米(2)

2023-06-25 11:42:00

姚任祥=文

広い国土を持つ中国は米の種類が豊富で、調理法もさまざまだ。今回から、米を使った代表的な料理を身近な調理法別に紹介していく。 

 

あえる、炒める】 

海外へ留学に行く多くの学生がまず学ぶのはご飯を炊くことで、次はチャーハン(炒飯)の作り方だった。チャーハンを作れない人は、「ラード混ぜご飯」で間に合わせていた。中華食材が少ない異国では、「ピーマンと牛肉の細切りチャーハン」か「卵チャーハン」が一皿あるだけで郷愁が癒やされたものだった。 

ご飯にラードを混ぜる食べ方は、卵チャーハンよりもっと簡単だ。中国人家庭に育った子どもなら誰でも、放課後に家に帰っておやつ代わりに「ラード混ぜ飯」を食べた記憶があるだろう。 

シンプルな「ラード混ぜ飯」にも少しこだわりの作り方がある。①ご飯はやや硬めでパラパラに炊き上げる②しょうゆはできれば少し甘めで塩辛くないものが良い③塩漬けの干し肉を扱う肉店のラードであえると、より香ばしくなる。さらに鶏油を少量加えることもある――この三つの条件を満たすのは簡単なようで意外と難しい。しかし、理屈はともかく、現実的にお腹が空いているときはしっかり食べたという満足感が一番大切だ。 

チャーハンについては、良し悪しの基準はなく、習慣の問題だと私は思う。インディカ米(長粒種)を使って硬めでパラパラに炒めるのが好きな人もいれば、蓬莱米のように軟らかめのご飯が好みの人もいる。中にはもち米でチャーハンを作る人もいる。また、冷や飯を使う人もいれば、一晩置いたご飯がよいという人、冷たい水で洗ってから作るという人もいる。さらに人によって先に卵をいったり、ご飯を炒めたりと、順番も違ってくる。「金裹銀」(ご飯一粒一粒が卵の膜で覆われている状態)が好きな人もいれば、黄色い卵の塊があるのを好む人もいる……要するに、山のような博士論文を書いてそれを理屈化しても、結局わが家で食べる卵チャーハンの味にはかなわない、ということだ。 

私も、わが家のお手伝いさんが作る卵チャーハンが一番の好みだ。彼女はいつも、まず卵を冷蔵庫から出したら室温に戻し、かすかに泡立つ程度に溶きほぐす。卵の生臭さを取るためにネギを油で炒め、ネギは取り除く。残ったネギ油を3分の2ほど別の碗に移した後、フライパンに溶いた卵を入れる。卵の縁がプクプクと泡立ってきたら、フライ返しで縁を少し持ち上げてそのまま一回りさせ、碗に取っておいたネギ油を少しずつ上から掛ける。卵が固まり切らず、油も残っているうちに、ご飯を入れて卵ごと下からひっくり返す。そして、ご飯に鍋底の油と上にある卵の油を吸わせてから、フライ返しで卵を手でちぎったように不ぞろいに切る。最後にご飯をかき混ぜて炒め、火を止めて少しおいたら出来上がり。 

お手伝いさんの作る玉子チャーハンは、黄色と白のバランスがよく、二つの食材を鍋で炒めるというシンプルさの中に豪快さがある。卵の混ぜ方も大胆で、見事とさえ言え、外ではなかなか味わえない一品だ。 

チャーハンで料理の腕が分かるとよく言われる。有名な揚州チャーハン(五目チャーハン)の定番の作り方は、500㌘のご飯に卵は4個、使う具材は14種類に上る。だが、そんなに材料が多いと逆に料理の腕を発揮できないと私は思う。また、エビとチャーシューのチャーハンやエビと貝柱のチャーハン、塩漬け干し魚と鶏肉のチャーハンなどは、強火で手早く炒めなければおいしくないので、一般の家庭でおいしく作るのはなかなか難しい。 

実際、家の冷蔵庫にある材料を適当に選んで炒め、好みの調味料を少し加えれば、手軽においしい家庭チャーハンができる。 

台湾には、「三朝洗児油飯香」という生命の誕生を喜ぶ習わしがある。これは、子どもが生まれて3日目に「胡麻油鶏酒」(鶏肉とショウガ、ゴマ油を米酒で煮たスープ)と「油飯」(台湾風おこわ)を先祖に供え、友人や親族に贈る内祝いの儀式だ。油飯は短粒と長粒のもち米を1対4の割合で混ぜて炊き、これにラードやスープ、細切り肉、シイタケ、干しエビ、台湾食材の定番・揚げた赤玉ネギなどを混ぜる。濃厚でおいしい油飯を食べた友人や親族は皆心から喜び、生まれたばかりの赤ちゃんの健やかな成長を静かに祈る。 


