供給側の構造改革を促進

2019-03-01 08:19:04

 

沈暁寧=文

昨年12月に開かれた中央経済活動会議では、中国の経済運営の主な課題は供給側の構造にあり、供給側構造改革を主軸としなければならないと指摘された。つまり、経済構造を引き続き調整することにより、労働力、土地、資本、制度、イノベーションなどの要素の最適化を実現し、中国経済成長の質と量を高めていくことだ。これについて会議では、「強化、増強、向上、円滑」の改革方針が打ち出された。今後の取り組みにおいて、いかにこの「8文字方針」を実行に移していくかが、中国経済の持続的で健全な発展を保障する鍵となっている。

供給側構造改革の成果を強固に

現在、世界最長の鉄道道路併用橋を目指す福建平潭海峡大橋の工事現場で、このプロジェクトを請け負った中鉄グループ大橋局の張紅心常務副社長は、「今年中に必ず橋を完成させる」と約束した。強風が吹き波も高く、水深が深く速い海流といった困難な工事だが、張副社長は「全長1634の平潭海峡大橋の完成の暁には、福州と平潭は30分でつながる」と自信たっぷりに語った。

今年には、平潭海峡大橋のような多くのインフラ整備プロジェクトが完成する見通しだ。中央経済活動会議では、供給側構造改革の成果を強固にし、より多くの業種での過剰生産能力の解消を加速するよう推進し、各種の企業コストを全体的に引き下げ、インフラ整備などの分野における脆弱部分を補強する要求が提起されており、年内に完成予定のこうしたインフラ整備は、同会議の要求と一致している。

1512月に開かれた同会議で党中央は、中国経済は「過剰生産能力の削減、過剰在庫の削減、デレバレッジ、企業のコストダウン、脆弱部分の補強」という五つの任務を主とする供給側構造改革を実施すると打ち出した。16年以来、政府は粗鋼生産で計1億2000万以上、石炭同で計5億以上の過剰生産能力を解消し、従業員110万人余りを配置転換させた。17年には、さらに石炭発電所の建設の中止停止により発電生産能力6500万㌔㍗を淘汰した。また昨年11月末までに、銀行と企業間で調印されたDES(デットエクイティスワップ、銀行による企業債務の株式化)プロジェクトの総額は、1兆8928億元に達し、このうち5050億元がすでに企業側に渡っている。昨年1~10月における、一定規模(年間営業収入が2000万元規模)以上の工業系企業の100元当たりの主な業務収入のうち、コストと費用の合計は9259元を占め、前年の同時期と比べ025元減少した。供給側構造改革は見事な成果を上げ、中国経済が安定的な成長を維持する上で大きな役割を果たした。

「この新しい1年は、供給側構造改革の5大任務のうち、過剰生産能力の削減、コストの削減の深化、インフラ整備の脆弱部分の補強という三つの分野に焦点を当て、いっそう整理を進めていく。また、中国経済の供給側が、ニーズや市場の動きに対して素早く反応できるよう、市場化、法治化した手段をより多く取り入れていく」と、中国人民大学の劉元春副学長は述べた。

過剰生産能力の削減で最も難しいのは債務の扱いだ。債務危機の解決に成功した中国第二大型機械グループ(CNEG)は、これについて多くの知見がある。「過去数年間において、債務問題に対応するため、債務の再構築(2)や第三者割当増資(3)など多くの手立てを講じ、資産の質を改善した」と同社の陸文俊会長は述べる。今年、同社はハイエンド設備の研究開発に力を入れ、積極的に海外市場へ事業展開する予定だ。

企業家が一番関心を持つのはコストの削減であり、「軽装で出陣」し、ハイエンド製造業へのグレードアップの歩みを速めることを望んでいる。財政部(日本の財務省に相当)の許宏才部長補佐は1月15日、18年度の中国企業への減税と行政諸費用削減の規模が約1兆3000億元となり、今年はさらに大規模な減税と諸費用削減を実施すると明らかにした。

