二人の警備員

2022-05-12 14:32:26

 

林華玉=文 

鄒源=イラスト 

王迅と張坦はホテルの警備員で、二人は一緒にホテルに入職した。彼らは年も近く、どちらも20歳前後で、異なるのは、王迅がゲーム好きなのに対し、張坦は読書好きであることで、それもホテル管理の本ばかり読んでいることだ。王迅は張坦をからかい、「お前はたかが警備員だろ。ゲームで遊ばないのは構わないが、そんな本を読んで何の役に立つというんだ? まさか次は社長になろうっていうつもりか?」と言った。張坦は何も言わず、ただ笑っているだけだった。 

この日、二人は駐車場の秩序維持に当たっていた。この時、ぼろぼろの乗用車がやって来て、ホテルの入り口で唯一空いていた駐車スペースに駐車しようとした。高級車を見慣れている王迅はこの車を見下し、歩み寄ると車の持ち主に、「お客さん、ここには駐車できないので、車を地下駐車場に止めていただけますか」と言った。 

その車の持ち主は怒り、「私はあんたたちのホテルの客だぞ、どうしてここに止めちゃいけないんだ」と言った。王迅はうるさがって、「ここは重要なお客さんが車を止める場所なんです。ご理解ください」と言った。車の持ち主は声を荒げて、「みんな客じゃないか、何をもって貴賤の上下を分けるんだ」と言った。こうして二人は売り言葉に買い言葉で口げんかを始めた。 

 騒ぎを聞きつけ、張坦は慌てて走り寄って、車の持ち主に、「お客さま、ここに車をお止めになってもまったく問題ありません。でも今日はちょっと特殊な事情がありまして、遠くからわざわざ来ている外国人専門家がホテルにお泊まりになるんです。われわれは彼らを歓迎する必要がありますよね」とにこやかに言った。 

 その車の持ち主は「そういうことなら、分かったよ。私は地下駐車場に車を止めよう」と言い、さらに王迅に向かって、「そこの若いの。同僚をしっかり見習え。どちらも若者だけど、出来がこんなに違うとはな」と言った。 

車が走り去った後、王迅は張坦に愚痴っぽく、「あんなみすぼらしい格好でわれわれのホテルに泊まれるのかね。ただで車を止めに来ただけだと思うけどな。お前はどうしてあんなに丁寧にしたんだよ」と言った。 

張坦が、「確かに車を止めに来ただけかもしれないけど、君と彼がこんな口げんかしていたら、他のお客さんにわれわれのサービスが悪いと思われ、われわれのホテルの経営にも差し障ると考えなかったのか……」と言うと、王迅は冷笑して彼の言葉を遮り、「お前は自分がひとかどの人物とでも思っているのか? ホテルの経営がどうかなんて関係ないじゃないか」と言った。 

「どうして関係がないって言えるんだい? 皮がなかったら毛の付きどころがないって言うだろう? ホテルの経営が良ければ経営者は喜び、喜べばわれわれの給料も上がるかもしれない……」と張坦は言った。 

1年後、張坦は警備部のリーダーに任命された。数年後、警備部の部長が退職し、退職前にホテルに張坦を推薦したため、張坦は警備部の部長を引き継ぐことになった。相変わらず一介の警備員にすぎなかった王迅は、学歴も大差がなく、見掛けも自分ほどではないのに、どうして張坦は出世するのがそんなに早いのかと不満たらたらで、怒りに任せて仕事を辞め、別のホテルの警備員となった。 

王迅と同時期にそのホテルに入った若者がいて、二人は宿舎で同室となった。仕事が終わると王迅は待ちかねたようにベッドに横になってゲームを始めたが、その若者はホテル管理関係の本を読んでいた。王迅は、「たかが警備員なのに、そんな本を読んで何の役に立つというんだ? まさか次は社長になろうっていうつもりか?」と言った。 

その若者は笑って、何も言わなかった。しかし、かつてどこかで見たようなこの一幕が、王迅に何かを悟らせたようだ……。  

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