中日韓の協力深化が鍵 結束し「経済寒流」に立ち向かおう

2020-02-27 16:35:06

陳言=文

 中国に戻って17年になる。その年数が、日本の大学で勉強し教壇に立った15年を上回ってから、筆者に春節(旧正月)が新年の始まりという感覚が次第によみがえって来た。今年の春節は例年より少し早く、先月25日が陰暦の元日だった。陰暦の新年は太陽歴に比べて1カ月近く遅くやって来るが、寒暖の程度や周りの動植物の変化からすると、陰暦の元日の方が北京の生活にぴったりくる感じだ。

 欧州連合(EU)は1991年に統合に合意し、94年には北米自由貿易協定(NAFTA)も成立した。一方、中日韓自由貿易協定(日中韓FTA)は2002年に構想が打ち出されたが、いまだに成立していない。12年に提起された東アジア地域包括的経済連携(RCEP)は、昨年末、インドが不参加を表明。引き続いて日本の姿勢が明確でなくなり始め、目下、交渉が継続中だ。

中日韓FTA、RCEPの枠組み構築はEU、NAFTAと比べて大幅に遅れているが、経済的な連携が欧米に比べて後れを取っているわけではない。特に世界経済にますます陰りが出始めている現在、中日韓が結束して、この冷え込みを乗り越える枠組みがますます必要になっている。今年、3カ国の経済的な求心力は遠心力よりも圧倒的に強くなるだろう。


貿易不振が経済減速を加速

 筆者が中国に戻ってからの17年間、日本の世論には中国経済失速論や崩壊論の波が何度も起きている、もしそうしたエコノミストの予測通りだったならば、中国経済はすでに何度も死んでいるはずであり、インドの国内総生産(GDP)よりも落ち込んでいるだろう。だが実際の状況は全く異なっている。中国のGDPは10年に日本を追い抜いた。さらに18年の中国のGDP(13兆3680億)は、すでに日本(4兆9717億)の3倍近くになっている。日本の世論では、中国経済失速論や崩壊論が相変わらず根強い。しかし、これも一種の白眼視から実現の可能性が全くない期待へと次第に変わってきている。

 失速論から言えば、実際に中国の成長率は確かに落ちているが、日本と韓国の落ち込みも明らかだ。昨年、国際通貨基金(IMF)は日本のGDP成長率を10%から08%に、韓国も26%から20%にそれぞれ下方修正した。下げ幅は中国ほどではないが、経済成長がすでに鈍化している中での下落であり、その影響は相対的に大きく、将来についても悲観的に見られている。中日韓の経済低迷の大きな要因は貿易の不振であり、言い換えれば、外部環境の悪化によるものだ。

 18年に中米貿易摩擦が始まって以来、両国が相互に関税引き上げの範囲を拡大し、二国間貿易は大幅に下落した。1990年から2018年の間に、日本の対外貿易で中国が占める割合は35%から214%に伸び、韓国においても21%から236%に増大。両国において、中国が米国に替わって第一の貿易パートナーとなった。中米貿易が米国側による打撃を受けて、その影響は日韓両国に及んだ。昨年の日韓の輸出はマイナス成長で、中日韓の域内貿易も10%近く減少した。

 日本は半導体産業の上流の原料分野で絶対的な優位性がある。韓国が強いのはメモリーやプロセッサーなどのICモジュールだ。そして中国は携帯電話やコンピューター、ゲーム機など端末商品の主要な輸出国だ。Eコマースの大手、京東商城(JDCOM)の沈建光副総裁は、「電子商品、特に携帯電話の価格下落は、中日韓の関連産業にマイナスに働いている」と見ている。

 「米国ファースト」というトランプ米大統領の経済政策は、世界の貿易システムを混乱させ、世界経済は寒流に見舞われ、中日韓の3国はその影響をまともに受けている。

 

3国FTAとRCEP推進

 こうした経済的な寒流に直面して、中国は中日韓FTAとRCEPを積極的に推進している。たとえ多くの困難があろうと、固まって暖を取る方法で寒流に対処し、結束力で危機を乗り越える――これが中国の一貫した主張だ。環太平洋経済連携協定(TPP)が米国の離脱で頓挫した状況下でも、日本は努力を続け、日本が主導する環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)を設け、多国間貿易の推進に尽力している。

 中日韓3国の経済貿易協力の観点から見れば、中韓自由貿易区は15年に成立したが、日本は中国や韓国とは未調印だ。日韓関係は昨年、戦後最悪と言われる困難な段階に陥り、その関係改善にはまだ大きな努力が必要とされている。一方、多くの人が感じているように、中日関係は今年かなり改善されるだろう。だが日本のメディアは、中国経済失速論や崩壊論の破たん後、一部は今度は政治などの面で中国に疑義を抱き、国民感情の全面的な改善はまだ困難な状況だ。

 今年に入って中米関係は緩和に向かうと見られ、先月15日には第1段階の経済貿易協定に調印したが、米国の対中関税軽減には限界があると見られる。技術面での中米デカップリング(分離)が拡大し、双方のイデオロギーと政治体制の違いが今後の交渉で出てくると、短期間で終息するとは思えない。これによって、もともと厳しい日本の対中世論がさらに勢いを増すかもしれない。

 中日韓や東アジア、世界の多国間協力をいかにして堅持し発展させるか。その前には3国のコンセンサスの欠落が立ちはだかっている。

 

成都サミットが示した方向

昨年末、四川省成都で開催された第8回中日韓サミットで発表された「中日韓協力の今後10年の展望」を振り返ると、米国が一国主義、脱グローバル化を推進している時に、中日韓が地域での協力強化の前向きのシグナルを発信することは、北東アジアの経済協力や世界経済の発展軌道への回帰の方向性を示している。

 

四川省成都の杜甫草堂で行われた中日韓協力20周年記念イベントに出席した李克強総理(中央)、安倍晋三首相(右)、文在寅大統領(昨年1224日、新華社)

 米国には強大な情報技術(IT)のプラットフォーム、GAFA(ガーファ、米国の主要IT企業のグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)を有し、世界最先端の金融システムがある。これらの分野で米国のソフトパワーは確かに無敵だ。しかし、米国の工業製造能力では、すでに世界各国に日用必需品を提供することはできない。工業品の製造面では、東アジア各国が米国の先を行き、この流れは今後十数年は変わらないだろう。また、たとえ小さな変化があるとしても、製造業が米国に回帰する結果にはならないだろう。

 今年以降の東アジア3カ国を予見すると、中日韓は引き続いて民間向け工業製品を世界に向け提供できる能力を保持するだろう。3国の経済協力と企業提携には、そのためのしっかりとした土台がある。

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