トランプショックの影響やいかに? 中国の対米貿易と国産化

2025-07-28 10:26:00

年4月に新年度が始まる日本と異なり、中国企業は7月から年度の下半期に入る。4~6月の第2四半期、企業の経営状況は大方の予想よりも良好だったが、これは下半期も引き続き安定が保たれることを意味しない。特に、米国の関税政策がもたらす極度の不確実性は、高関税の一部適用の90日間にわたる停止措置が終わったのち、予想をはるかに上回るものとなる。G7サミットなどの国際会議やこれまで米国と経済関係を密にしてきた西側諸国の首脳間の電話会談、直接会談が行われるだろうが、いずれも経済成長の不確実性を抑える効果は望めそうにない。 

一般的に、貿易協定は国家間の貿易や投資を促進するものと認識されており、安定的でオープンな協定は企業に長期的な信頼をもたらす。だが、米国のトランプ大統領は数カ月ごとに政策を変えたり、英国や中国とコンセンサスに達したかと思えば、数日後にはSNS上で約束をほごにするかのような発言をしたりする。あらゆる国にとって米国と安定的でオープンな貿易関係を打ち立てるのは至難の業だ。複数の国が米国にたびたび高官を派遣して関税問題の交渉を行っているが、米国との貿易関係はおろか、ごく簡単な案件ですら合意に至っていない。 

本稿では、対米貿易や国際関係の不確実性が中国国内に与える影響について考察を加え、この不確実性に満ちた時代の中で、いくつかの確実な方向性を模索してみたい。具体的には、中米貿易から見る今後のすう勢、米国による対中ハイテク協力規制が中国の国産化にもたらす影響の分析などを通じ、中国経済をより深く理解していく。 

強靭(きょうじん)さを見せる中国の輸出入 

今回のコラムを書いている6月上旬時点で参考となる最新データとしては、中国税関総署が5月9日に発表した関連資料がある。それによると、4月の中国の輸出は米換算で前年同期比81%増となり、増加率は前月比で43ポイント落ち込んだ。輸入は前年同期比で02%減少し、下げ幅は3月に比べて41ポイント縮まった。また、4月の貿易黒字額は961億8000万に達し、前月比で64億6000万減となった。 

米国が4月2日から実施した高関税政策は中国の輸出入に一定程度の影響を及ぼしているが、4月中はその影響は限定的だった。引き続き高まる製造業の競争力や多元化する市場構造をよりどころとして、中国の輸出は粘り強さを顕著に示している。ここで注目すべきは、以下の二つのポイントだ。 

第一に、中国の輸出構造は持続的に最適化が進み、対外貿易が大きな支柱となっている。中国の輸出は機械電子ハイテク関連製品が主であり、労働集約型の製品の輸出はそれほど多くない。4月の機械電子製品の輸出額は1905億8000万と、安定的な増加傾向を示した。実際、今日の国際社会において、機械電子製品やハイテク製品の輸出規模で中国に匹敵する国を探し出すのは容易なことではない。 

第二に、4月に発動された米国の「相互関税」は、中米の二国間貿易に比較的大きな影響を与えた。同月の中国の対米輸出は前年同期比でマイナス209%と大幅に減少し、増加率は3月に比べて299ポイント落ち込んだ。だが、米国を除く他の主な経済体への輸出はおしなべて安定的で、とりわけ東南アジア諸国連合(ASEAN)、中央アジア、西アジア、ラテンアメリカ、アフリカ諸国への輸出の伸びが顕著であり、いずれも2桁増を達成した。また、EUや日本への輸出も安定的な伸びをキープし、中国の対外貿易の強靭さを示す結果となった。 

さらに進む中国の国産化 

一般的に、海外から技術を導入したのち、それを消化吸収するプロセスを経て、国産化が実現する。突然打ち出された中国に対する技術封鎖や半導体チップの禁輸、ハイテク製品に関するデカップリング政策によって、中国はハイテク分野の国産化を推し進め、これまでとは異なる技術進歩の道を歩んでいくことになる。 

米国が課した中国への高関税に対し、中国は対抗措置を取り、米国製品の関税率を上げた。両国による協議を経て関税率は引き下げられ、高関税の執行は一時的に停止されたが、米国に起因する極度の不確実性に対応すべく、中国企業は国内製品の調達に努めている。高関税政策と貿易戦争は単に、中国企業の国産化プロセスを加速させる結果となったわけだ。 

米国の政治家の個人的な感情で関税率が極端に変動する状況下では、安定した経営を目指す企業、とりわけ中国国内のメーカーは米国以外のサプライヤーを探すより他にない。そこで、国内のメーカーががぜん注目するのは巨大な自国市場であり、おのずとそこへ資本を投資し、研究開発や生産を行うことになる。半導体、スマートロボット、化学工業、医療機器業界で、中国企業はここ2年の間に大きな進歩を遂げ、今年下半期にはその成長ペースがいっそう速まる見込みだ。国内市場の巨大な需要、不確実性に満ちた米国の高関税政策が明確に存在し、日本も経済安全保障政策によって、半導体などの分野で自国企業と中国企業の交流を厳しく制限している。このような環境下で、中国企業はためらうことなく投資と研究開発を行い、関連産業の中国での急速な国産化を成し遂げ、製品の質と量を高める必要がある。 

米国がデカップリングや高関税政策を実施したところで、バッテリーや電気自動車(EV)、造船、高速鉄道など、中国がすでに技術的優位性を確保している分野において、3年や5年で中国と競争可能なレベルに達することは不可能だ。また、中国では半導体分野などで持続的に国産化が進んでおり、それに伴ってハイテク分野の製品や産業も急成長のための条件を備えている。 

中米中日交渉の見通し 

筆者は米国が今後数年の間に対中デカップリング政策を放棄することはなく、トランプ大統領の高関税政策も継続されると考えている。しかし、中米の貿易関係については、トランプ大統領など米政権高官の個人的な好みでたびたび混乱が生じるのではなく、きっと何かしらの協議メカニズムが打ち立てられるはずだ。中米両国の交流においては専門性と理性が発揮されるべきだ。際限のない圧迫や朝令暮改の通商モデルでは、制限はますます大きくなっており、米国がそれによって利益を得ることはなく、長期的に続けることも不可能だ。 

過去数カ月、日本は低姿勢を保ちつつ、米国と率直かつ誠実にたびたび交渉を行ったが、これまでの数十年間の日米交渉と同様、日本が望み通りの成果を得るのは非常に困難だ。日本が対米貿易における既存の利益を維持することができなかった場合、低姿勢で率直、誠実な日本の対米交渉に対し、国内で多かれ少なかれ疑問の声が上がるだろう。そうなれば、日本は日米関係を含む国際関係を見直す必要に迫られるかもしれない。 

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