小麦粉料理(2)

2024-02-04 14:23:00

発酵 

小麦粉料理にとって発酵は奥が深い。一般的には、長い間継ぎ足しながら受け継がれてきたイースト(酵母)、俗に言う「老麺」を使うのが一番良いとされている。おばあさんたちのコツは、天然の酵母菌を使い、すでに発酵した小麦粉の生地で新しい酵母を作ることだ。商売での利益を優先する飲食店でも、「老麺」で発酵させるように心掛けているが、発酵が進み過ぎて酸っぱくなったら、重曹を加えて中和させることもある。 

おばあさんたちは、暑い日には小麦粉の生地に酵母代わりに酒かすを加える発酵法を使うこともある。この方法で発酵させる場合、摂氏28度前後の室温が必要で、発酵には約8~12時間かかる。完成した生地は少し酒の香りがする。このやり方は実際のコストは低いが、時間がかかるので、マスターしている人は少ない。だが私はこの発酵法が好きだ。酒かすに含まれる酵母はビタミンが豊富で、人体には何の害もない。唯一の問題は酒の香りがすることで、子どもたちが気に入らないことである。 

小麦粉の生地を発酵させるには、生物的な変化の原理による必要がある。洋菓子を作るときは、小麦粉に油や卵製品、乳製品などの材料を加えるので、天然の発酵方法ではふっくらとした生地には仕上がらない。だから、化学的な成分を含む重曹やベーキングパウダーを使って酸性を中和しなければならない。これにより、小麦粉の生地に大量の炭酸ガスが発生し、体積が大きく膨張し、ふっくらとおいしく仕上がるのだ。 

しかし、ふんわりとしておいしい食べ物ほど、作る過程に注意しなければならない。なぜなら、生地の発酵は炭酸ガスを発生させてふっくらと膨らませ、口当たりを柔らかくし、見栄えを良くしているからだ。これは物理的、化学的な膨張の過程だ。 

食物アレルギーの原因の一つが、パンなどに入っている化学成分だ。ベーキングパウダーの大半にはアルミニウムが含まれているため、健康医学界では近年、それを使った甘いものを食べないよう再三注意を呼び掛けている。 

小麦粉料理で化学添加物の使用を避けたいのなら、酵母の応用を学ばなければならない。市販されている生酵母は糖蜜などで培養して大量に増殖させた酵母を分離後に圧搾したものだ。これは自然な製法だが環境に左右されやすく、酵母の活性も不安定で、配合に熟練した技術が必要で、保存が面倒だ。そのため、一般家庭では普通使わない。一部の大規模工場では、天然の生酵母を製造し、それを低温で乾燥させて活性酵母の顆粒にする。これは発酵力が均一で保存しやすく、使用するときはぬるま湯に溶かして生地に加えるだけでよい。 

古代の人々は発酵食品を作る際、健康的な発酵方法として糖分を含む食材を使っていた。ゆでたジャガイモとご飯に適量の水を加えてペースト状にし、自然発酵させたものなどだ。その後、これに毎日少量の水と小麦粉を加えて培養することで、酵母が徐々に成長増殖し、完成したものが酵母種となる。この種を小麦粉と混ぜて発酵させることで、さまざまな食感の小麦粉料理が作り出される。 

全ての自然発酵法に共通しているのは、手間がかかることだ。じっくり時間をかけて自然発酵させる方法と、短時間で化学的に発酵させる方法を比べると、商業的な利益を重視する食品事業者にとって、前者のような時間的コストを受け入れられないのは明らかである。 

酵母種の培養 

漢時代以前の祭祀(さい し)論集『大戴礼記』易本命篇には、次のような記述がある。「肉を食べる者は勇敢でたくましく、穀物を食べる者は賢く巧みで、空気を食べる者は神々しく長生きし、何も食べない者は不死身となる」。道教の修行では、長生きするためには食物を取らないことだとされている。現在流行している断食療法も、古代道教の修行法で穀物を食べない「辟穀」「絶粒」と関係がある。思想家荘子(そうじ)の『荘子』逍遥遊篇に、「不食五谷、吸風飲露」(穀物を食べず、風を吸い、露を飲む」とあるが、まるで仙人の修行のようだ。現代科学に基づいて考えると、あまりにも現実味がない。 

文学者の南淮瑾先生が設立した私塾「大学堂」で講義を受けたとき、何人かの先輩は本当に数日間も食事を取らずにいられることを知り、不思議に思った。しかし、小麦粉生地の発酵を研究するようになって初めて、空気中に酵母を育てる天然の微生物が存在することを知り、「風を吸い、露を飲む」という行為は実際に可能だと気が付いた。中国人には、秦の時代以前からこのような知識体系があったのだ。 

私は、台湾のパーマカルチャー(持続可能型農業)開発協会の生活講座「野生つる園」で、自分の生活環境でさまざまな微生物を培養できることを学んだ。それらはいずれも目には見えないが、身の回りに実在する養分であると知った。これはまた、私が敬愛する中国大陸北方のおばあさんたちの小麦粉料理や、南方のおばあさんたちの甘酒作りの技術に感心する理由でもある。こうした豆類の加工食品や漬け物、酒の発酵過程などの技術は、全て神が作った「DIYマニュアル」に頼っているのだ。 

人々は、より洗練された味わいや視覚的な楽しみのために、多くの工夫を凝らしてきた。しかし、スピードと効率だけを求めて開発されたさまざまな非自然のベーキングパウダーや防腐剤は、60年もの時を経て、健康医学によって人体に有害であることが次第に明らかになってきた。健康医学におけるアレルギーのリストは、ベーキングパウダーなどの油脂添加物と長期にわたる過敏症との関連を裏付けている。最も恐ろしいのは、前述のようにほとんどのベーキングパウダーにアルミニウムが含まれていることだ。これは脂質代謝に悪影響を及ぼし、インスリンの不足や過多を引き起こし、糖尿病などの原因となる。 

アルツハイマー型認知症の原因はいろいろあるが、健康医学では予防のために、精製された甘いものを控えるよう提唱している。健康医学は常に自然な食生活に戻るよう私たちに注意を促し、速さや見た目の美しさを追求する多くの調理法を推奨していない。 

空気中の菌種を使って酵母を作るのは、温度管理に手間がかかり、時間もかかって難しい。だから、こうした発酵方法は広く普及しなかったのだと思う。しかし、現在では多くの新たな発酵方法が普及しており、オーガニックのレーズン酵母やリンゴ酵母などを使ったパンなど、多くの愛好家がネットでその作り方をシェアしている。 

 

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