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酒の飲み方 すすめ方

 

フランスを訪問した際、飛行機の中で、中国訪問を終えたばかりのフランスの閣僚とたまたま隣り合わせになったことがある。その時、「中国人はなぜ無理に酒をすすめるのでしょう?」「どうしてグラスの底を見せて乾杯しなければ、主催者をバカにしたことになるのでしょうか?」と聞かれた。中国人の乾杯と酒の習慣がどうしても理解できないらしい。また次から次へと何人かずつ連れ立ってテーブルにやってきて、乾杯を求めるのが当たり前の地方もあり、そんなところには、もう二度と行きたくないとも、話していた。

 また何人かの外国人投資家から、中国のある省について、投資環境は良いが、ただひとつ恐ろしいのは乾杯で無理に酒をすすめられることだ、と聞いたことがある。体も辛いし、時間ももったいないという理由だ。

 中国はいち早く酒を発明した国の一つで、昔から大切な客をもてなす時に、いい酒は欠かせない。多くの文学作品や歴史物語で、才子の詩情をかき立て英雄の気概を湧き立たせ、友情を深めるのが酒の効用だとされてきた。杜甫が同時代の先達の李白を評した言葉に「李白 酒一斗 詩百篇」があり、『水滸伝』の「武松の虎退治」に出てくる「三碗不過崗(酒を三杯飲んだら岡を越えられない)」などの物語もある。また、「酒仙」とか「酒聖」という誇り高い称呼もあり、酒文化は長い歴史を経てきた。現在も酒の力を借りて雰囲気を盛り上げることがよくある。大酒を飲む人は「英雄」だとみなされ、「斗酒なお辞せず」ともてはやされる。最近は「一気飲み」という新しい酒のすすめ方もあり、友達同士で会食するとき、いっしょに痛飲することが友情を確かめる豪快なシンボルになっているようだ。

 ところで、現代の「酒仙」たちは知らないことかもしれないが、昔の「酒仙」が痛飲したのは現在の「白酒(蒸留酒)」ではなく、米を醸造した「黄酒」だった。考証によると、「白酒」は長い間「焼酒(焼酎)」とも呼ばれ、元の時代(一説には宋代末)になって初めて現れ、そのアルコール度数は「黄酒」の数倍だ。古人を真似るのも結構だが、度を過ぎないようにご注意を。

 中国の伝統的な酒文化で、儒家が重んじているのは「酒礼」と「酒徳」だ。「酒礼」は酒を飲むときのマナーとルールを示し、「酒徳」では、特に節度の必要性を強調している。このおかげで、中国では乾杯で酒をすすめすぎる地方もあるにはあるが、ほかの国と比べれば、酔っ払いをあまり見かけない。街頭に酔っ払いが寝転んでいる光景も少ない。ところが米国、ロシア、英国では珍しくないことだ。英国衛生省が最近発表したデータによると、800万人以上の英国人が飲酒癖を止められないのんべいと見なされている。つまり、英国では6人に一人が酔っ払いということを示している。

 

趙啓正

 

 1963年、中国科学技術大学核物理学科卒業。高級工程師などを経て1984年から中国共産党上海市委常務委員、副市長などを歴任。

 

 1998年から国務院新聞辦公室・党中央対外宣伝辦公室主任。

 

 2005年より全国政協外事委主任、中国人民大学新聞学院院長。

 

人民中国インターネット版 2011年1月

 

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