製造業支える賢いロボット
王金臣 楊小鋭=文
きびきび動くロボット犬や多機能な人型ロボットなど大衆受けするサービス型「ニューフェイス」と比べ、工場のラインで日夜溶接、運搬、組み立て作業をする産業用ロボットの存在感は薄い。しかしこれら目立たない産業用ロボットはすでに71の業界に広まり、生産方法を人知れず一新し、中国スマート製造の背骨を支え、世界のサプライチェーンに自主イノベーションの鮮明な刻印を刻んでいる。国家統計局によれば、昨年1~11月の中国の産業用ロボット生産数は前年同期比29・2%増の67万3800台に達し、過去最高を記録した。
想像以上の国産品
中国はすでに世界最大の産業用ロボット生産国であり、最大の市場でもある。2024年に中国の産業用ロボットメーカーの国内市場シェアは初めて半分を超える58%となった。かつて中国製産業用ロボットはハイエンド製造分野において「代替案」と見なされ、企業はその精度やサイクルタイム、信頼性に疑念を抱いていた。
中国ロボット産業の質の高い発展を推し進めるため、21年に工業・情報化部など15部門が合同で「『十四・五』ロボット産業発展計画」を発表し、25年までに中国を世界のロボット技術イノベーションの根拠地、ハイエンド製造の集積所、システム応用の新拠点にする目標を打ち出した。23年に工業・情報化部など17部門が発表した「『ロボット+』応用行動実施案」は、産業用ロボットを基盤としたスマート製造システムを発展し、製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)とインテリジェント変革を後押ししなければならないと打ち出した。

政策の後押しを受け、新松機器人(Siasun)、埃斯頓(ESTUN)、埃夫特(EFORT)といった中国企業がコア技術の開発を速めていった。遼寧省瀋陽市にある新松機器人自動化股份有限公司のパイロットラインでは、自動車の車体製造の重要工程パートに応用できるロボットが270㌔の高負荷下で、あらかじめ設定された溶接工程パラメータ(溶接電流、加圧時間、電極開口度など)に高サイクルのスポット溶接を施している。点付けが終わるたびにシステムが自動的に溶接品質データを記録し、インテリジェントガイドによって溶接点位置のリアルタイム修正が行われ、誤差±0・06㍉以下の繰り返し位置決め精度を保障する。
「要するにデバイスが毎回定位置に戻るときに目標から最大で0・06㍉しかずれず、髪の毛未満の誤差しか生じないということです」と同社自動車業務シニアディレクターの程虎豊氏は語る。高い精度の裏にはコントローラーやサーボモーター、減速機に適合した運動学計算アルゴリズムといった総合力の向上がある。
市場のフィードバックが中国製産業用ロボットの信頼性を裏付けている。広東松峰股份有限公司総経理の黄昆氏は「溶接や運搬などの重要な工程で、中国製デバイスが自動車業界の精度、サイクルタイム、信頼性といった厳しい条件をクリアできるのか当初不安ではありました。しかし使ってみると想像をはるかに超えるレベルでした」と率直に語る。同社が導入した可搬重量25㌔の中国製6軸溶接ロボットは、海外製に匹敵する±0・02㍉の繰り返し位置決め精度を実現したばかりか、ローカルサービスによってデバッグとメンテナンスの周期を大幅に短縮した。黄氏にとってうれしい誤算は、中国製産業用ロボットの制御システムが製造実行システムとの連携をサポートし、生産工程の可視化と製品品質のトレーサビリティーを実現したことだ。
コアパーツのブレークスルー達成
「心臓パーツ」と称される高精度RV減速機は産業用ロボットの伝動精度と寿命を決定付ける。長きにわたり中国はこの分野で輸入に大きく依存しており、とりわけ高精度のサイクロイド曲線歯車の設計・製造技術は海外に独占され、産業用ロボットの産業チェーンの発展に厳しい制約がかけられていた。
