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万博建築が教えてくれたもの

鄭時齢=文

鄭時齢 中国科学アカデミー会員。都市計画・建築学専門家。中国2010年上海万博テーマ演繹顧問。イタリア2015年ミラノ万博学術委員会委員。

万博は世界に建築を知らしめ、建築家を知らしめ、建築の理念を伝え、世界のためにより良い建築物を創造し基礎を築くのである。

21世紀は都市の世紀であり、万博はこの都市の世紀の足どりを推進した。

万博は会場を建設しただけでなく、新しい都市空間を形成し、都市を全面的に革新させ改造させた。初期の万博の単独パビリオンから今日のようなパビリオン群に拡張し、多くの補助建築が加わった。例えば、会議センター、文化センター、総合芸術ホール及び各種サービス施設。そして橋梁、トンネル、地下鉄、バス停、駐車場など大型インフラである。万博会場はあたかも一つの設備の整った都市であるかのようだ。同時に、万博を開催する都市も多くの建築やインフラを造り上げ、都市空間と建設レベルを高めてきた。1992年のセビリア万博は万博都市建設のモデルであり、上海万博はさらに、都市の革新と黄浦江両岸の都市臨水空間の発展・再構築の成功ケースを創造している。

建築は万博の主役であり、万博の建築は建築芸術と技術の創造で都市の生活スタイルを変え、人々の空間観念と空間体験を変えた。一方、万博の各開催都市も万博建築及びその計画・デザインの上で異なった歴史時期の社会気風、生活スタイル、美の追求、価値観念を表現してきた。歴史上、いくつかの万博建築群は万博の標識となったばかりでなく、都市あるいは国家の標識となった。現代の万博は規模が大きいため、一つの標識的建築物が万博を代表するヒロイズム建築の時代はすでに過去となった。同時に、各国パビリオンも建築物に内在する本質をより重視するようになり、建築におけるエコロジー的価値を重んじている。万博も建築全体の意義によってその標識性を表しており、万博の核心的価値を表現し、永久に伝えようとしている。

建築の最新プラクティス場

今回の上海万博も建築の博覧会である。会場内の各種建築は比類ない素晴らしさの展示品、装置芸術であり、その芸術的価値はパビリオン内の展示品に少しも引けを取らない。第二次世界大戦後の万博建築を振り返ってみれば、多くの万博ではいくつかの建築だけが突出し、スターとなったため、全面的に世界建築のすう勢を代表することはできず、少数の登録万博のみが建築の発展潮流をけん引してきたことがはっきり分かる。例えば1958年のブリュッセル万博、1967年のモントリオール万博、1970年の大阪万博、1992年のセビリア万博、2000年のハノーバー万博などである。これらの万博ではより集中的に建築の前衛性とプラクティス性が表現された。

ハノーバー万博から10年が経過した今日、世界の建築家は上海で再び新建築プラクティスの機会を得た。この10年の間に、世界建築は多元的な発展を遂げ、エコロジーと持続可能な発展の価値観と理念を導入し、新しい建築材料とエコ技術が登場した。

同時に、都市化の急速な発展と社会の転換に伴い、中国では史上空前の大規模な建築プラクティスが進んでいる。現代において最も業績を残している国際的建築家は誰もみなこのプラクティス場に貢献するか自分を売り込んでおり、中国はすでに世界建築の中心になっている。この大きな環境もあって、2010年上海万博は多くの優秀な建築家の注目の的になっていた。世界各国・各地区が開催する自らのパビリオン建設のコンペも多くの優秀な建築家の関心を集めた。今回の万博のパビリオンは数が多く、作風も多様で、傑出した創造性は歴代のどの万博も及ばない。

都市と農村の相互作用を表しているスイス館(東方IC)
上海万博は現代世界建築の最新プラクティスの場であり、自前の建築にしろ、借りているものにしろ、あるいは企業館にしろ、みな建築によって各国・各地区の文化を表し、建築言語によって都市のテーマを押し広めて展開する。例えばイタリア館は建築空間を用いてイタリアの都市について語っており、スウェーデン館が外壁面で表現しているのは都市の肌のきめである。デンマーク館は都市の生活を表現しており、ノルウェー館は大自然について述べている。さらに、スイス館は都市と農村の相互作用を表している。

このほか、上海万博はかなり多くのパビリオンが伝統的建築を原型としている。例えばインド館、ネパール館、モロッコ館、タイ館、カタール館などである。多くのパビリオンは文化伝統の現代的表現を探し求めている。例えばアラブ首長国連邦館、日本館、フランス館、スペイン館、ロシア館、ポーランド館、韓国館などである。ドイツ館、スイス館、日本館などは新材料の建築表現を模索しており、イギリス館、メキシコ館、オランダ館などは典型的なインスタレーションである。

建築が未来に残すもの

万博は建築の大家に才能と知恵を発揮させ、未来の大家に頭角を表させる場である。万博はすでに世界的な建築の大家を育てる教室、プラクティス室になっている。建築家は基本的に周辺環境と建築の複雑な機能、技術的条件を考えることなく、十分に想像力と創造力を発揮し、豊富で多彩な建築空間を創造する。まったく新しい建築プラクティスは世界建築の未来をけん引する。万博は世界に建築を知らしめ、建築家を知らしめ、建築の理念を伝え、世界のためにより良い建築を創造し基礎を築くのである。

上海万博は2000年のハノーバー万博の後にあって、現代世界建築のプラクティス性、前衛性、創造性、批判性を繰り広げる。浦西エリアのベストシティ・プラクティス区には全世界のグリーン建築の粋が集まっており、博覧会中の優良品となっている。もともとあった多くの建築、主に工業建築は環境保護的利用によって、万博の歴史に新たなページを開いた。万博後の会場は上海のため新しいシティ・プラクティスを行い、いくつかの優秀な建築は残してもらいたいものだ。それが上海万博の永遠の記憶となるからだ。

 

人民中国インターネット版 2010年8月26日

 

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