楊嫻・中国駐名古屋総領事:歴史を振り返り未来図を

2022-10-24 17:12:41

王朝陽=聞き手  

中国駐名古屋総領事館=写真・イラスト提供  

~歴史を未来へつないで~中日国交正常化50周年記念友好ドラマ 

  

中部地域にある中国駐名古屋総領事館(以下駐名古屋総領事館)は、愛知、三重、岐阜、福井、富山、石川の6県を業務エリアとしている。この地域は古くから中国との強い絆を持ち、千年前には美濃(岐阜中部)の僧侶の栄叡が危険を恐れず海を渡って唐を訪ね、鑑真和上を日本に招いてその教えを広めた。近代以降は福井県出身の藤野厳九郎と文豪・魯迅が師弟の契りを結び、名古屋では、かの有名な「ピンポン外交」がスタートを切った。まさにスポーツや民間の交流をもとに、中米関係改善と中日国交正常化への歴史的幕開けを目の当たりにした土地なのだ。  

中日国交正常化50周年と、来年の中日平和友好条約締結45周年という大切な節目を迎えるに当たり、駐名古屋総領事館は中日両国の青少年を招いて友好の歴史を振り返り、絵を描くことで中日間の感動的な瞬間を記録し、長年にわたる友情の継承を願った。  

そこで9月2日に着任したばかりの楊嫻総領事が本誌東京支局の取材に応じ、若者たちの絵画作品を前に、日本との縁や管轄区域の友好の伝統の継承、未来にわたる民間交流の深化や地方交流へのさまざまな思いを語ってくれた。  

   

中国駐名古屋総領事楊嫻   

   

――新たに駐名古屋総領事に着任されましたが、日本の印象はいかがですか。  

   

楊嫻 中日国交正常化50周年という両国関係発展の大切な節目に駐名古屋総領事として赴任したことはとても光栄で、同時に責任の重さを痛感しています。日本は私にとっては見知らぬ、しかしよく知っている国でもあります。今回は初来日ですが、すでに何度も心温まる出来事がありました。  

私は高校生の頃、当時の中国で大流行した日本のテレビドラマ『燃えろアタック』を毎日見ており、素晴らしいストーリーとアスリートの闘志がとても印象的でした。後に外交部で貧困対策を担当した時に、多くの日本の援助者に伴って、貧困撲滅の最前線を何度も訪れたことがあります。日本の援助者の真摯な姿や、地元の人々にお金や物資を寄付する愛と共存の精神に、私は深く感動しました。その頃、来日の経験はありませんでしたが、さまざまな文化交流や民間交流を通じ、一衣帯水の隣国について理解を深めることができました。 

  

(左)1978年、日本映画『君よ憤怒の河を渉れ』が中国で上映され、大きなブームとなった  

(右)2020年2月、「武漢からの恩返し」と銘打ち、日本の人々の武漢への支援のお礼として、日本の街頭でかぶり物をしてマスクを配る中国人女性を描いたイラスト  

   

初めて名古屋を訪れて街を歩いてみると、見慣れた漢字があちこちにあって文化の相似を改めて感じ、歴史の教科書に登場する遣唐使や留学僧の物語が生き生きと目の前によみがえり、両国の間には2000年余りにわたる交流と民間往来が今も脈々と受け継がれている、とはっきり実感することができました。  

着任後、私は愛知県の大村秀章知事をはじめとして、富山県の新田八朗知事、石川県の馳浩知事、東海日中貿易センターの嶋尾正会長、中日新聞社の大島宇一郎社長、愛知県日中友好協会の後藤泰之会長ら各界の方々にお会いしましたが、そのほかの県や市への訪問も、さらに予定しています。中部地域の人々と幅広く会えたことで、日本の地方行政と市民が中日友好に関心を持っているということが明確に感じられました。また、それぞれのやり方で中日友好事業に活力を注ぎ、中日間の地方交流や経済交流、民間交流への高い期待が見て取れました。  

