一号文書・家庭農場
 2013年1月31日、中央一号文書「中国共産党中央 国務院の現代農業の発展を速め、農村の発展活力をさらに増強するための若干の意見」の全文が公布された。この文書には、専業大農家、家庭農場、農民協同組合に対する土地使用権の転貸により、多様な形式の適度な規模における経営の発展を奨励・支持することが記されている。
 
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中央一号文書で「家庭農場」に初めて言及
 これは中央一号文書が連続10年「三農(農業、農村、農民)」に注目し続けたものであるうえに、「家庭農場」という言葉が初めて一号文書の中で使われ、専業大農家、リーダー企業への政策支持もこの中に再び明確に記されている。
 
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農村の発展を促す新原動力
 「家庭農場」という言葉は、中国においては新語である。欧米における「ファミリー・ファーム」は、家族を単位として営まれる伝統的な農業経営のことだが、中国における「家庭農場」は、家族が主な労働力となり、大規模化、集約化、商品化した農業生産・経営活動を行う新型の農業経営を指す…。
都市化との正のスパイラル
複雑な土地の賃貸関係
さまざまな政策・資金援助
プロの農民を育成し、多様な発展を
 近年、社会で家庭農場が注目されているのと同様に、学界でもこれに関する議論と研究が非常に盛んとなっている。今回われわれは、中国農業大学人文・発展学院副院長、農民問題研究所所長の朱啓臻氏にお話を伺った…。
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 上海市の南西にある松江区は江南でも名高い農水産物の豊かな地区で、かつては蘇(蘇州府)松(松江府)の富は天下の半分」とまで言われた。しかし、松江区がきわめて早いテンポで経済発展を遂げたため、農村の労働力が第二次・第三次産業(工業・サービス業)に移動する結果となった…。
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農業にも科学的思考を
 上海市の虹橋駅から車で三十分ちょっとで、松江区泖港鎮に到着した。道中、きちんと整備された田舎道が続き、緑の田んぼと縦横に走る水路に囲まれ、日本の田園風景の中に身を置いているようだった…。
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畜産業との結合
 農耕はつらい労働であるため、多くの若者は農地を捨て、都市に出て労働者となる。しかし、李春風さん(三四)は都市生活を捨て、故郷の腰泾村へ戻って、最も若い農場主となった…。
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機械化を目指して
 柵越しに庭の中を見ると、錆付いた農業機器がたくさん積み上げられている。「ここは農業機械の整備工場ですか」と聞くと、「張小弟さんの『農業機械農民相互援助組合』です」と、兪主任が答えた…。
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食糧作物家庭農場の請負細則
戸籍条件 年齢条件
技能に関する条件 経営に関する能力
家庭農場経営者の参入資格
経営規模 請負時間 転貸価格
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用語説明
世帯生産請負責任制
 世帯生産請負責任制は1980年代初期、中国大陸部の農村で行われた重要な改革で、その形式は、世帯を単位とし、集団組織から土地などの生産手段を請負い生産任務を行うという、農業生産責任制である。最初の請負期間は15年で、1993年にさらに30年延長された。
土地転貸
 土地転貸とは、土地使用権の転貸のことを指し、土地請負経営権を持つ農民は、土地経営権(使用権)をそのほかの農民あるいは経済組織に譲渡できるが、請負権は保留され、使用権のみが譲渡される。
家庭農場
 これは、農業専門経営者、家庭農場、農民協同組合に対する土地使用権の転貸を奨励・支持するもので、家庭農場の発展は、中国の農業に一大変革をもたらすことになるかもしれない。
「家庭農場」の5つのモデル
浙江省寧波市
 市場主導によって、野菜・果物の栽培、家畜・家禽の飼育を営む大規模農家を多数育成している。大規模農家はさらに商工行政機関に登録して会社を創設し、より市場に順応した発展方式を模索している。
 家庭農場の数 600余戸
 年間平均所得 貸借料+賃金収入
 一戸あたりの農場面積 通常50ムー以上 
 年間販売額50万元以上の農家 355戸
 特徴 ほとんどが労働者を雇い、商標などを持っている
安徽省郎渓県

