一流サービスで外資導入

2024-03-01 16:43:00

王朝陽=文

在、反グローバル化の思想が台頭し、一国主義と保護貿易主義が明らかに強まっている。このような背景の下、中国はハイレベルの対外開放を揺るぎなく推し進め、新たな開放型の経済体制を構築している。昨年、中国で新たに設立された外資系企業は5万3766社に達し、実行ベースの外資導入額は1兆1339億1000万元だった。外資を積極的に導入活用することは、中国のビジネス環境の最適化に対してより高い要求を課している。 

迅速効率的に問題解決 

山東省徳州市斉河県の政務サービスホールの日韓ASEAN(東南アジア諸国連合)関連政務サービスセクションでは、中国語と英語の案内表示が特に目を引く。窓口には日本語、韓国語と英語の3種類の斉河県のパンフレットも置かれている。スタッフらは外国語に堪能で、政策に詳しく、外資系企業の地元への投資や外国人の地元での雇用発展のために、事務ガイドや支援、または代理業務などのワンストップサービスを提供している。 

韓国の洲源環境保護テクノロジー(斉河)社代表理事のユンヨンフン氏は、斉河県政府の効率的で緻密な仕事ぶりを称賛する。「新型コロナウイルス感染症の拡大のため、斉河県に来て投資環境を視察する計画は何度も棚上げされました。でも、同県の日韓ASEANセンターから派遣された専門スタッフは、私たちと連絡を取り、現地の交通条件の優位性や外資系企業の投資への優遇政策などを詳しく紹介してくれました。斉河県に会社設立を決めた後は、会社登録や銀行口座の開設などの手続きを手伝ってくれ、現地のサポートも申請してくれました。私たちは斉河県の投資環境の良さを目の当たりにしただけでなく、スタッフの行き届いた支援を感じました」 

斉河県は徳州市の最南端に位置し、省都済南から黄河を挟んだ対岸にある。昨年末までに同県では、世界の企業上位500社のリスト「フォーチュングローバル500」に入るシンガポールの政府系投資会社テマセク社の、100%子会社である豊樹(メープルツリー)グループをはじめ、40社以上の外資系企業が現地に投資し事業を展開している。内陸部に位置する同県が外資にとってこのような魅力を持つのは、ハイレベルの行政サービスと密接な関わりがある。斉河県は、一流のビジネス環境づくりを内陸部の開放を推進するための基礎としている。 

斉河県は近年、許認可手続きの流れを絶えず改善削減最適化し、そのプロセスを簡略化してきた。例えば、「土地使用権取得で即着工」という許認可モデルの実施だ。 

これは、土地使用権取得後の許認可プロセスを、土地使用権の申請と同時に行えるようにしたものだ。おかげで全ての手続きの処理期間が、平均110開庁日から35開庁日へと短縮された。また不動産の権利証明書が発行される当日に、施工許可など全ての手続きを完了でき、建設プロジェクトの許認可の効率が大幅に向上した。現在、90%以上の行政サービスがワンストップで受けられ、各手続きの取り扱いプロセスを57%削減、申請資料を47%減らし、手続きにかかる時間を90%短縮した。 

日本企業の帝国電機製作所グループもその受益者だ。同グループの大連帝国キャンドモータポンプ社は19年末、斉河県と協力協定を結び、現地に同社ポンプ製品の華北地区向け修理生産基地(支社)を建設した。このプロジェクトは、用地選定からプロジェクト立ち上げまでわずか2カ月で完了し、順調に着工、20年6月に正式に開業した。 

斉河県はまた、県の幹部が主導して日韓とASEANの主要企業の業務を担当する体制を構築。定期的に企業の実地調査を行い、企業が直面する問題を速やかに把握して解決している。斉河県日韓ASEANセンターの駐日本経済貿易代表事務所の王雪聡代表は、「私たちは、外資プロジェクトに『マンツーマン』で的確なサービスを提供しており、斉河で事業展開を計画している外資プロジェクトには、いずれも専属のサービスチームを割り当てています。チームには、許認可や外資プロジェクトの業務を担当するスタッフらがおり、企業がどのような問題に遭遇しても、すぐに関係部門のスタッフに連絡できるようにし、速やかに橋渡しし、解決を保証しています」と胸を張った。 

斉河県経済協力センターと日韓ASEANセンターで主任を務める邱亮氏は、多くの外資プロジェクトとの交渉に参加した。中でも、前出の豊樹グループとの接触交渉の経験は、深く記憶に残っている。「先方が現地視察をした際、いくつか新たな雇用ニーズや生活支援要求を出され、これにはちょっと意表を突かれました。しかし、私たちは迅速に行動し、わずか半日でフィージビリティー(実現可能性)報告を出し、三つの用地選定プランを出しました。同時に、いち早く雇用者向けの専用アパートを設け、従業員の医療や子どもの就学などの問題を解決しました」。問題への迅速な対応と効率的な解決により、ついにシンガポールの豊樹グループは斉河県に進出することになった。 

立法で外資の権益保護 

内陸にある斉河県のここ数年の努力は、中国が対外開放を重視し、ビジネス環境を改善向上させていることをうかがわせる小さな窓だ。利便性が絶えず向上しているだけでなく、事務手続きがより少なくなり、時間がより短縮され、より低コストになっている。また公平性透明性法治化の向上の面で、中国政府も立法など長期的な制度の整備を通じて成果を上げている。 

中国の「外商(外国系企業向け)投資法」は19年3月15日、第13期全国人民代表大会の第2回会議で採決可決され、20年1月1日から施行されている。この法律が打ち出された意義について、商務部の魏建国元副部長はかつて本誌に寄稿し、次のようにポイントを説明した。 