さまざまな中国のチャーハン


【炊く、蒸す】 

ほとんどの台湾の人は大同社製の電気釜を偉大な発明だと思っているだろう。かまどやガスコンロ、電気コンロのそばで、ご飯が炊き上がるのをじっと待つ時間を省いてくれたからだ。 

台湾の留学生の多くは料理ができないので、誰もが大同電気釜を持って出国したものだ。留学先では、説明書の通りに米をといで水を入れ、スイッチを押してホカホカご飯が出来上がるのを待つだけだった。料理ができないたくさんの新妻たちも、大同電気釜を買って安心して嫁いでいったものだ。 

後に日本人が電子炊飯器を発明したが、台湾では、簡単で実用的、丈夫な大同電気釜に頼る人が多い。電気釜なら蒸すことも煮込むこともできるし、内釜を取り出して釜底を拭けば、オーブンとしても使える。私が留学生だった頃、大同電気釜でご飯を炊くとき、中に台湾ソーセージを入れて炊けば、手軽に「臘味」(中華風ソーセージ)ご飯ができ、チンゲン菜のみじん切りを入れれば、野菜炊き込みご飯ができた。おいしく簡単で、ホームシックも癒やせた。 

「中華風ソーセージご飯」の材料は、シンプルなものからこだわりの品までさまざまだ。以前、私は香港の有名レストラン「鏞記」や「蛇王芬」の中華風腸詰(豚肉の赤身に脂身を加えたもの)と、潤腸(アヒルのレバーに豚の脂身を加えたもの)がお気に入りで、ご飯が半分ほど炊けたときに電気釜に入れて作っていた。食卓に出す直前、少し温めた薄口しょうゆをかけると、腸詰の味と油の香ばしさが熱々のご飯にしみ込む。力を入れて腸詰の皮をかみ、中の赤身と脂身とご飯粒を味わうと濃厚な香りが鼻を突き、この上ない満足感を与えてくれる。私の家の冷蔵庫には常に上質の腸詰が置いてあり、たまに自分にご褒美をあげたいときは、これを電気釜に入れている。 

 

【煮込む、あんかけ】 

鹵肉(ルーロー)飯(煮込み豚肉そぼろかけご飯)と肉(コンロー)飯(豚の角煮ご飯)は、台湾で最もポピュラーな食べ物だろう。台北随一の伝統的な生鮮品市場――士東市場にある豚肉店の女性店主は、ルーロー飯の肉の割合は、肩肉とバラ肉が4対6か、肩肉とモモ肉4対7が最も良いと教えてくれた。 

肉を細かく切ってから、赤玉ネギをラードで炒めて香りを出した揚げネギとしょうゆ、氷砂糖、八角、シナモンなどを合わせて煮込む。ご飯は必ず蓬莱米を使う。ご飯にこのルーロー(煮込み肉)を汁ごとかけて、キュウリや漬物、煮込み卵を添えるのが一般的な食べ方だ。 

台湾で生まれ育った私たちにとって、「鹵肉飯」の3文字には、おふくろの味のような深い思い入れがある。コンロー飯の食材・作り方はルーロー飯とほとんど同じだが、コンロー飯はバラ肉を使っているので、丸ごと煮込んでから、食べるときに切り分ける。 

南アジア風の「海南チキンライス(鶏飯)」も人気のご飯ものとなりつつあり、今では海南省だけでなく、全国各地で食べられるようになっている。海南チキンライスを注文するとき、私はネギとショウガの薬味を多めに付けてもらうようお願いする。こうすると、甘くしっとりとした鶏肉にスパイシーな刺激がプラスされる。 

煮込みあんかけは、主婦の急場しのぎの強力な助っ人だ。ルーローやコンロー、牛肉しょうゆ煮込みなどの煮込み肉の部分は、前もって作り置きし、小分けして冷凍庫に保存しておく。ゆとりのある週末の午前中にでも大鍋で作っておけば、安心して次の週を迎えられる。子どもがお腹を空かせたら、いつでも手早くおいしいあんかけご飯で胃袋を満足させられる。 

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