介護産業に携わる若者たち

2024-05-17 12:09:00

銭海澎=文 

人ホームでの生活は孤独で抑圧的なのか? 高齢者はみんな広場ダンスや太極拳をするのが好きなのか? 若者は高齢者と一緒に暮らしたいと思っているのか? 中国の高齢化が日増しに進むにつれ、老後生活はますます社会の注目を集めている。 

中国国家衛生健康委員会の予測によると、中国は2035年頃には重度の高齢化段階に入り、60歳以上の高齢者人口が4億人を突破し、総人口の30%を超えるという。このような膨大な養老サービス需要に直面して、ますます多くの90後(1990年代生まれ)」「00後(2000年代生まれ)が介護業界に身を投じている。彼らは活発で新しい考え方を持ち、「異色老人ホーム」を設立し、老後生活は無気力になるという世間の固定観念を打ち破り、高齢者を連れてeスポーツをしたり、モデルウォーキングをしたり、ファッショナブルな写真を撮ったりしている。専門性と情熱によって、「朝日(若者)」が「夕日(高齢者)」を見守る感動的なストーリーをつむいでいる。 

生命の影響力を体感 

1991年生まれの許女龍さんは、湖南中医薬高等専科学校薬学科の卒業生だ。介護業界に入ったきっかけは、両親が故郷の湖南省婁底市に頤養堂老人ケアセンターを設立したことにある。当時、センターには専門的な人材が不足していた。そこで、2017年の初め、許さんは他の2人の女性と共に、省都長沙市のある養護施設で研修を受けた。 

半月の短期研修を経て、介護業界に対する許さんの認識は大きく変わった。最初は異臭を嫌い、性別を気に掛け、命が消えていくことを目の当たりにして恐怖を感じていたが、やがて心から適応し、同僚との交代まで待ちきれなくなった。それ以来、許さんは完全に「介護者」になった。この経験を思い出して、許さんは「これらの変化は、私に対する知的障害のある高齢者の感情的な依存、および身体障害のある教師による私の人生計画に対する丁寧な指導に由来していると思います。最大の収獲は各種スキルを体得したことではなく、真に『高齢者』という呼称の意味を認識したことです。一人一人の高齢者は皆一冊の内容豊富な分厚い本のようで、多くの素晴らしい人生の物語を持ち、私にとって魅力に満ちています」と話した。 

頤養堂はその年の5月に開業して正式に高齢者を受け入れた。最初のうち、介護の内容は生活の世話にとどまっていた。しかし「若者介護者」最大の優位性は、活力があり、勇気があり、新しいものや他にないものを求めることだ。許さんは自分の遊び心を高齢者と結び付け、「県城(県政府所在地)はとても小さいから、満足するまで見に行こう」と銘打った一連のイベントを企画した。他の2人の女性介護者と車椅子を押し、県城や郊外への半日旅行に同行。高齢者は手をつなぎ、施設のロゴ入りの赤い帽子をかぶり、施設名が入った赤いベストを着た。このイベントは大いに注目を集めた。 

介護業界に入る前はいやだったのに、いざ業界に入ってみるとなかなか辞められない、という人は少なくない。高齢者に付き添ってきたここ数年、許さんは多くの高齢者の結婚観、家族観、親子観を目の当たりにし、生命が生命に影響を与える力を痛感した。同時にそれは生きがいと起業の価値について彼女に考えさせ、最終的には介護業界でしっかりと歩んでいく原動力となった。 

年齢を感じさせない生き方 

四川省雅安市には、90後、00後が運営する「異色老人ホーム」がある。通常の介護のほかに、ここの若者たちは毎日、高齢者たちを連れてファッショナブルな写真を撮ったり、歌ったり、ダンスをしたり、野菜を栽培したりしている。 

設立者の佳林さんと周航さんは長年の友人で、同じ「90後」世代だ。そもそも二人の専攻は「介護」とは何の関係もない。2017年、祖父のために満足のいく介護施設を探すため、佳林さんは周航さんと一緒に成都市および周辺の複数の介護施設を見学した。「私たちが最初に感じたのは、年をとるのが怖いということでした。二、三人の高齢者が一つの部屋に同居していて、暗くて、とても窮屈で、私の家族をこんな環境に送ってはいけないと思いました」。そこで2人は「一風変わった」老人ホームを立ち上げることにした。 

