中国、新時代へ! 第20回党大会から考える

2023-01-16 16:20:32

木村知義=文

代を画するとはこういうことを言うのだろうか、新しい時代に踏み出すとはこういうことなのか、そんな思いが胸をよぎりました。中国共産党第20回全国代表大会(第20回党大会)についての感慨です。また、第20回党大会閉幕翌日の「一中全会」後に発表された中央指導部を目にして「乾坤一擲」という言葉が浮かびました。それぐらいの気迫を感じ取ったというわけです。 

今回の第20回党大会からは触発され、考えさせられたことが数多くあります。それらの「気付き」の中から許された紙幅で述べてみます。 

10月16日、第20回党大会が北京の人民大会堂で開幕した。真剣な面持ちで報告を読み込む党代表たち(新華社) 

  

時代が変わり、新しい時代へ 

まず、中国は今どのようなところに立っているかです。 

多くの困難を乗り越え、1949年の中華人民共和国成立にたどりついたことで中国革命はゴールに到達したわけではなく、そこから新中国建設という目標に向けて、また長い「過程」の新たな歩みを重ねてきたということ、そして試行錯誤を重ねながらいくつかの「段階」を経て、今さらに新たな歴史的段階を迎えたということです。つまり「改革開放40年」の段階を経て「小康(ややゆとりのある)社会の実現」という目標を達成し、さらに高い目標に向けて階段を上る「段階」に至ったというわけです。 

とりわけ、習近平総書記による「第20回党大会報告」(以下「報告」)で「社会主義現代化強国の全面的完成に向けた戦略構想は全体で2段階に分かれている。すなわち、2020年から35年までに社会主義現代化を基本的に実現し、35年から今世紀半ばまでに中国を富強・民主・文明・調和の美しい社会主義現代化強国に築き上げる、ということである。今後5年は社会主義現代化国家の全面的建設の初期段階における肝心な時期である」と述べていることに注意を払うことが、中国のこれからを読み解く上で欠かせないと思います。 

これが「気付き」の第1です。 

  

現代の社会主義と中国式現代化 

このように「究極の目標」を目指す長い道のりとしての「過程」と、そこでのいくつかの「段階」への的確な認識がないと、現代の社会主義を目指す中国の挑戦の歴史的位置付けが見えてこないと思います。ゆえに、次は、その歴史的挑戦とは、すなわち中国が目指す現代の社会主義とはどのようなものを指すのかを考えることが重要になります。 

マルクスの時代に構想された「社会の姿」を基本に据えるとしても、時代の移り変わりの中で、現代の最先端の生産システムをはじめ、新たな時代にふさわしい社会の在り方を創造していかなければなりません。言葉を変えると、中国が掲げ目指そうとする現代の社会主義とは、いまだかつて人類が見たことのない未到の世界に向けて踏み出すことを意味します。 

そこで大事なことは「中国式現代化」という提起です。中国革命が西欧あるいは旧ソビエトにおける思想や理論を引き写すことによってではなく、マルクスの考えを中国の歴史と伝統、文化そして中国社会の実情に根差す思想と理論へと深め、実践として昇華させることによって勝利に至ったことはすでに語られています。これからの「前人未踏の道」においては、さらに創造的な「中国の道」を切り開いていくことが必要となるわけです。 

「報告」では「科学的社会主義は21世紀の中国で新たな輝きを放ち、中国式現代化は人類が現代化を実現させる上で新たな選択肢をもたらした。中国共産党と中国人民は、人類が直面する共通課題の解決に向け、より多くのよりよい中国の知恵、中国の案、中国の力を提供し、人類の平和と発展の崇高な事業に新たなより大きな貢献をしていく」と述べています。 

この現代の社会主義と「中国式現代化」について認識を深め、中国が「人類の平和と発展の崇高な事業に新たなより大きな貢献をしていく」と語ることの意義を知ることが、中国のこれからを見通す上でとても大事になると考えます。 

  

世界情勢を映す安全観と成長 

次の「気付き」は、産業、経済の成長、発展と国家の安全保障体系、社会の安定が一体のものとして重視されていることです。 

20回党大会の直前10月半ばに発表された米国の「国家安全保障戦略」においても「中国が最重要の競争相手」とされました。サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は会見で中国への「対抗」が最優先の「課題」であることをあらわにしました。また、この少し前に米国が発表した中国の半導体に関わる新たな「規制」によって世界のサプライチェーンと世界経済に深刻な影響が出る可能性を海外メディアは指摘しました。中国へのなりふり構わぬ「対決」姿勢の深みに嵌る一方の米国と、それに追随する同盟諸国という風景になっています。 

こうした米国が引き起こす「緊張と対立」を視野に入れてハイテクなどの科学技術、産業、経済政策を立てなければならない緊張感が今回の「報告」にも反映されていると感じます。 

米国に付き従って「経済安保」政策を推し進める日本にとっても他人事ではなく、日本の在り方を真剣に考えなければならない問題として受け止めなければと思います。 

  

人民に依拠し、人民こそ基本 

こうした難問、難題をはらむ「未踏の道」を歩む上で最も大事なことは、人民に依拠し、人民に奉仕するという、中国革命の原点と言うべき思想であり、今回の第20回党大会でも、というより従来にも増して、随所で語られていることに気付きます。 

「人民の立場をしっかりとおさえ、人民の願いを理解し、人民の創造性を尊重し、人民の英知を結集して」いくことが強調され、これからの新時代を歩むに当たって、人民こそが進歩と発展の原動力であるという認識を基礎に据えて、人々の力を創造的に生かしていくことが「中国の道」を成功させる鍵になるという認識が語られているのだと気付きます。そして、それを主導する中国共産党でなければならないという、全党に向けて自覚を促す呼び掛けでもあると感じました。 

さらにもう一つ。「報告」の締めくくりに青年への呼び掛けがなされていることの重要性です。中国の人口における年代構成について正確に把握できているわけではありませんが、多分、すでに中国が「豊かな中国」へと発展を遂げつつある時代に生を享け育った若者たちが人口の多数を占める時代を迎えているのではないかと想像します。 

そんな時代に、まさに前人未到の「新たな時代」に向けて歩みを進めようという中国です。社会に目を向け、他人を思いやり、支え合って社会全体の発展と進歩を目指すことが何よりも大事になってきます。つまり、青年たちが中国革命の原点に立ち戻って思想、哲学を深め、そこを土台として「中国式の現代の社会主義」建設に立ち向かうことが重要になるのです。未来を代表する青年たちへの「呼び掛け」が最後になされている意味を読み取ることもこれからの中国の行方を見通す上で重要だと感じました。  このように、今回の第20回党大会についてつぶさに分け入って考えること、つまり中国共産党とそのリーダーシップについて深く知ることは、中国のこれからを考える上で最良、最強の「教科書」になるという「気付き」を最後に記しておきたいと思います。 

 

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