この知らせに、11年3月11日に起きた東日本大震災で、福島にロングホースのポンプ車を寄贈したことがある三一重工は喜んだ。同社の陳静副社長は、「より大規模な減税と費用削減の政策は、企業、特に民営企業には間違いなく良いことだ」と話す。陳副社長によれば、最も困難な調整期を乗り越えたばかりの三一重工は、質の高い成長を新たに迎えている。今後は、減税と費用削減という「プレゼント」がさらに大きくなり、企業が研究開発に力を注いで競争力を高められるよう、陳氏は期待する。

企業の制度的な取引コストと融資コストなどについては、まだコストダウンの余地があると、前出の中国人民大学の劉元春副学長は考える。「企業に対する政府の行政簡素化権限委譲(4)、規制緩和と管理の結合、サービス改善への改革強化、さらに統一した大市場の構築に伴い、企業の取引コストは大幅な低減が見込まれる」と劉氏は述べた。

脆弱部分の補強について、国家発展改革委員会の何立峰主任は、以下の点について明らかにした。中国は今年、インフラの質の高い発展の全体戦略を制定し、貧困脱却の難関攻略、農業と農村、水利、環境保全、暮らし、エネルギー、交通インフラなどの分野において、脆弱部分を補強する投資を拡大する予定だ。各地方政府は法律に基づき、社会資本と提携するなどの方法で、脆弱部分を補強する重要プロジェクトへの社会資本の投資を導き、「第13次5カ年計画」(2016~20年)期間中の165項目の重要プロジェクトの実施と完成を着実に進める。

企業発展の活力を増強

「公平かつ開放的で透明性の高い市場ルールと法治に基づくビジネス環境(5)作りは、企業や企業家が積極性を発揮するために最も必要なものだ」。中国の有名なドローン研究開発の大手企業である深圳市の大疆創新科技社(DJI)のスポークスマン、謝闐地氏はこう述べた。

「今年DJIは引き続き『産業+ドローン』というモデルによって、これまで各産業界にあった技術の壁を打ち破り、少しでも工業と商業の在り方を変えていく」

企業発展の活力は、政府によるビジネス環境の整備と不可分だ。中央経済活動会議では、「ミクロ経済主体の活力を強化する」と打ち出された。この前提は、公平かつ開放的で、透明性の高い市場ルールと法治に基づくビジネス環境の構築だ。中央経済活動会議が閉幕した4日後、『市場参入ネガティブリスト(2018年版)』が正式に発表された。試行版に比べて正式版では参入禁止類と参入許可類が約54%縮減され、「法律で禁止されていなければ参入可能」を実現した。

世界銀行の最新の発表によると、中国のビジネス環境の世界ランクは78位から46位に上昇した。多くの起業者は、新しい1年に関係部門が小規模零細企業(6)のために、より公平な市場参入条件を提供することを期待している。

大学生向けにアルバイト情報を提供する携帯アプリサービス「Eアルバイト」の創業者陳雪峰氏はこう語った。

「大中型企業と比べ、小規模零細企業は人材、資金、技術、管理レベル、市場リスクへの対応などの面における能力が弱い。このため、政府が小規模零細企業の早期発展のハードルを引き下げ、参入しやすい市場環境を提供し、こうした企業が生存し発展する余地を広げることが必要だ」

これに対して、中央経済活動会議では、「市場が自主的に調整できることは市場に任せ、企業ができることは企業に任せる」ことが提起された。この決定は企業界から支持された。国務院発展研究センター市場経済研究所の王微所長は、「政府は市場ルールの確立、市場の管理監督、マクロコントロール、発展計画や公共サービスなどの面において力を入れるべきで、資源配分への関与をもっと減らすべきだ」と述べた。

この他、企業に普遍的な恩恵をもたらすとして広く注目されている税の減免政策も、このほど明らかにされた。財政部と国家税務総局のデータによると、今年の企業減税の「プレゼント」は1800万社近くに及び、全国の納税企業の95%以上を占め、多くの民営企業にもたらされる見通しだ。先日開かれた国務院常務会議では、小規模零細企業を対象に普遍的な恩恵をもたらす税の減免政策が、改めて打ち出された。これらの減税政策は今年1月1日にさかのぼって実施され、期間は暫定的に3年。毎年、小規模零細企業の負担をさらに約2000億元減らし、全体の減税規模は約6000億元に達すると見込まれる。改革により力を入れることに伴い、ミクロ経済主体の活力が強化され、企業にプラスとなる政策措置が実施されるだろう。