皆で太極拳をしたり、高齢者向けの体操をしたりする一般的な老人ホームとは異なり、ここでの活動は00後の2人が担当している。彼女たちに導かれて、高齢者たちは次々と「流行を追う」ようになった。キャンプ、屋外カラオケ、変装ショートビデオの撮影……。「おばあさんたちは、私たちが撮った写真や動画をチェックし、きれいに撮られているかどうか、センターの位置にいるかどうかを確認します」 

「私たち若い世代が好むイベントが多いですが、高齢者たちも喜んで参加してくれます。誰もが老いて孤立したくないものですし、やっぱり自分を表現したい、外の世界を感じ、そこに参加したいと思っています」 

通常の老人ホームの密着ケアとは異なり、ここでは2ほど離れたところで、介護士が自立可能な各高齢者の世話をしている。その理由について、佳林さんは次のように説明する。「私たちは『年齢を感じさせない老後』という概念を打ち出し、年齢の限界を曖昧にしたいと考えています。高齢者は世話をしなければならないという暗黙の了解があり、多くの老人ホームではリスクを避けるためにどこでも彼らを管理しています。私たちは彼らが高齢者であることをわざわざ強調し、過度に干渉しようとは思っていません 

老人ホームを「幼稚園」に 

派手でクールな照明のeスポーツルームで、白髪交じりのプレイヤーたちが超大型スクリーンを前に激しく対戦していた。ほとんどのプレイヤーが座ったことのない最先端の「サソリ型」のeスポーツチェアがあるだけでなく、若い「遊び相手」のコーチまでいて、高齢者が操作に困ったときは「1対1」で指導してくれる。このような快適なeスポーツ施設は、河南省許昌市の樊金林さん(27)という青年が運営する老人ホームにある。 

樊さんによると、eスポーツルーム設立のきっかけは、この施設にいたあるおばあさんだった。ある日、おばあさんがパソコンゲームを習いたいと言い出した。孫がゲームが大好きで、自分もできるようになれば、休みの日に一緒に遊べるようになるからだ。「そのとき、全ての高齢者が広場ダンスや太極拳を楽しんでいるわけではないことに気付きました。自分を『オールドキッズ』だと思い、若い人のものに触れようとする高齢者もいるのです」 

樊さんは、アルツハイマー病(老人性認知症)がテーマの動画を見たことがある。「当事者目線で体験して初めて、認知症になるということは、こんなにもつらくて頼りない気持ちになることなんだと実感しましたと振り返った樊さん。「たとえ自分の最も親しい家族であっても、何度も何度も忘れてしまいます。見知らぬ場所(実は自宅)を出ようとするのですが、出口がなかなか見つからないのです」 

認知症の怖さに気付いたからこそ、eスポーツのような新しいものを通じて、高齢者の元気を保とうとしたのかもしれない。近年の研究では、毎日30分のパソコンゲームをすることで、認知症のリスクを著しく低下させられることが証明されている。同時に、パソコンゲームのような新しいものは、高齢者と社会を結び付け、彼らが選択的に忘れられないようにもしてくれる。 

eスポーツルーム以外にも、樊さんは老人ホームに仮想現実(VR)ルームや居酒屋などを開設しており、「オールドキッズ」たちはここで若者の娯楽を学び、さらにはネット用語を話すことも楽しんでいる。あるネットユーザーは、樊さんが老人ホームを「幼稚園」にした、と冗談めかして言った。 

付き添い介護──「異世代同居」  

ここ数年、日本、米国、英国などで長年流行していた「異世代同居」という相互扶助型養老モデルが中国の多くの老人ホームでも試行されている。具体的には、高齢者の自宅や老人ホームの部屋を比較的低価格で若者に貸し、その分、若者は高齢者に対して一定期間のボランティア活動を行う必要があるというものだ。 

四川省成都市営門口街道(町内)の銀桂社区(コミュニティー)では、数年前、軽い認知症を患うおばあさんが「90後」の出稼ぎの王暁蓉さんに、1日1食の食事を作ってもらうことを条件に家を安く貸し出した。条件に同意した王さんは、おばあさんと同じ家に住み、2人はそれぞれの生活エリアを持ち、プライベートな空間は独立しているが、リビング、トイレ、洗濯機は共用だ。2人は普段あまり話さないが、お互いの存在に温かみを感じている。毎日仕事から帰ってドアを開けると部屋の明かりがついていて、王さんは家に帰ってきたような気分になる。一方、おばあさんも王さんが一緒にいてくれるおかげで、以前よりずっと元気になり、近所への買い物や散歩にも付き添いがいらなくなった。 

