しかし、今までの歴史を“旅する”ことはできても、“変えることは決してできません。現在、そして未来に向けて、両国が最良な関係を築けるように今度は私たちが次の歴史を作っていかなければならないと強く感じました。1972年の日中国交正常化、1978年の日中平和友好条約で両国の関係に大きな進歩はみられましたが、現在の日中関係は良好といえるものではないことは明白です。遥か先祖の時代から深い関係をもっていた両国であるからこそ、このままではいけないということは多くの方々が認識されているでしょう。良好な関係を確固たるものとするにはお互いの理解が必要であると私は考えます。我々日本人は過去の事実を踏まえ、中国との関係構築のために何ができるか考え、実践していきます。どうか中国人の方々は我々の行動を見て、手を差し伸べていただきたいです。日本と中国が強い絆で結ばれる日を夢見ています。そして遠くない将来、私の新たな中国史の旅は、中国の大地で新たなスタートを切ります。

 

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