「『十四・五』ロボット産業発展計画」は高精度減速機を重点的攻略方向に据え、「新たな高性能精密歯車伝動装置の基礎理論を研究し、精密・超精密製造技術、組み立て工程における課題を突破し、新たな高性能精密減速機を研究・開発する」と強調している。23年に工業・情報化部など5部門はあらためて「製造業の信頼性向上実施意見」を発表し、産業用ロボット用精密減速機など重要専用基礎部品の信頼性を高めると強調している。
国家政策の導きと市場のニーズの継続的拡大という二重の働き掛けの下、北京工業大学機械・エネルギー工程学院教授で智同科技(ZhitoTech)チーフサイエンティストの張躍明氏ら中国の研究者は海外技術の制約を打ち破り、RV減速機の国産化を進める決心を下した。参考できる経験はなく、全てゼロからスタートした張氏のチームは理論構築段階だけで数え切れない失敗をし、7000万元投入してもなお試作機の精度が基準に達しないという重大な挫折を味わった。しかし張氏はめげず、チームは18年にブレークスルーを果たし、RV減速機の設計原理を全面的に掌握し、さらに度重なるテストとプロセスの改善を経て、智同科技の第1世代RV減速機の開発に成功した。
「現在は数学モデルを構築し、異なるモデルの減速機のパラメータを調整するだけで、さまざまなモデルの産業用ロボットに適合する減速機を生産できます。精度や作業効率、耐用年数などは国内の産業用ロボットのニーズを満たし、価格もさらに安くなっています。昨年の同社の出荷台数は前年同期比50%増加し、中国の産業用ロボット分野の主要企業をカバーしています」と張氏は語る。
高工ロボット研究所のデータによると、24年の中国の産業用ロボット減速機の総需要量は前年同期比14・85%増の136万6000台だった。そのうちRV減速機の消費量は前年同期比9・69%増の57万500台だった。28年までに中国の産業用ロボットRV減速機の消費量は84万6400台に増えると見込まれている。高まり続けるニーズは、中国製RVが海外製に代わって加速度的に普及し、大規模応用が実現されている縮図だ。この変化の背景には、ロボット市場規模の拡大だけでなく、中国製コアパーツのブレークスルーがもたらすコストの再設定と産業エコシステムの再構築がある。これまで産業用ロボットを使っていたのは大企業だけだったが、今では中小企業にまで普及し、中国のスマート製造全体のレベルを効率的に上げ、発展の恩恵を一般人にも広く届けている。
スマート製造の土台固める
機械工業は国民経済の大事な柱であり、インテリジェント設備の代表であるロボットは製造業の質の高い発展を推し進める要だ。「十四・五」期間中、中国のロボット産業は飛躍的な発展を遂げ、技術の著しい向上や応用シーンの持続的拡大ばかりか、「十五・五」期間にさらにハイレベルなスマート製造へ向かう着実な基礎を築き上げた。
国家製造強国建設戦略諮問委員会副主任の蘇波氏は次のように指摘する。「十五・五」期間はスマートロボットが急成長する重要な戦略的チャンスだ。世界の新技術革命がいっそう進み、次世代人工知能(AI)技術が急速なイテレーションを遂げ、スマート製造が世界の製造業の発展と変革をけん引する核心的な駆動力となる。
この発展のゴールデンタイムに対し、中国は質の高い発展に利する産業エコシステムの構築を加速している。「国民経済・社会発展第15次五カ年計画の策定に関する中共中央の建議」(以下、「十五・五に関する建議」)は次の二つを打ち出している。現代化産業体系を構築し、実体経済の土台を固め強大にする。経済発展の重点を実体経済に置き、先進的な製造業を骨格とする現代化産業体系の構築を堅持する。
「動ける」から「賢く動く」へ、「ついていく」から一部分野を「リードする」へ、「十五・五」期間で中国の製造業はイノベーションの足取りを止めず進み続ける。日夜稼働する産業用ロボットは目立たない存在かもしれないが、的確な位置決め、安定した溶接、静かな運搬で中国スマート製造の足元を支えている。
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