人の立場に立った離婚手続き

2021-11-30 10:40:06


李小芬=文

鄒源=イラスト

小于と小麗は典型的な口げんかが絶えない夫婦で、うまくいっている時はべったりだが、ひとたび口げんかになると、別れる寸前までいく。特に小麗は離婚ごっこが大好きで、口げんかをするたびに、「離婚!」という捨て台詞を残して家を出て行く。小于もまったく譲ることなく、時には続いて外に飛び出して、ズンズン離れていく小麗に「別れたいなら別れてやるよ!」と叫び、彼女を激怒させた。

  幸いなことに、いつも口だけで二人の離婚ごっこはすぐに終了した。毎回小麗が出て行った数時間後に、小于が実家に帰った小麗に電話をかけ、「戻っておいでよ。僕が悪かった。これからは気をつけるよ」と言うのだ。こうして小麗はにこにこして、あれこれ言わずにすぐにタクシーで凱旋した。

  しかし今回、二人の口げんかは実にひどかった。小麗は常套手段を取り、またもや離婚だと叫んだ。小于は怒り、「離婚は遊びか? お前は夫婦の情ってものを大切に思わないのか?」と言った。小麗はさらに怒って、「アンタに夫婦の情を説かれるのはもうたくさん! アンタも男なら、私に付きまとわないで」と叫んだ。小于はとうとうこらえきれなくなり、小麗を外に引きずり出し、「別れたいなら別れてやる! 別れたら生きていけないとでも思っているのか? 本当にその気なら今から民政局に行くぞ!」「行く、行ってやる!」。小麗は怒り心頭でしつこく文句を口にしながら、小于についていった。

外に出るなり、小于は後悔した。小于は小麗を愛しており、離婚したくはなかった。ただ、一度出した言葉を引っ込めることはできず、男たるもの堂々たる気概を持つべきで、顔を地面にこすりつけて頼むなんてことはできない。ましてや小于は小麗に、離婚ごっこは面白くはないことを教え、懲らしめてやりたかった。けど、この場をどうやって収めたものか。

悩んでいる時、小于は突然ひらめいた。役所の人がきっと仲裁してくれるに違いない。どうして離婚するのか、決心はついているのかと聞くだろう。その時、自分がちょっと迷いを見せれば、職員は自分たちにはまだ修復の可能性があると考え、全てが丸く収まるのではないか。こうして、小于は意気軒高と、小麗を連れて民政局へ入っていった。

離婚手続きをしたのは、若くきれいな女性だった。彼らが離婚のために来たことを聞くと、何も言わずすぐに申請書を取り出した。小于は驚き、心の中で、「どうしてまず仲裁の言葉を口にしないんだ」とつぶやいた。小于はのろのろと申請書を記入したが、内心はとても焦っていた。「石のように冷たい女だな!」と女性の冷酷無情をひたすら恨んだ。小于はマグニチュード3・0クラスの地震に突然襲われることまで願った。そうすればけが人も出ず、離婚手続きもできない。

しかし奇跡は起きなかった。女性はすぐに離婚証を記入し終え、小于に「写真は持ってきましたか? 貼りますので」と言った。小于は思いがけない喜びでほっと一息つき、うれしそうに言った。「持ってきていません。家に忘れてきましたので、取りに帰ります」。小于は、家に帰れば、謝るといういつもの手で小麗の決心を翻すことができると分かっていた。

しかし、女性は小于に冷や水を浴びせた。「大丈夫です。私たちは人の立場に立ったサービスを行っていますので、ここで写真を撮ることができます」

小于と小麗は互いに顔を見合わせ、魔法にかかったかのように、しかめ面をレンズに向けた。このようにして、小于と小麗は人の立場に立ったサービスに打ちのめされた。この春たけなわの日に、二人とも独身に戻ったのだ。

 

翻訳にあたって

中国での結婚は、民政局結婚登記処に出頭しての手続きが必要で、手続きが完了すると並んで写っている二人の写真が添付された結婚証がそれぞれに発行される。離婚もまた民政局に出頭しての手続きとなり、それぞれに離婚証が与えられる。中国では一人っ子世代の離婚が非常に多く、離婚率は日本の2倍ほどの高さであり、これが社会問題にもなっていて、今年1月からは協議離婚の場合、申請受理から30日の冷却期間が必要とされるようになり、これに対し、国民からは反対の声が多く上がっている。

ピックアップ語彙にある「有惊无险」は「ハラハラしたものの、結果として危険はなかった」という意味で、この文章の場合、いつも口先ばかりで実際には離婚しないという意味になるため、「口だけで終わる」と訳した。(福井ゆり子)

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