中華式朝食(上)

2023-11-30 18:33:00

姚任祥=文

豆乳や(お焼き)、(揚げパン)――こうした中国人におなじみの朝食は生活文化の一部となっている。さらに、卵を挟んだり混ぜたりする焼餅や(クレープ)、米漿(ライスミルク)、豆乳、甘辛両方ある飯団(おにぎり)、香ばしく焼き上げた酥餅(サクサクのパイ)……中国人が小さい頃から食べてきたこうした朝食は、信頼する友人のように、いつも決まって路地で待っていてくれ、何年たっても変わらない。 

台湾に永和豆漿(乳)という1960年代からの有名な店がある。台北市と永和県の間の永和中正橋のそばにあり、地の利がよく、早朝の朝食から夜中の夜食まで提供している。私たち家族も時々、台北市から車を20分ほど走らせ、わざわざ夜食を食べに行くことがある。 

店先の狭い路地は来店客の車でいっぱいで、店内もいつも満席だ。大人気店のためチェーン店化され、台北市内にもたくさんの永和豆漿ができ、今では台湾中に店を構えている。90年代半ばからは海を越えて上海にも出店し、大陸部にも永和豆漿のブームを巻き起こした。 

商売は繁盛しても、その注文方法は今も至って簡単だ。店先で店員に食べたいものを注文すれば、大声で厨房に伝えられ、何分もしないうちにアツアツの焼餅や油条、豆乳がテーブルに並べられる。紙もペンも一切使わないが、卵を追加するかしないか、焼餅や油条を半分に切るかどうか、豆乳は甘口か塩味か、温かくするかどうか……一つの間違いもなく注文通り運ばれ、店員の態度も良く親しみやすい。 

私は近所の芝山岩(台北市)にある豆乳店でよく朝食を取る。ここは店主と3人の女性店員が家族で、4人は毎朝早くから大豆をひき、パイ生地を延ばし、商売は大繁盛だ。あるとき、私が経営のコツを尋ねたら、店主は「特にありませんよ。ただ一生懸命に生地を打っては延ばし、他の店よりも豆をたくさん使い、手間と材料は惜しみません」と言う。4人は協力して忙しく店を切り盛りし、その手が休むことはなかったが、顔には満足そうな笑みがあふれていた。 

深夜まで長蛇の列が続くほど人気のある上海霍山路に位置する「阿文豆漿」のお店(vcg)

焼餅も油条も小麦粉で作ったものだが、食べるとそれぞれ別の材料でできているように感じる。サクサクした焼餅は、一口かじると元気な一日の始まりの「テープカット」をしたような気分になる。焼餅の表面に付いているゴマはとても香ばしく、テーブルに落ちたのがもったいなくて、みんな指先を押し付けて拾っては口に運んだ。中国には、「焼餅を食べればゴマは落ちるものだ」という言葉があるが、これは、過ちを犯さない人間などいない(誰にでも過ちはある)という意味だ。 

以前、父が話してくれたゴマにまつわるエピソードには、もっとリアルなものがある。それによると、朝食を食べる豆乳店では、昔よくテーブルをたたく音が聞こえていたそうだ。事情のよく分からない人は、誰かが腹を立てているのかと思ったかもしれない。だが実は、昔のテーブルは木の板を張り合わせて作っていたので、どうしてもゴマが板の隙間に落ちてしまう。このままでは指でつまみ取れないが、たとえ一粒でも香ばしいゴマがもったいない。そこで力任せにテーブルをたたき、その反動でゴマを飛び上がらせ、板の隙間から取り出していたのだ。この力いっぱいテーブルをたたくエピソードは、ゴマの香りがいかに人を魅了したかをよく物語っている。 

焼餅に卵を挟む組み合わせは、サクサク感にしっとり感が加わり、絶妙な食感だ。また台湾式のおにぎりは、甘口はカリカリに揚げた油条に砂糖をまぶし、辛口は肉でんぶ、刻んだ切干大根、油条を具にしている。丸く薄く広げた生地に卵を落として焼く蛋餅は、割と新しい食べ方だ。生地にコーンスターチを加えているので柔らかく、卵を割って混ぜて焼いたら丸めて輪切りにし、しょうゆなどに付けて食べる。 

や蒸しパンの饅頭(マントウ)も、中国人にはおなじみの朝食だ。この主食と共に、食卓には辛い大根やキュウリの漬物、アヒルの塩漬け玉子、豚肉でんぶ、腐乳、ピーナッツ、、辛いメンマなどの付け合わせも並ぶ。時には前の晩の余ったおかずの小皿も一緒に並び、食卓がとても引き立つ。そこに目玉焼きでもあれば立派な朝食の出来上がりだ。 

その目玉焼きの作り方のコツをよく分かっていない人が多いようで、黄身が破れたり、焼き過ぎたりしている。目玉焼きは、まず熱した鍋に少量の油を入れ、卵を落としてから弱火にする。しばらくして白身の縁に泡が出始めたら裏返し、黄身が8分ほどの固さになるまで焼き、皿に移す。 

そして、まだうっすら油が残っている鍋にしょうゆを少々入れ、煙が立ち始めたらすぐ火を止め、これを目玉焼きの上にかける。この熱いしょうゆをかけることで、柔らかい目玉焼きの食感はたちまち違ってくる。 

この他にもよく親しまれている朝食として、やや手の込んだ粥に、例えば香港風のピータン豚肉粥やサンパン(五目)粥、かつお節風味のピーナッツ粥がある。これには熱々のシューマイが合う。台湾の台南地方で有名なしょっぱい粥も種類が豊富だ。米にサバヒー(ミルクフィッシュ)の骨や豚骨で取ったスープを加え、グツグツと煮込む。出来上がった粥に焼いてほぐしたサワラの身を加え、さらにニンニク、セロリ、花ニラのみじん切りや炒めた玉ねぎをふりかける。最後にサバヒーの身を一切れ載せれば、香ばしく旨味たっぷりの粥の出来上がりだ。 

バリエーション豊かな中華式朝食(vcg)

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