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通信業界に革命もたらす 無線LAN内蔵携帯開発者

 

王焱=文・写真

携帯電話はもはや珍しくはない。通話とショートメッセージの送信しかできなかったときから、ネットサーフィンができるまで、無線通信は常に進化している。

海外ユーターン人材によるハイテク企業

「今までは携帯でネットに接続しようとしても、ネット接続手続きが必要な上、手数料も高いし面倒くさい。今のスマートフォンは無線LANの環境さえあれば直接接続できる。『無線LAN内蔵携帯電話(WiFi携帯)』は従来の公衆電話網を使わず、無線LAN経由で音声通話ができる新しい技術です。国際長距離通話や画像の送信も、従来の携帯電話のような伝送速度の遅さや手数料の高さといった心配がなくなりました」と華科力揚公司の方沛宇(45)取締役会長が紹介した。

回路基板を検査している方沛宇博士。方さんによれば、販売が好調なので天津に3万平方㍍余りの土地を購入し、新工場を建てる予定だという

物理学専攻の方沛宇さんは、1990年代の初めに日本に留学し、東京大学で博士号を取得した。かつてエンジニアとして株式会社東芝に勤め、その後ソフトウェア会社を創立した。2003年前後に帰国して創業しようと決心し、無線LAN内蔵携帯電話技術の研究・開発に取り組んだ。現在、彼の会社は中国の無線LAN内蔵携帯電話シングルモード(WiFiシングルモード)の業界トップとなった。

方さんの記憶によると、2002年に北京中関村科学技術パーク管理委員会の代表が東京に来て、彼を含む留学生30数名と座談会を行った。中国にはすでにトータルな政策によるサービスシステムと起業サポートシステムが作られていることを知り、方さんは非常に勇気づけられ、「学んだ知識と特長を生かして祖国のために役立て、中日友好の架け橋になろう」と決意を固めた。2003年、方さんは中関村国際インキュベーターパークに華科力揚科技有限公司を創立した。

創業当初の数年間、方さんと彼の研究チームは各種のデジタル製品の研究・開発で成果を挙げていた。しかし彼は、「研究で成果が挙がったとしても、すべてが利益を生むとは限らない」ということにも気づいていた。考えた末、無線LAN内蔵携帯電話の研究・開発事業に全力を投入することにした。

狙いを定めて市場で勝ち抜く 

2008年、方さんのチームが研究・開発した家庭用無線LAN内蔵携帯電話が外国企業の目に止まり、大量のオーダーをもらった。そこで、方さんはベンチャーキャピタルと投資契約を結び、製品の産業化に着手した。ところが、金融危機の嵐が無情にも襲った。

そのことに触れると、今でも方さんは動悸がする。「外国の取引先から注文をキャンセルされ、大量の在庫を抱えてしまいました。ベンチャーキャピタルの出資も断たれてしまい、会社は資金繰りにつまり……感謝すべきは、この生死存亡の時、中関村国際インキュベーターが理解と支援の手を差し伸べてくれたことです」

幸い、ひとつの情報が在庫品の販売ルートにつながった。国内のある石炭企業が地下無線通信機器を買い求めてくれたのである。普通の携帯は地上の信号を受信して通話するので、地下では使いものにならない。それに対し無線LAN内蔵携帯電話は、その無線LAN環境さえあれば使うことができる。会社は在庫品をグレードアップして改造し、無事販売することができた。

これは一時的な窮地を救っただけではなく、方さんは無線LAN内蔵携帯電話が、無線LANを必要とする業界で巨大なビジネスマーケットになることに注目した。彼は、マーケティング戦略を調整し、独特の技術でコストを大幅に下げ、鉱山や建築、石油、ホテル、医療など多くの業界に費用対効果の高い製品を提供した。「ある地下環境向けの爆発防止付きLAN内蔵携帯電話は最も人気があり、今では国内石炭業界シェアの80%を誇り、欧米やオーストラリアへも販売しています」と方さんは言った。

個人ユーザー向けの無線LAN内蔵携帯電話の研究・開発もかなり進んでいる。「企画中のビデオIPフォンは、従来の通信サービスプロバイダーを通さず、直接今あるLANで音声とビデオを伝送できるので、電話代も支払わずに済みます」と方さん。「これはきっと通信業界に革命をもたらしますよ」

 

人民中国インターネット版 2011年11月

 

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