『空巣』

2020-07-14 17:01:51

弋舟 

 2013年、江西省宜春市のある一人暮らしの高齢者(95)が孤独を恐れて何度も自殺を図ったというニュースが、小説家で魯迅文学賞受賞者の弋舟氏の注意を引いた。その後、弋氏は1年余りの実地調査を行い、数十人の都市部と農村部の「空巣老人」(空き巣老人。子どもがいないか、子どもと同居していないため、一人暮らしの高齢者)のもとを訪れ、彼らの一人暮らしの実態を記録した。このインタビュー記事は15年、ネットで公開され、非常に高い評価を得た。他の「空巣老人」に関する調査報告とは異なり、同書はテーマを「空巣老人」の精神における「孤独」に置いている。親孝行という伝統的な倫理と「吾が老を老として、以て人の老に及ぼす」(自分の親を敬愛し、それから敬愛の情を他の老人にも及ぼす)という理想的な社会観を持つ中国人にとって、身寄りのない「空巣老人」の孤独は社会問題であるだけでなく、伝統文化・精神への大きな衝撃でもある。

上海文芸出版社 2020年4月 58元

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