 2009年から、郎渓県は3年で90万元の資金を用意して、県内の優れた家庭農場10戸を選出し、毎年各農場に3万元を投入して、モデル家庭農場を建設している。家庭請負経営が実施されて以来、農民家庭は賃貸、請負または自己所有の土地経営を通じて大規模な経営形式を実現した。
 家庭農場の数 216戸
 農場の1人当たりの純収入 28910元
 一戸あたりの農場面積 50ムー以上
 特徴 「郎渓県家庭農場協会」を設立して、科学技術モデル基地を創設し、現在、モデル農場20カ所を建設中

吉林省延辺朝鮮族自治州

 2008年から、延辺では州全域で「家庭農場」モデルの模索を始めた。農村の大規模農家、都市部・農村部の法人または個人が、自由意志によって転貸された土地を請け負って集中経営する経済組織である。
 家庭農場の数  451戸
 年間平均所得  50万元以上
 一家庭農場あたりの経営面積 1185ムー
 特徴 国によるさまざまな農業財政補助政策を受けることができ、関連する税収優遇政策などを実施

湖北省武漢市
 2011年に「家庭農場など新型経営モデルの発展を支援する」方針を明確にし、知識と技術をもち経営ができる農民に請負・出資などの形式によって、分散した土地を集中させ、開発する。
 家庭農場の数 167戸
 年間平均所得 20万元以上
 一戸あたりの農場面積 15~500ムー
 特徴 家庭農場主は武漢市の農村戸籍、高卒以上の学歴を持たなければならない
上海市松江区
 農家が村民委員会に委託した後、転貸する方式で、農民の耕地を村全体のものとする。土地が村民委員会に転貸された後、松江区政府が、ハイレベルな基本耕地として整備し、それを請負者に貸し出す。
 家庭農場の数 約1200戸
 年間平均所得 7~10万元
 一戸あたりの農場面積 100~150ムー
 従業証明書を持つ農場主 1000余人(中・高級)
 特徴 証明書を持っていること。政府が産業チェーンの構築を後押しするなど
世界の家庭農場のさまざまな試み
オーストラリア――年末に配当金
 典型的なオーストラリアの農場は、一つの家族を単位として維持・運営されており、家族が商業資金、管理人及び労働力を提供する。ここで労働する人は保険などに加入できるため、雇用コストが高く、農業機械化レベルも高い。家族の一人ひとりが分業しており、一般的には自らが責任を持つ地域に近いところに自宅がある。農繁期、例えば収穫期やヒツジの毛刈りの時期には、短期アルバイトを雇う。肥料、化学薬品、新機材など農場に関する費用はすべて農場の専用基金から差し引かれる。一般的には年末になると、農場の利潤状況に応じた配当金が配られる。
日本――農家同士の協力を奨励
 日本政府は農地改革の重点を所有制から使用制度へと転じた。政府は農地の賃借及び作業委託などの形式による協力生産を奨励し、土地集中の困難や分散した土地の占有が農業発展にもたらす障害を避けようとしている。例えば、小作を中心として、土地経営権の流動性を促進し、農地集中・集約経営と共同基礎施設の建設を促進する。農協を中心に、中心的な農家や生産協力組織が適切に農地を貸出し、耕作委託した耕地の運営を援助するなどである。
フランス――中小農場の比重が大
 フランスでは中・小農場が大きな比重を占めていて、専門化レベルも高い。経営内容によって大まかに、牧畜農場、穀物農場、ブドウ農場、果樹農場、野菜農場などに分けられる。専門農場はほとんどが単一の農作物に従事しており、各自の特徴を持っている。それと同時に、かつては一つの農場ですべての仕事、例えば耕作、畑管理、収穫、輸送、貯蓄、販売などを行っていたが、今では耕作・管理以外は他の企業が担当し、農場は以前の自給生産から商品生産へと転じている。
米国――農業に厚い補助政策
 米国の大半の農産品はわずか2%の大型農場から産出されたものである。全国が10の農業生産地域に分けられ、1つの地域で主に1、2種類の農産物を生産している。農業の生産前から生産後に至るまでのサービスシステムが完備するにつれ、農場の生産経営は専門化する傾向にある。家庭農場は耕地による生産あるいは畜産業の直接経営・管理に集中している。
 政府は農業に対する手厚い補助を継続している。政府の援助は主に、技術援助及び金融貸付援助である。農場の貸付金利や個人貸付担保などの優遇策もとられている。
2012年中国家庭農場についての調査結果
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