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中日を結ぶ新しい海の定期便「オーシャンローズ」号第一船に乗る

 

段非平=文・写真

長崎港に入港した「オーシャンローズ」号

2月29日、上海―長崎を結ぶ定期船「オーシャンローズ」号が運航を始めた。中日両国を結ぶこの歴史ある航路が、中日国交正常化40周年を迎える節目に15年ぶりに復活、中日間を往来する人々に新しい海のルートを開いた。

3月3日午前10時、初めての船旅だった私は、興奮と不安の相半ばした気持ちで、上海から長崎行き第一便の「オーシャンローズ」号に乗船した。そして、200人余りの乗客とともに、26時間の船旅を体験した。

格安さが魅力

乗客にライフジャケットの着用方法を示す中国人スタッフ
クルーズは高価でお金持ちが楽しむものというイメージがある。しかし「オーシャンローズ」号の最大のセールスポイントは、低価格にある。最低料金一万円ほど。この価格で、クルーズが体験できる。

船内での買い物や食事も格安である。さまざまなショップで販売される製品はすべて免税。大きな荷物を持ち込んでも、超過料金は要らない。レストランで提供される日本料理や軽食は、中国国内での日本食の高価なイメージと違い、すべてお手頃な価格で、朝昼晩の3食セットがもっとお買い得。

乗客の上海に住む老夫婦は「年をとるにつれ、飛行機に乗るととても具合が悪くなり、もう5年ほど、長崎で働いている息子に会いに行けませんでした。これからは、船に乗って、いつでも息子に会いに行けます」と嬉しそうだった。乗客の李さんは「若者にとっては、手頃な価格で日本へ行くことができるのが魅力」と言った。

クルーズの値段が下がれば、長崎・九州観光コースのコストも下がる。乗客の一人、蘇州旅行社の徐さんは「コースの価格は3000元から5000元(約4万円から6万6000円)までに設定できるでしょう。これなら多くの観光客を呼べると思います」と言った。

快適な26時間

マジックショーに参加する吉開さん(右)

26時間は、飛行機、高速鉄道の利用に慣れた身にとっては確かに長すぎる。乗船前は「この長時間をどうつぶすのか」と少々心配した。でも、実際に体験してみると、26時間は、それほど長くは感じられず、中身の詰まった楽しい旅となった。

スカイホールでは、マジックと音楽のショーがひっきりなしに上演されていた。船内の取材の傍ら、私は何回もここに足を運んだ。

マジックショーでは、マジシャンに誘われ、乗客たちが舞台に。「こんなに近くでマジックを見るのは初めてで、本当に不思議です。『オーシャンローズ』に乗ってよかった」と乗客の吉開さん。  音楽ショーでは『北国の春』『時の流れに身を任せ』『昴』など中日両国で親しまれている曲が演奏され、乗客たちは大喜び。歌手といっしょに大声を上げて歌った。「アンコール!」の声がしばしば起こって、ホールには拍手がいつまでも響いた。

漫画コーナーも人気があった。『名探偵コナン』『NANA』『ドラゴンボール』など、中国でも人気の漫画がたくさん用意され、無料で読める。漫画ファンには堪えられない。

「エンターテインメントの種類はまだ少ない。これから、乗客のリクエストや季節の変化に応じて、マグロ解体ショーなど、より多くのサービスを提供していきたいと思っています」と、この航路を運営している「HTBクルーズ」の船橋良介さんは言った。

中日のスタッフがともに働く

「オーシャンローズ」号の船体には、菊と桜の絵が大きく描かれている。これは、中国と日本を象徴している。

「オーシャンローズ」号では、中国人と日本人のスタッフがいっしょに働き、いっしょに生活している。乗船口で案内役をしている中国人スタッフの崔さんは「前々から、日本のサービスは最高と聞いていましたが、実際に日本人スタッフといっしょに働いてみると、それが本当だと分かりました」と言う。出航の日は雨が降ったので、乗船口に水が少し溜まっていたが、日本人スタッフは1時間以上も、乗客が滑らないよう、しゃがみこんで地面を拭いていたという。「その真剣さに、日本のスタッフの乗客第一というサービス精神を感じました」と感心していた。

長崎県物産コーナー

長崎県観光情報コーナー

漫画コーナー

問題点を率直に反省

第一便では、シャワーのお湯が出ない、浴室の水が詰まる、公衆トイレの配置が不合理などといった不満も出た。そのうえ、あいにくの濃霧と強風で、長崎到着は二時間半も遅れ、乗客へのインフォメーションも十分ではなかった、などの問題点もあった。

運営会社「HTBクルーズ」の社長と長崎市の関係者は、入港セレモニーで、問題点を率直に認め、「反省し、必ず改善します」とお詫びし、決意を表明した。

3月4日午後3時、「オーシャンローズ」号はその巨大な白い船体を長崎港の岸壁に静かに横づけした。「長崎へようこそ」と書かれた横断幕や中日両国の国旗の波が乗客たちを迎えた。長崎県の学生たちが雨の中、笑顔で歓迎のアトラクションを演じ、下船手続きの長い待ち時間の苛立つ気持ちを和ませてくれた。こうして私は、少し船酔いしたものの、無事に日本の地を踏んだのだった。

チケットとドアキー

ハウステンボスのお買得商品を勧めるスタッフの小谷さん

「オーシャンローズ」号
約3万トン。定員は1050人、客室は135。中国人向け免税店、和食レストラン、長崎県物産販売ブースなどを備えている。最安運賃9800円(早期割引料金7800円、燃油サーチャージなど別途5400円必要)に設定。上海―長崎間を約26時間で結ぶ。3月中旬まで週1往復、5月末までは週2往復、その後は未定。
航路復活の経緯
中国と日本を結ぶ上海―長崎航路が開通したのは1923年。当時は長崎丸と上海丸が往復していたが、いずれも戦争で沈没した。1994年から定期運航が再開されたが、当時は海外旅行に出かける中国人は少なく、わずか3年で運航停止となっていた。

 

人民中国インターネット版 2012年3月

 

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