中部地域は「ピンポン外交」の発祥地であり、富山、岐阜、福井など各県も中国との関係が深く、中国との深厚な友好の伝統を持っています。また、この地域には多くの民間友好団体があり、見返りを求めることなく、中日友好のために日夜奔走されています。総領事に就任してからというもの、当地の友好的な雰囲気を強く実感しており、これらの全てがより良い仕事へとつながり、職務をしっかり果たすための礎になることと確信しています。  

   

1972年9月29日、中国と日本は中日共同声明に署名し、国交正常化を実現した  

   

――中日国交正常化50周年記念に合わせ、駐名古屋総領事館は中部地域と中国の間で育まれた長い友好の歴史を振り返るイベント「鑑往知来―中日国交正常化50周年記念友好“画”劇」で、中日両国の若者を招いて友好史の瞬間を絵画で切り取るという試みを行っています。両国の若者の歴史観から、どのような印象や思いを抱きましたか。  

   

 両国の若者はさまざまな思いや才能によって、誰もが知っている感動的な歴史的瞬間を絵画という方法で描き上げました。作品をまとめると、それはまさに中日友好史や民間交流の「ドラマ」となります。私たちはそれを「飲水思源」「以球為媒」「風月同天」「民之相親」「篤行致遠」の5章にまとめました。  

「飲水思源」は、鑑真和上が留学僧の栄叡や普照に請われて仏教の普及のため何度も渡航を試み、6回目にして渡日を果たした様子を描いた作品など、およそ1200年前の物語を描いています。これは中日両国の歴史教育に登場する内容であり、作品を見た瞬間、教科書の挿絵を思い浮かべて親近感を抱く人も多いと思います。歴史の重要な場面を収めたものとしては、1972年に両国が調印した「中日共同声明」も挙げられるでしょう。国交正常化に向けた当時の両国の指導者たちの固い決意が感じられます。  

「ピンポン外交」関連の作品も多かったため、「以球為媒」という章を特に設けました。51年前、「ピンポン外交」は国際関係史に「民間友好が政府関係を促した」という輝かしい成果を書き加えました。それから半世紀が過ぎ、かつては細々としていた民間の行き来が飛躍的に発展し、両国民の間に積み上げられた相互信頼と友情はとうとうとした流れとなり、地震や感染症などの自然災害でもお互いを支え合い、中日友好の強い生命力を示しました。  

ですから今回のイベントでは、若者たちの描く絵には中日両国が国境を越え、お互いに助け合う姿が多く描かれています。例えば2008年に発生した四川・汶川大地震で日本の国際救助隊が犠牲者に黙とうする姿や、11年の東日本大震災で、中国の三一重工が福島の原子力発電所の救援に手を差し伸べた姿などです。新型コロナウイルス流行当初の20年2月、チャイナドレスを着た日本の14歳の女の子が寒空の中、武漢のために支援金を募る姿、日本に留学して卒業後企業を立ち上げた中国人女性が鹿のかぶり物をして、「武漢からの恩返し」と書いた段ボールを手に道行く人々に無料でマスクを配布する姿など――これらは全て「風月同天」の章に収めました。  

特に私が感動したのは、絵画の「ドラマ」全体が目に見えない糸でつながっていたことです。「飲水思源」では、古代日本が遣唐使や留学生を中国で学ばせ、近代中国では李大釗などの中国人留学生が救国の道を求めて日本へ渡った姿が描かれ、「民之相親」では、北京冬季五輪で好成績を収めた中国スノーボード代表の蘇翊鳴(スー・イーミン)選手と日本人コーチ佐藤康弘さんの感動的な絆が描かれています。古代から今まで続く中日両国の「師でもあり友でもある」友情は、両国民の相互学習と友好交流の証しとも言えるでしょう。  

2000年にわたる中日両国の友好交流を振り返ると、両国民を感動させた素晴らしい瞬間は無数にあり、今回の絵画数十点は大海の一滴にすぎません。私たちは今回のイベントを通じ、両国の若者の手で両国民の友好の物語と感動をより多くの人々に伝えてもらいたいと思っています。「国の交わりは民の相親しむに在り」。両国民の友好的な行き来、相互理解、深い友情は、中日関係の発展に命の水と無限の力を与えてくれます。  