「『外商投資法』は、オープンで透明性があり、長期的に安定した法律の形で、外資系企業の合法的な権益の保護を揺るぎないものとし、多くの潜在的なリスクを取り除き、中国の投資環境の透明性と予測可能性を高めるだろう。また、外資参入前の内国民待遇とネガティブリスト(管理措置)が初めて法律に組み込まれたことは大きな注目点だ。これは、中国の外資管理体制が、ケースバイケースの許認可から、限定的な許認可と届出制に転換したことを意味している。このような転換は、法治化された環境と公平の重要性をいっそう強調している。中国は、法律を基準に中国企業と外資系企業を一視同仁に扱い、平等に対応するだろう」  

「外商投資法」が施行されてから4年間の効果はどうだったか。商務部は22年に政府ネットと連携して、外資系企業3130社を対象にアンケート調査を実施。その結果、9割近くの企業が同法の施行が比較的良好で、投資環境が最適化されたと考え、中国市場への期待と信頼の高まりを示した。 

「外商投資法」の重要な付帯制度である、外資参入前の内国民待遇とネガティブリスト管理制度を例に取ると、21年版の全国向けと自由貿易試験区向けの「外商投資参入特別管理措置」(ネガティブリスト)は対象項目がさらに削減され、それぞれ31項目と27項目になり、自由貿易試験区向けの製造業に関する項目はゼロとなった。 

また金融分野の外資参入制限を緩和し、全国向けと自由貿易試験区向けの金融業項目のゼロ化が実現。外国の金融機関は22年8月末までで、中国に外資系法人銀行41行、外国銀行の支店117店、外資系保険機関68社を設立した。 

また、外資系企業から報告される「外商投資法」の実施過程で生じたいくつかの問題点――例えば▽ネガティブリストが制限禁止する参入分野が具体的でない▽一部の地方が政府調達において外資系企業を差別する▽時に中国企業と同等の政府支援政策を得られないなどについて、中国政府も絶えずフォローしており、付帯制度の構築を持続的に強化し、外資管理制度の整備に努めている。 

国務院は昨年8月13日、「外商投資環境のさらなる最適化と外商投資導入活動の強化に関する意見」(以下、「意見」)を通達し、外資活用の質の向上や外国投資企業の内国民待遇の保障など六つの面で24の政策的な措置を打ち出した。 

これについて、キヤノン中国の小澤秀樹会長兼最高経営責任者(CEO)は次のように評価した。「今回の『意見』は、外資系企業が中国での投資や事業展開において最も求めているいくつかのホットな議題に、的確かつ明確に応えたものです。特に、『法律に基づき政府調達活動への外資系企業の参加を保証する』ことと、『法律に基づき対等に規格制定作業への外資系企業の参加を支援する』ことは、われわれにとって非常に重要です」 

昨年末に開かれた中央経済活動会議では、ハイレベルの対外開放を拡大するという面でも、重点的に推進すべき「タスクリスト」が示された。また特に貿易における新たな原動力の育成を加速させ、通信医療などのサービス業市場への参入を緩和し、データの国境を越えた流通などの問題を真剣に解決することが強調された。こうした開放の歩みは、国際的な高いレベルの通商ルールに対応する制度型の開放であり、中国政府が持続的に市場化法治化国際化の一流のビジネス環境を構築する決意と行動を表している。 

外資導入後の安定化も重要 

良好なビジネス環境は、外資の増加に役立つだけでなく、外資を引き留め、再投資を促進するための最良の奨励手段でもある。中国の「外資導入第1位の省」である江蘇省は22年度、外資系企業の利益の再投資規模が2321%増加した。蘇州1地域だけでも、外資系企業が再投資に使った利益分配金額は、18年の46億5700万元から22年には137億元に増加した。 

世界有数の物流システム総合メーカーの一つである日本の会社「ダイフク」の子会社大福自動搬送設備(蘇州)社は20年、蘇州市に新たな工場の建設を計画。22年に着工し、翌23年9月に完成、操業を開始した。主な業務は、中国の液晶半導体工場向けに搬送システムの自動マテハン(マテリアルハンドリング)機器などを提供することだ。 

同社の梶浦哲宏総経理は、蘇州への投資を拡大した理由として次の3点を挙げた。 

第一に、私たちは中国の半導体市場には大きな潜在力とチャンスがあると見ている。政府による科学技術の革新と半導体分野への投資は絶えず増加し、市場のハイテクとデジタル化に対する需要も絶えず高まっており、業界全体の発展を後押ししている。実際、私たちの工場は昨年9月に完成し操業を開始して以来、半導体搬送設備の生産計画はすでに25年まで作られている。 

第二に、蘇州の交通の利便性、整備されたインフラ、先進的な製造業の産業クラスターは、私たちに良好な生産条件を提供することができる。 

第三に、蘇州の税制面での優遇、人材の助成金により、私たちは非常に実質的なメリットを受けている。これにより、企業経営のコストを削減できるだけでなく、より多くのリソースを人材育成や製品の研究開発など、会社のさらなる成長につながるプロジェクトに投入することができる。 

また、固定資産(設備)投資の面では、蘇州市はスマート工場や5G(第5世代移動通信システム)工場の建設を奨励しており、生産設備への投資にも対応する補助金政策があり、企業の労働環境や生産環境を整備するのに大いに役立っている。 

さらに政府は、外資系企業向けのサービスチームを設置。専門のスタッフが政策説明と政策サービスを提供し、政府と企業の協力の継続的な深化を効果的に推進している。これは、私たち外資系企業にとって非常に便利なマネージメントシステムだ。 

市場が企業が成長する土壌であるならば、ビジネス環境は日の光と雨水のようなもので、静かに企業の発展を潤している。中国市場という豊かな土壌で、企業はたっぷりの日差しと雨に潤され、さらに大きな成長を遂げるだろう。 

 

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