28歳の標標さんは2年前に広東省仏山市の和泰センターに引っ越した。ここは中国で最初に「異世代同居」モデルを実施した老人ホームの一つだ。入居当初の家賃は1カ月1080元で、高齢者の費用のほぼ5分の1だった。月に27時間半のボランティア活動が必要で、審査も年に1回行われるが、いつ、どのようにボランティア活動をするかに対する厳格な規定や縛りはない。 

標標さんによると、入居者の選別は比較的厳しく、一次選考を通過すると面接が行われ、主に高齢者サービスのスキルがあるかどうか確認されるという。私の本業はプログラマーなので、面接官はパソコンの修理や無線LAN、テレビの設置ができると考えました。普段はダンスをするので、高齢者に披露することができます。さらに潮汕の方言もできるので、ホーム内で標準語が話せない潮汕の高齢者の通訳を手伝うことができます」 

同居している若者は、さまざまなスキルを持っている。運動が得意で、高齢者と一緒に体操をする人、高齢者が夜中に調子が悪くなると他の部屋にもスリッパを履いたまま手伝いに来てくれる元医師、農業の経験があり、高齢者と小さな庭で野菜を育てられる人など……。 

「ここに長くいると、おしゃれな高齢者が多いことに気付きました。日本語と英語が話せ、ネットで海外のニュースを見る人もいれば、株式投資が好きな人もいるし、旅行やバンジージャンプが好きな人もいます。高齢者もかつては若者だったわけで、古臭い考えは捨てなければいけません」と標標さん。 

「若い人たちのイベントに、高齢者を連れていくようにしています。ストロベリーミュージックフェスティバル(中国最大の野外音楽フェス)でバイオリンを弾いたり、ワールドカップを見て、どのチームが勝つか当てたり、さらには1階に小さなカフェを作って、高齢者にも手伝ってもらっています」 

標標さんは、これまでは老いが怖いと思っていたが、ここでは「ポジティブな高齢化」が提唱されており、高齢者の姿を見ていると、老いがそれほど怖くなくなり、将来に迷うこともなくなったという。生命の輪廻についても、少しずつ受け入れつつあるそうだ。 

高齢者大学の「90後」教師 

水曜日の午前10時、成都市にある高齢者大学のダンス教室から優美なメロディーが流れてきた。受講者たちはカラフルなチャイナドレスを着て、ハイヒールを履いて、堂々と優雅にモデルウォーキングの練習をしていた。教室の端から正面の鏡張りの壁に向かって歩く。鏡には一人一人の自信に満ちた顔が映っている。 

教壇の上で拍子を取りながら、お手本の動作をしているのは、このファッションショー講座の先生――周宇さんだ。今年30歳の周さんは背が高くてハンサムで、受講生たちからとても人気がある。受講生たちの動きを注意深く観察修正し、何度も大きな声で拍子を取っていた。担任の劉莉梅先生は、「周先生は授業中とても真面目で、授業が終わると私たちをコンテストに連れて行ってくれるのですが、選曲を手伝ったり、振り付けをしたり、リハーサルを行ったり、十分に職務を全うしています」と評価している。 

自分より年上の受講生との間にジェネレーションギャップがあるのではないかと問われても、周さんの答えはノーだ。彼は、受講生の方々の前向きでポジティブな生活態度が、これまでの高齢者のイメージを打ち破ったという。教室の内外で、周さんは受講生たちのことを「お姉さん」と呼ぶ。「皆さんの年齢層を考えると、『おばあさん』と呼んだり『広場ダンス』を連想したりしますが、エプロンを外し、ハイヒールを履くと、彼女たちは生活の中でおばあちゃんであるだけでなく、生活を愛し、挑戦する勇気があり、元気なお姉さんたちでもあります。私もより前向きに、楽観的に生活するようになりました 

成都市は昨年9月、「2022年高齢者人口情報と高齢者事業発展状況報告」を発表した。それによると22年末時点で、成都市の60歳以上の高齢者人口は戸籍総人口の2063%を占めている。定年退職した高齢者が老年大学に進学し、再び教室に戻ることを選択するケースが増えている。90後さらには00後が高齢者教育に参加するにつれ、高齢者が学び、若者が教えることが新たなトレンドとなっている。 

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若者の参加があれば、高齢者の介護はより多くの青春の息吹と生気と活力を持つようになる。同時に、多くの若者も起業のチャンス、事業のプラットフォーム、そして仕事と生活の意義を見いだしており、このようなシルバー若者の相互扶助は、実は相乗効果をもたらしている。 

 

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