   

2021年8月、中国駐名古屋総領事館はピンポン外交50周年を記念した交流大会を開催した  

   

――歴史を振り返るのは、より良いスタートのためですが、今後、駐名古屋総領事館では民間交流と地方交流の促進のために、どのような計画を立てていますか。  

   

 来年は中日平和友好条約締結45周年、管轄区域の福井県と浙江省の友好締結30周年、岐阜県と江西省の同35周年を同時に迎えます。次の段階に向け、これらの友好都市締結の記念活動をきっかけに、中日両国の地方交流と実務協力の促進に力を入れ、共同発展を実現したいと考えています。  

来年は杭州アジア大会が、26年には愛知・名古屋アジア大会が行われますが、これは昨年の東京2020五輪と今年の北京冬季五輪の時と同様に、両国で続けて行われる大規模なスポーツイベントです。先だって私たちはアジア大会を応援するために中日青少年漫画コンクールを開催し、来年もアジア大会関連のプレイベントを行う予定です。これらのイベントを通して、中日両国民が五輪会場で味わった感動と素晴らしい競技への熱い思いを呼び起こし、スポーツで結ばれた友好が続くことを願っています。  

青少年交流は私たちにとって常に大切な仕事です。当総領事館は19年に、管轄区域内の大学生100人による江蘇省での訪問交流を行いました。新型コロナウイルス感染症の流行が落ち着いたら、真っ先に同じ規模の交流を再開し、中部地域の若者に中国との交流を行うためのプラットフォームを提供し、両国の若者が互いにより深く理解し合い、友情を結び、今後50年の中日友好の継承者であり推進者であってほしいと願っています。  

   

2017年9月、東京・上野動物園のジャイアントパンダ「シャンシャン」(香香)の生後100日目のイラスト  

   

ここで言及しなければいけないのは、緊密な経済と貿易の交流です。中部地域は経済が発展しており、製造業が強いという利点があるため、長期にわたって中国の経済・貿易・産業と密接な交流が続いていました。第4次産業革命と科学技術革命の波に乗り、中国国内のハイテク企業は急速に発展しているので、将来的には両国の企業間でより多くの協力が見いだされると思います。来年は新エネルギー車とスマートシティーの分野において、双方の企業のマッチングに一層努力し、双方の長所の発揮と実質的な協力を実現したいと思っています。中部地域において中日の企業間交流はさらに深化し、実務的協力の中身はより高いレベルになると信じています。  

また、中国政府の在外公館本来の業務として、管轄区域に住む華僑・華人へのサービスが挙げられます。中部地域に住む多くの華僑・華人は、長年にわたって中国の優れた文化を継承し、中日の民間友好のために多大な努力を払ってきました。また、実際に会うことで、皆さんのエネルギーと仕事への熱意を痛感しました。駐名古屋総領事館は一貫して「人民本位」と「人民のための外交」を理念とし、管轄区域の華僑・華人、留学生、研修生、中国系企業に向けてより良いサービスを提供し、中国公民と企業の正当な権利を守っていきます。  

実は来日前、高校の国語で学んだ魯迅の『藤野先生』の一節を読み直しました。魯迅の恩師である藤野厳九郎先生が、福井県の出身だったからです。福井には藤野先生の記念館があり、今後、私も館員と共に見学に行こうと思っています。『藤野先生』を読むことで、魯迅と藤野先生に象徴されるような、中日両国の2000年以上に渡る師であり友人である絆を振り返り、さらにそこから力をもらい、友好への思いを強めることができました。中日関係の「次の50年」について、私たちは歴史に託された責任を負い、両国関係を引き続きさらなる高みへと引き上げ、新時代の中日関係の輝かしい青写真を描き、両国民により多くの利益をもたらし、地域と世界の平和により大きな貢献をしたいと願っています。  

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