みんなで守る緑の山河
老若男女が参加する義務植樹
植野友和 まず、私が北京に来て驚いたことの一つは、想像していたよりもずっと緑豊かな都市だという点です。日本では今でも、中国は環境破壊が深刻だというイメージを持っている人がいますが、実際は違いますよね。
于文 そうですね。現在の北京は本当に環境が良くなり、緑もたいへん増えました。北京だけでなく、中国全土で環境保護や緑化が続けられてきた結果、大きな変化が起きています。ただ、過去には深刻だったのも事実です。1990年代、私が子どもの頃は黄砂が春の風物詩で、ひとたび黄砂が来ると視界が一面真っ黄色になるほどでした。
植野 昔はそんなにひどかったんですか?
于 はい。黄砂の日に外から帰って髪を洗うと、水が黄色くなるんですよ。でも、ここ十数年で、そういった現象はまず見られなくなりました。
植野 もちろん自然に被害が収まったのではなく、その背景にはさまざまな取り組みがあったわけですよね。
于 たくさんの要因がありますが、中でも特徴的なのは、中国は環境保護をとても重視していて、全ての人々が緑化に携わる仕組みが整えられていることです。例えば、中国では植樹が国民の義務と定められているんですよ。

植野 植樹が義務なんですか?
于 はい。緑化の重要性は90年代からではなく、より以前から強く認識されていました。49年の新中国成立当初、中国の森林面積は国土の8・6%しかなかったため、洪水などの災害が頻発していました。そのような中、82年に国務院が公布した「全民義務植樹運動の展開に関する実施弁法」により、植樹の義務化が定められました。この提案は鄧小平先生によるもので、81年に四川省で起きた大洪水などをきっかけに、国民一人一人が毎年木を植えるべきだという提唱が行われました。
植野 具体的にはどのような内容なのですか?
于 男性は11歳から60歳、女性は11歳から55歳までの労働能力喪失者を除く全ての人々が毎年3本から5本の木を植えるよう義務付けられています。
植野 私たちアジア太平洋広報センターも先日、北京市内で植樹に参加しましたが、中国では全国各地の学校や会社が同じように毎年植樹活動をしているんですか?
于 そうなんです。しかも、参加の形はさまざまで、実際に植樹をする以外に、寄付で義務を果たすことも可能です。例えば北京市では1本当たり15元から20元程度と決まっていて、年間60~100元を寄付する形でも参加できます。
植野 労力で貢献するにしろ寄付をするにしろ、みんなが緑化に関わる仕組みになっているのは画期的だと思います。
経済発展と環境保護は矛盾しない
植野 これは中国や日本に限ったことではありませんが、かつては経済発展か環境かというふうに、二者択一の問題として捉える風潮がありましたよね。
于 はい。しかし、中国では人々の考え方が変わっています。その象徴と言えるのが、「緑水青山就是金山銀山」(緑の山河は金銀ほどの価値がある)という理念です。
植野 中国のエコ文明建設に関する文章を訳していると、必ずと言っていいほど登場するフレーズですね。
于 この理念を提唱したのは習近平総書記ですが、実は有名なエピソードがあるんです。習総書記は2005年当時、浙江省党委員会書記を務めていた際、湖州市安吉県の余村を視察しました。ここはかつて鉱山開発によって豊かな村となったのですが、その代償として環境悪化や健康被害が生じたため、村ではセメント工場や化学工場などを閉鎖することにしました。当時の村にとっては大きな経済的損失を伴う判断でしたが、習総書記はむしろ、「緑水青山就是金山銀山」と言って評価したんですね。その後、余村は生態回復と観光・グリーン産業の発展により、美しい環境を取り戻し、エコツーリズムの人気もあって観光客が増えました。それに伴って民宿やサービス業も発展し、逆に人々の収入が増えたのです。
植野 経済発展と環境保護は対立的関係ではなく、調和・両立できるという考え方ですね。
于 はい。この理念は現在中国全土だけでなく、世界にも広がっています。例えば、甘粛省張掖市では、砂漠の拡大を防ぐために長年にわたり緑化が行われてきました。23年、韓国のNPO「未来林」の権赫大理事が張掖市の臨沢県を訪れ、砂漠の緑化技術を視察するということで、私も同行取材したんです。臨沢県は砂漠の南縁に位置し、住民は深刻な砂害に苦しんできました。現地では、麦わらを格子状に配置して砂の移動を防ぐ「草方格」や、苗木の根に直接水を送る灌水技術の導入により、緑化に成功しました。その結果、ブドウ栽培やワイン産業が発展し、地域経済の向上にもつながったんです。
環境面での中日協力の積み重ね
植野 砂漠の緑化というと、改革開放後に日本の多くの学者や専門家、ボランティアの皆さんが中国の緑化に取り組んだエピソードを聞いたことがあります。
于 実はそのような砂漠緑化に関する中日の協力は1980年代から長く行われていて、『人民中国』でもこれまでに何度も報道したことがあります。遠山正瑛さんをはじめとする日本の方々は、中国の内蒙古自治区など多くの地域で、現地の人々と一緒に緑化や植樹を行ってきました。これは本当に中日の友好と協力の素晴らしいエピソードだと思います。
植野 日本はこれまでに中国をはじめとして世界各地の緑化に協力してきましたが、現在では中国がさまざまな国際援助を行い、緑化における中国モデルを世界に発信していますね。
于 日本はかつて環境問題を経験し、それを克服してきました。中国はその経験を学ぶとともに、政府と民間が一丸となって環境保護に取り組み、一人一人が意識の変革を進めていった結果、現在では自国の成功事例を「中国のプラン」として紹介し、世界の緑化に貢献できる段階に来ています。
植野 今日のお話を通じて、環境保護のようなグローバルな課題については、やはり両国が協力して取り組むことが重要だと改めて理解できたように思います。
于 人と自然が調和・共生する素晴らしい生活への憧れは、中国や日本だけでなく、今や世界中の人々が抱くものです。その実現のために中国の成果、そして中日の協力の事例が参考となれば、これほどうれしいことはありません。これからもお互いの経験と知恵を合わせて、より良い未来、より美しい地球に貢献することに期待したいです。
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