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産業移転の最前線 安徽長江流域を行く

 

井上俊彦=文・写真 王衆一=写真

世界遺産の黄山を除けば、日本人にはいささかなじみの薄い安徽省だが、実は今中国で最も注目されるエリアの1つになっている。ご存知の通り、中国東部沿海地区では急速な発展に伴い生産コストも上昇し、伝統的工業では優位性が失われつつある。さらに金融危機の影響もあり、産業構造の転換を迫られているのが現状だ。一方、中西部地区では基盤整備が進み、さらなる発展に向けた体勢が整いつつある。こうした中で、いち早く産業移転受け入れに乗り出したのが安徽省だ。2008年、胡錦濤総書記が安徽省を視察後に産業移転の推進を指示すると、同省政府は『安徽皖江都市ベルト産業移転モデル地区構想』を提出、10年1月に国務院が可決し、この構想は国家発展戦略として正式にスタートした。それから1年余り、このエリアの5都市を巡り巨大プロジェクトの今を取材した。

「安徽皖江都市ベルト産業移転モデル地区」         9市と六安市の金安区、舒城県を含むモデル地区は、面積7万6000平方㌔、人口3058万人、2008年度のGDPは5818億元で、それぞれ安徽省全体の54%、45%、66%となっている。

安徽省十市が連携恵まれた条件を生かす

『安徽皖江都市ベルト産業移転モデル地区構想』は、安徽省初の国家レベル発展戦略であり、中国初の産業移転受け入れを主題とした地域発展計画でもある。「皖」は安徽省の別称で、「皖江」とは省内部分の長江に対する地元の人の親しみを込めた呼び方だ。つまり、安徽省内の長江流域エリアに東部沿海地区からの産業移転受け入れモデル地区を建設するというのがこの計画だ。対象となるのは合肥、滁州、巣湖、馬鞍山、蕪湖、銅陵、安慶、池州、宣城の9市に六安市の金安区と舒城県を加えたエリア。面積76000平方㌔、人口3058万人の規模となる。 

では、なぜこのエリアなのだろうか。現地での取材から整理すると大きな理由は以下の通りとなる。

まずは交通。内陸部の武漢、沿海部の上海や国外とは長江の水運で結ばれており、今年6月に開通する北京─上海間の高速鉄道、建設中の北京と台北を結ぶ高速道路もこのエリアを通る。 

次に豊富な資源。銅や鉄など多くの鉱物を産出し、石炭産業を背景に中国の重要なエネルギー原材料基地、火力発電基地ともなっている。労働力も豊富で、省外への出稼ぎ労働者数は1200万人にも達している。 

そして、受け入れに必要な産業の基礎力も整っている。特に自動車、家電、建材、工作機械などの分野では周辺産業も育ち中国国内でも特色、競争力を持っている。 

では、計画は具体的にどのように進められているのだろうか。(次は巣湖について)

 

人民中国インターネット版 2011年5月

産業移転の最前線 安徽長江流域を行く 巣湖

産業移転の最前線 安徽長江流域を行く 蕪湖

産業移転の最前線 安徽長江流域を行く 銅陵

産業移転の最前線 安徽長江流域を行く 池州

産業移転の最前線 安徽長江流域を行く 合肥

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