科学技術イノベーションを向上

湖南晟通科学技術グループの工場では、厚さが毛髪の直径の10分の1ほどという銀色高精度アルミ箔が、出荷を目指し積み込まれている。同社の李航副社長は、「われわれは、高性能アルミニウム合金箔のコア技術の開発により、価格決定権を握った」と話した。

工業情報化部によると、中国の製造業は国際規格の産業分類下の24産業グループ、71産業と137の産業サブグループを全てカバーしており、製造業体系が世界で最も完備された国の一つだ。近年、中国は北斗衛星測位システム、量子通信、月探査計画、人工知能(AI)など、多くの科学技術の革新において重要な飛躍を果たした。世界知的所有権機関と米コーネル大学などが共同で昨年7月に発表した、2018年のグローバルイノベーションインデックス(GII、各国のイノベーション能力や成果を評価した指数)によると、中国は17年の22位から17位に順位を上げた。しかし、一部の産業チェーンのプロセスにおいて、中国はまだ輸入を頼りとし、とりわけコア技術の分野においては、依然として人の顔色をうかがわなければならない。

これに対して、中央経済活動会議では、産業チェーンのレベルを向上させ、技術のイノベーションと経済のスケールメリット(7)を生かし、新たな競争の優位性を作り上げ、新たな産業クラスター(8)を育成発展させることが提起された。これには多くの企業が痛いところを突かれた。李航副社長は、「産業チェーンがレベルアップする余地は多いが、川上と川下の企業がまだ力を合わせていない。単独作戦のケースが多い」と話す。

中国マクロ経済研究院産業所工業研究室の付保宗主任は以下のように分析する。先進国のハイエンド産業復帰の流れと、発展途上国のミドルレンジローエンド産業移転の流れという「双方向からの圧力」を受けて、産業チェーンのレベルアップという目標を実現するためには、以下の点が必要だ。つまり、産業構造の状況を、あらゆる分野をカバーするミドルレンジローエンド型から、ある分野をリードして飛躍をもたらすハイエンド型へと転換し、供給タイプは量と規模を重視するモデルから質と効率を重視するモデルへとグレードアップする必要がある。

付保宗氏によれば、技術のイノベーションを生かし、新たな競争力を作り上げるためには、研究成果の移転転化に有利な体制の構築が鍵だという。例えば、科学技術研究機構の細分化と改革の加速、自主的なイノベーションと独立採算制による企業化した応用科学技術研究機構の設立。また、基礎研究を行う機構への、より大きな自主研究の権限付与などが挙げられた。

イノベーションによる発展推進には資金の手当てが欠かせない。国家開発投資公司の王会生会長は以下のように紹介する。「弊社は多くのファンドの設立と管理に関わって来た。産業チェーンの整理統合を通し、見込みがある戦略的な投資機会を発掘する。こうして新しい原動力を育成し、産業クラスターを作り上げていく。今年、弊社はファンドを十分に生かし、科学技術イノベーション企業の発展をサポートする」

イノベーション発展を模索する中、多くの企業は、中国の産業クラスターが持つ規模の優位性は、産業チェーンが良い相互作用を推し進める上での大きな土台であるという考えを示す。今後、産業クラスターを速やかにグレードアップさせ、デザイン研究開発からブランドサービスまで全プロセスをカバーする産業クラスターを構築する必要がある。

「現在、各地で産業クラスターが建設されており、各地の優位な産業に基づいて位置付けを明確にし、産業の同質化や重複建設を避けるべきだ。そして、クラスター内での各都市も分業し、良い相互作用による産業構造を作り上げるべきだ」と、ある電気機関車製造会社の経営者は提案する。

産業チェーンのレベルアップは、世界的な視野が必要とされる。多くの中国企業は海外企業に開放し、共同で製品を開発する新たなモデルを構築しているところだ。スマート製品(9)の研究開発に力を入れるTCLグループの李東生会長は、「われわれが1999年にベトナムでグローバル化の『旅』を始めてから20年たった。私たちは現在、世界的な範囲での業務の統合と資源の最適化を通し、絶えず新しい活力を生み出せるという自信がある」と述べた。

