PART3 充実化進むスポーツ環境

2023-11-30 17:45:00

段非平=文

ここ数年、中国でスポーツやフィットネスの人気がますます高まり、ブームが続く一方なのはなぜか?感動的な競技大会に影響されたり、健康意識が向上したりしたことが挙げられるが、公共スポーツ施設の充実ぶりもこのブーム形成の鍵となっている。 

プロスポーツに触発され 

「優勝して、20年ぶりに王座を奪還したんです!」。今年の成都ユニバーシティゲームズの女子バスケットボール決勝戦を会場で観戦していた張珂さんは、その輝かしい瞬間を思い出すと今でも興奮を隠せない。そのエキサイティングな決勝戦は、彼が再びバスケットコートに戻るきっかけとなった。「学生時代はよくバスケをしていましたが、社会人になってからは次第にやらなくなりました。最近、成都ユニバやバスケワールドカップの試合を見て、情熱が燃えました。友達と毎週少なくとも1試合して、再び情熱を取り戻し、体を鍛えると約束したんです」 

2022年の北京冬季五輪の開催は、多くの中国人のウインタースポーツへの情熱をかき立てた。昨年末から今年4月までの「全国大衆氷雪シーズン」中、全国各地でウインタースポーツイベントが1499回行われた。冬は冷凍庫がなくてもアイスクリームを販売できる東北地方から、雪をめったに見ることがない海南省まで、黄浦江のほとりの不夜城・上海から新疆ウイグル自治区アルタイ山脈麓の古村落・禾木村まで、中国各地でウインタースポーツ愛好家の姿が見られる。 

ストックを突いて体を躍らせながら斜面を滑る……四川省眉山市洪雅県実験小学校の伍瑾軒さん(11)は、コーチの指導によってスキー技術がめきめき成長している。北京冬季五輪の開催によって、伍さんはウインタースポーツのとりこになった。「スキーをしていると空を飛んでいるような気分になります。将来は谷愛凌選手や蘇翊鳴選手のようになりたいです!」。北京冬季五輪が追い風となって、中国のウインタースポーツはマイナーからメジャーになり、一部地域から全国に広がり、国民総参加の熱意が中国全土に燃え広がり、「3億人をウインタースポーツに導く」というビジョンが現実となった。 

手頃なフィットネス圏 

「アイスリボン」市民スピードスケートシリーズ女子ユース部門の優勝者である張騫予さん(11)は、国家スピードスケート館(愛称は「アイスリボン」)のメモリアルウォールに自分の名前を書いた。もともとは北京冬季五輪スピードスケートで記録を更新した選手の栄誉だったが、その翌年に一般のスケート愛好家もその栄誉を手にできるようになった。「一般人が冬季五輪の競技場で達成感を味わい、コースの主役になった。これは北京冬季五輪が残した貴重な財産です」と、北京国家スピードスケート館経営有限責任公司の程淑潔副総経理は感慨深く語った。 

重要なスポーツイベントの遺産として、北京冬季五輪、成都ユニバ、杭州アジア大会など一連の競技大会の会場は、全て無料または低価格な料金で一般開放され、市民の多様なスポーツニーズに応えて、国民総フィットネス参加と中国スポーツ事業の発展を環境面でサポートしている。多くの伝説が生まれたこれらの場所で、スポーツ好きたちは思いきり体を動かし、自身の軌跡を描いている。 

競技大会の遺産の有効活用のほか、ここ数年、各地政府は、「どこで体を動かせばいいのか」という難題を解決し続け、積極的に都市に「15分フィットネス圏」をつくることを模索し、フィットネスを人々の生活にさらに溶け込ませる後押しをしている。 

15分フィットネス圏」とは、住民の居住地から徒歩または自転車で15分圏内に、一般的な運動ができる会場や施設などがあることを指す。都市の空き地、公園の緑地、岸辺、廃工場、古い倉庫、高架橋の下、公共施設の屋上など、こうした都市の隠れた一角は、「15分フィットネス圏」構築に利用できる貴重な場所となっている。 

武漢市漢陽江灘の一角にある楊泗港は、かつて「長江黄金水路」の繁栄と同市産業の発展を目の当たりにした。2010年、武漢長江は産業沿岸線から環境保護を目的とする生態沿岸線への転換が始まり、楊泗港も貨物輸送の機能を失った。昨年、再設計と改造を経て、10年以上前に廃止された貨物埠頭が、ファッショナブルなバスケットボールコートと長江沿いの公園に生まれ変わった。バスケコート上に描かれた中国の隈取りの絵は周囲の環境と見事にマッチし、一躍武漢バスケ界の人気スポットとなった。 

浙江省寧波市海曙区の迎鳳社区(コミュニティー)では、「庶民のスポーツジム」が最も人気のある場所となっている。「ここは以前、閉鎖された駐輪場でしたが、その後、街道住民委員会の職員とコミュニティーの党員ボランティアが協力してゴミを掃除し、ルームランナー、卓球台などを設置し、300平方㍍のジムになったんです」と、住民の項吉甫さんが紹介する。「ここでの運動は、1日1元、年間費100元です。非常に安いので、近隣住民がわれ先に来てトレーニングをしています」 

公共スポーツ施設が継続的に充実し続けることで、住民は身近な場所でスポーツのニーズを満たすことができるようになり、国民総フィットネス事業の普及と発展を効果的に促進している。 

フィットネスをする意欲もあれば場所もある。スポーツやトレーニングをして体を動かす喜びとそれがもたらす運動を満喫する中国人が増えている。 

安徽省亳州市蒙城県の全県民フィットネスセンターは、日常的にバスケやサッカーができる絶好の場所になった(vcg)

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