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常州講演会

ジャスロン代表 笈川幸司

前回の南京講習会では、想定外の寒さの中、どうも体を冷やしてしまったようだ。昨年九月に旅に出て約3ヶ月。体力こそそぎ落とされたことはあったものの、体調を崩したことはなかった。振り返ってみると、ここ数年来初めてのことだ。今回は、誤魔化し誤魔化しやってはきたが、朝になって急性胃腸炎の症状に似ていることに気づいた。

昨年11月、北京⇔天津、北京⇔河北省の日帰り講演を経験済みだが、北京⇔江蘇省はひとつの挑戦だった。日帰り講演の出来不出来は、体調管理にかかっている。普段以上に気を使わなければならないのに、今回は最悪の状態で出発することとなった。

上海、無錫、南京と3回続いた講演会。お馴染みとなった上海虹橋行きの列車に今回も乗り込んだ。お昼までに常州に到着し、食事をしてから常州大学城へ。この大学城には、6つの大学が集まっていて、ひとつの街が構成されている。そしてこの6つの大学すべてに日本語学科が設置されているが、今回は常州軽工職業技術学院で講演を行った。この大学は三年制で、最初の2年は学校で日本語を学び、翌年にはごっそりと常州市内にある日系企業でインターンをすることになっている。そして、卒業後はそのままその会社の社員として働くというのだ。つまり、入学とともに就職の口も決まったも同然、将来が約束されているというのだ。

さて、メインの講演会はどうだったかといえば、腹痛に堪え、何とか90分話し切ることができた。会場にいた学生たちはわたしの体調が思わしくなかったことに気づかなかったはずだ。テンションは普段より低めだったが、この講演会をアレンジしてくれた常州朝日学校の史校長の話によると、落ち着いて話していたとのこと。こうなると、多少体調が悪くても、それが却って良い結果をもたらすかもしれないということもわかった。

これは、一見大したこととは思われないが、実は非常に重要だ。というのも、正直にいえば、どこへ行くにも不安が付きまとう。なぜなら、どこへ行ってもすべて「アウェイ」と感じているからだ。わたしを知る学生たちのいない中で行う講演会で、「一生忘れられない一日をプレゼントする」というのは非常に困難な作業だ。常にそのような状況の中で挑戦しているのだから、体調が悪いにもかかわらずうまくできたという成功経験が一回でもあれば、講演前に嫌なイメージを抱かなくて済む。嫌なイメージを払拭するだけで、その日の講演の出来不出来が大きく左右されるのだ。

北京⇔江蘇省、往復11時間の日帰り講演を終えることができた。これまでの自分よりもほんの少し力がついたような気がする。

 

笈川幸司のご紹介

 

人民中国インターネット版 2012年6月

 

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