国民経済の循環を円滑化に

「先日3000万元余りの融資を手にし、焦眉の急が解決できた」と、黒龍江グリーンヘルスバイオ科学技術社の董沢武会長は興奮気味に語る。この資金を元に、同社は今年新しいレシチンのバイオ医薬品の開発に全力で取り組み、引き続きバイオ発酵分離分野で、新たな販売マーケットを切り開く予定だ。

企業に金融という「血液」をいかにスムーズに流し、躍動感ある成長を実現させるか? 中央経済活動会議は、次の良い解決策を打ち出した。「国民経済の循環を円滑化し、統一され開放的で、競争に秩序のある現代的な市場体系の建設を加速し、金融システムの実体経済への貢献能力を強化し、国内市場と生産側、経済成長と就業の拡大、金融と実体経済の良い循環を実現すべきだ」

前出の付保宗氏は、「国民経済の循環の円滑化には、まず経済運営の中で『目詰まり』しているところを見つけ出す必要がある」と考える。付氏によると、現在、経済循環の主な問題は三つの「食い違い」だという。一つ目は、市場の需給関係の食い違いである。国内で製造している品物の品質とブランドは、消費グレードアップの要求を満たせないため、需要が海外にあふれ出し、国内の生産能力の過剰を招いた。二つ目は、人材資源と産業の需要の食い違いである。求人難と就職難が同時に存在し、就業の構造的な問題は依然として際立っている。三つ目は、金融と実体経済の食い違いである。民営経済が得る金融サポートが相対的に不足している。「目詰まり」を取り除き「スムーズな流れ」を実現するために、上述の三つの難関を克服しなければならない。

これに対し、前出の国務院発展研究センター市場経済研究所の王微所長は以下のように述べる。「需給の結合関係については、消費需要を進むべき方向とし、生産構造の最適化とグレードアップを促す。また、安定的な成長と雇用の拡大については、消費型サービス業の雇用潜在力を掘り起こすとともに、生産型サービス業と製造業の質の高い発展を共に推進し、二つの経済関係が良い循環軌道に乗るよう促す。例えて言えば、いかに実体経済の水路に金融という流れを通すのか、ということだ。特にいかに民営経済をより良く手助けするかが、大きな課題に直面している」

「現在、経営資金は基本的に確保できている。しかし、これからプロジェクトを拡大し、全国に生産拠点を展開するため、さらに資金の手当てが必要だ。私は今年、金融機関には、民営企業に対して大規模で長期的、優遇的な借款を提供するよう望んでいる」と、遼寧三三工業の呂春雷常務副社長は年明けの頃に、期待を語っていた。

融資コストの削減や融資圧力の緩和は、中国企業、特に民営企業や中小企業が発展していく際の重要な要求となっている。一方、一部の金融機関は財テク投資に熱中しているため、資金が「実体経済から離れてバーチャル経済に流れている」という問題が出ている。これについて、交通銀行の連平首席エコノミストは、「実体経済のサポートは、党中央が金融業界に示した重要な方向だ。現段階において各銀行は、さまざまな金融商品を総合的に生かし、小規模零細企業と民営企業に融資し、十分な資金が実体経済に流れるよう保障すべきだ」と指摘した。

金融と実体経済の間に存在する「目詰まり」をいかに取り除くかについて、王微氏は次のように提案する。「多層的で多様化した、多くの主体による金融サービス機構を設立し、より多くの中小銀行と地方銀行が小規模零細企業をサポートできるよう育て上げる。この他、金融イノベーションを奨励し、企業の設備、在庫品、売掛金、知的所有権など多様な資産を借款の担保にできるよう徐々に試行しながら、民営経済と中小企業の融資ルートを開いていくべきだ」

最後に、今年の中国経済成長の見通しについて、中国社会科学院の財政経済戦略研究院の李雪松副院長は、以下のように展望した。「新しい1年に中国経済が引き続き質の高い成長を維持するためには、不動心を持つ必要がある。つまり、一貫して改革を深化させ、開放の拡大を進めるという原則をしっかりと堅持し、民営企業を活性化させ、自主的なイノベーション能力を向上させ、国際交流と協力などの強化において、成果を上げるべきだ」

 

人民中国インターネット版 201931

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