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現在位置: 2010年 上海万博特集

雨水の総合利用 一滴の水もムダにすることなく

何晶=文

中国館の地下には貯水タンク

万博会場内の多くのパビリオンが雨水の総合利用の考え方を取り入れて建設された。中国館は万博閉幕後も残されてさまざまな用途で使われるが、雨水の総合利用の方面でも特別な設計が凝らされている。

中国館の全体の形状は上部が大きい漏斗型をしているが、この形状は雨水を集めるうえでは極めて合理的で効率が高い。上海建工(集団)総公司の姚建平副総経理は次のように語っている。

「中国館の屋上排水システムは、まず館の防水の必要から論じなければなりません。室内への漏水を防ぐことが第一です。その上で、雨水を集めて再利用しますが、中国館の屋上面積は5万平方メートルに近く、従来の雨水の自重だけで地下の貯水タンクに集めるのは困難です。強力な排水システムを採用しなければなりませんでした。そうでないと屋上に雨水がたまってしまいます」

姚副総経理は続けて、その排水・貯水システムについて説明してくれた。

「中国館が採用したのはサイホンを使った排水システムです。このシステムを使えば、排水口は少なくてすみ、排水のスピードも比較的速い。排水した雨水は地下にある約100立方メートルの貯水タンクに集められます。中国館の地下には執務室や機械室などがあってなかなかスペースが取りにくいのですが、上海市の降雨量から試算して、この大きさの貯水タンクで必要十分であることがわかりました」

貯水タンクには汚水処理の装置も付設されていて、小型工場のような印象を与える。集められた雨水はすぐに沈殿、ろ過、消毒されて再利用に回される。中国館では水道水と、この再利用水の2系統の水が使われているが、屋上にある2.7万平方メートルの庭園に植えられた草花の水遣りにはこのリサイクル水が使われている。

オランダやドイツなどでも

ロッテルダムのモデルケース「水の都市」での降水時の実演(新華社)
記者に深い印象を与えたのは、ベストシティ・プラクティス区のモデルケース連合館内にあるオランダ・ロッテルダムのモデルケース「水の都市」だった。

一階の展示ホールには、中央に円形の水槽があり、そのかたわらに方形の水槽も設けられていて、双方が一体になって平らなくぼ地をつくっている。解説員の説明によると、この施設は「貯水広場」のミニチュアで、ロッテルダムには、この10倍はある実際の貯水可能な広場が造られているという。

10分間隔で、この貯水広場の雨水収集機能が披露される。雨が降り、雨量が多いと、円形の水槽にたまった水はすぐに方形の水槽に流され、そこにためられる。雨量が少ないと、方形水槽の水は逆に円形水槽に戻される。雨が降らない日は、円形水槽は市民のための娯楽活動スペースに早変わりし、レジャー用のさまざまな工夫が凝らされる。一方、方形水槽のほうは駐車場やバスケットボールのコートとして利用される。

集められた水は汚水処理工場に送られ、処理を経て市民の生活用水として利用される。

ロッテルダムは1年365日のうち平均300日が降雨日で、人々は水害の脅威にさらされてきた。こうした「水の都市」施設は排水をすみやかに行うと同時に水のリサイクル利用も進めて、総合的な治水を行う施策の一環なのである。

上海企業連合館でも雨水の再利用が積極的に行われている。集められた水は沈殿、ろ過、貯蔵されて、パビリオン内の日常用水として再利用される。この数カ月の炎天下では、モイスチャーミスト設備の水源としても活用された。記者が上海企業連合館を取材に訪れたときにも、一階のモイスチャーミストがフル回転しており、館外に比べ気温も低く、とてもさわやかだった。雨水を再利用することによって来館者に気持ちよい参観環境が提供されているのである。

ルーマニア館の周囲は緑の木々に囲まれていて、木々の間には小川まで流れている。この小川の水は雨水の再利用とのこと。ルーマニア館では、入り口に滝のある景観を設けているが、この滝の水にも雨水が再利用されている。

ドイツ館では現在ベルリンで建設中の雨水利用システムが展示されている。河道に貯水池を建設し、降雨時には川に流れ込んだ雨水を太いパイプを通じてこの貯水池に集め、集めた水はポンプで汚水処理工場に運び日常用水に処理する。このようにして河水が雨季に汚染されるのを防ぐとともに、集めた水を再利用に回すことができる。ドイツ館の解説員は次のように語ってくれた。

「こうした貯水池があれば、毎年雨季に増水によってもたらされる被害にかかる費用が節約されるだけでなく、雨水を再利用することで別のコストも減らすことができるのです。都市での貯水・再利用システムの構築は経済的にも大きな利点があります」

 

人民中国インターネット版 2010年8月31日

 

 

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