デジタルで新たな見方
枝默=文
故宮博物院の「全景故宮」VR体験では、デバイスを装着すると、太和殿の雄大な景色を上空から体感することも、故宮の四隅にそびえる「9本の梁、18本の柱、72の(屋根の)稜線」を持つ角楼の建築過程を詳細に観察することもでき、さまざまな角度から紫禁城をより立体的に知ることができる。来場者から高い人気を誇るこの体験は、故宮博物院が現在力を注いでいる「デジタル故宮」の縮図である。
「デジタル化とスマート化の時代において、それがもたらすチャンスを見逃さず、デジタルインテリジェント技術を活用して文化遺産の保護、研究、そして活性化に役立てなければいけません」と故宮博物院院長の王旭東さんは述べた。「デジタル故宮」の全体的な目標は、先進的な情報技術(IT)を駆使して、リアルで完備されて可用性があるというデジタルリソースの長期保存の原則にのっとり、紫禁城の文化財をより良く保護・展示し、文化資源の全人類による共有を後押しすることにある。
文化財をデータで共有
故宮という古代建築群の面積と文化財所蔵数は世界で唯一無二である。故宮と文化財をより良く守るため、博物院は1990年代後半からデジタル故宮の構築に着手した。
99年から故宮博物院は約10年の歳月をかけて帳簿と実物の照合作業を95%以上終わらせ、文化財総台帳に記載されている100万件に上る情報および2万点以上の文化財のデジタル画像をシステムに入力した。これにより故宮の所蔵品のデジタル管理は第一歩を踏み出した。
2019年に故宮博物院はオンラインの「デジタルライブラリー」を立ち上げ、初回に5万点(セット)の文化財の高精細(HD)デジタル画像を厳選し、無料公開した。その狙いは文化財データリソースをさらにオープンにし、デジタル文化財の価値を引き出すことにある。その後も文化財のHDデジタル画像は増加し続け、23年に故宮博物院は新たに2万点(セット)の所蔵品のHDデジタル画像を公開し、「デジタルライブラリー」内の文化財の総数は10万点(セット)以上になった。

画像の増加のほか、「デジタルライブラリー」は検索技術においても飛躍的な向上を遂げ、色や文様、器の形などのキーワードから検索できるようになった。たとえキーワードが曖昧だったり、文化財の名称にそのキーワードが含まれていなくとも、スマートマッチングシステムによって見つけ出せる。これにより、検索の難易度を大幅に下げたばかりか、文化財を鑑賞し、学び、研究するというニーズを最大限満たせるようになった。
23年5月18日、「故宮・テンセント共同イノベーションラボ」が正式に竣工した。テンセントが提供する次世代インターネット技術は、故宮の無数の文化財のデジタル化とその活用をさらに進めている。現在、故宮博物院には、全所蔵品の半分を超える計100万点(セット)以上の文化財がデータ化されている。
故宮博物院の「故宮関係者の口述歴史のデジタル記録プロジェクト」や「無形文化財技能」など優先順位が高い記録撮影プロジェクトも段階的な成果を上げている。「デジタル多宝閣」「故宮名画記」などの文化財展示プラットフォームや「故宮博物院」ミニプログラム、「毎日故宮」アプリなど文化財デジタル化製品は更新を重ね、故宮の文化財デジタル化保護の成果を公開し、共有させている。
VRでより生き生きと
今年6月、「躍動する古今――馬文化デジタルアート展」が神武門北西の大高玄殿で行われた。ホールの中央の巨大な曲面スクリーンに映し出された馬の絵に子どもたちの目は釘付けになった。これら馬の絵は故宮博物院が所蔵する絵画をもとにしている。拍手の音が響くたびに、馬たちはまるで目覚めたかのように天をあおいでいななき、仲間を呼び始めた。そして画面が変わり、馬をテーマにした文化財の数々がスクリーンに現れる。
故宮博物院のVRイマーシブミュージアムの試みは00年にさかのぼる。当時、故宮博物院と凸版印刷株式会社が文化財保護と展示における3D可視化技術の応用を共同で研究した。3年後、故宮博物院は初のVR作品『紫禁城・天子の宮殿』を完成させた。現在、故宮博物院はデータの収集、処理、研究、応用を一体化したシステムをつくり終え、多種多様な形式でデジタル文化サービスを提供し、故宮に秘められた中国の優れた伝統文化を活用する上で重要な役割を果たしている。
今年5月までに故宮博物院は『紫禁城・天子の宮殿』『三大殿』『養心殿』『倦勤斎』『霊沼軒』『角楼』『如意画苑・韓熙載夜宴図』など11のVR作品を制作し、また国内外のデジタル技術分野の機構と積極的に協力し、「発見・養心殿――デジタル体験展」「清明上河図3・0 ハイテクインタラクティブアート展」などえりすぐりのデジタル展覧会を各地で開催し、リアルでインタラクティブな深い文化体験を提供している。
「発見・養心殿――デジタル体験展」では、VRによって養心殿内に入れ、「硃批奏摺」(皇帝の朱筆による奏章への指示や意見)、「当時の衣装の着用」「貴重品鑑賞」などを体験でき、養心殿の建築機能と清代の宮廷生活の知識を学べる。「清明上河図3・0 ハイテクインタラクティブアート展」では、船尾楼の精巧な構造を研究し、市井の風景を目にできるほか、宋代の大型船に「乗って」、汴河两岸のせわしなさに触れられる。デジタル技術は伝統的な故宮に新たな風を吹き込んでいる。
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