経済安保巡り新たな変化 自力更生に努める中国企業

2023-07-26 12:17:00

陳言=文

島で開かれたG7サミット(主要7カ国首脳会議、5月1921日)の前後から、日中経済分野での日本の新たな政策や、日本が他国と連携して中国との半導体分野の取引を規制する動きが頻発している。中日の外交レベルでの意見の相違が徐々に経済分野に及び、近い将来、半導体だけでなく、電池や人工知能(AI)など多くのハイテク産業で日本の対中経済規制が増え続けることが予想される。これに関係する原因は、他国(米国)からの要求であり、日本の「経済安全保障」政策から出たものでもある。 

1972年の中日国交正常化後に見られた両国経済の交流の勢いに、新たな変化が生じようとしているようだ。中国が日本の技術と資金を導入することにより経済を発展させ、中国経済が発展した後に日本はその見返りを得る――この相互の経済貿易関係はさまざまな影響を受けている。米国の中国デカップリング(切り離し)と日本の(中国に対する)経済安全保障によって中国経済は停滞するのか、デカップリングと経済安全保障によって日米経済は将来、中国の経済発展を上回る勢いが出てくるのか。これらは非常に関心を集めるテーマとなっている。 

変化し始めた中日相互補完 

中日国交正常化時(1972年)の両国の経済格差は言うに及ばず、2000年頃でも中日の経済規模や1人当たりの富の創出能力には大きな差があった。 

個人的に強く印象に残っているのは、21世紀になって日本の経済分野の役人を取材したとき、彼らが中国の地方の状況を大変良く知っていたことだ。詳しく聞くと、日本のODA(政府開発援助)のプロジェクトを担当する役人で、当時は多くのプロジェクトが中国の地方で展開されていた。その援助は無償ではなかったが、中国は資金不足で、さらに経済を成長させるさまざまな技術や社会インフラが不足していた頃で、日本の対中ODAは大きな役割を果たした。日本企業を取材していても、技術の発展レベルでほぼ全面的に中国企業を上回る状況を維持していることが見て取れた。 

それから10年の時を経た2010年頃、日本の経済官僚と交流すると、多くの人が、中日が経済規模で肩を並べて大差がない状況はかなり長く続くだろうと考えていた。一方、日本企業は多少なりとも中国との競争を感じていたようだ。しかし、中国経済が日本を何倍も上回るなどということは、討論はされたが、基本的には2050年かそれよりもっと後に現れる予測として考えられていた。 

だが筆者は、この討論が基本的に日本経済も発展するという前提に基づいていることに大いに違和感を覚えていた。11年に東日本大震災が起き、東京電力福島原発が事故を起こすなどとは誰もが思いもしていなかったし、安倍第2次内閣ができるとも考えていなかった。8年にわたる安倍内閣により、日本の名目国内総生産(GDP)は12年の6兆から5兆まで収縮した。経済規模において、中国は拡大して日本は収縮し、日本経済の収縮は予想を上回る速さだった。 

40年前の改革開放初期にあった中日の経済格差は一変し、急速な発展と喪失のコントラストはますます鮮明になっている。日本は対中経済関係の再調整が必要で、経済安全保障を追求し始めた。 

中日経済の優位性による相互補完とは、換言すれば、日本の技術と資金が中国市場の形成と成長、急速な発展を手助けし、巨大な中国市場が日本経済の失われた2030年に、人々の経済生活面で大きな悪化が起きないよう支えたということだ。だが、新たな中日の経済関係を構築する過程において、優位性による相互補完の長所は次第に弱まってきている。半導体において中国の発展を制限し、そのほかのハイテク分野で中国とデカップリングを行うことは、今後の日本の政策選択で重要な内容となるはずだ。 

ハイテクなどでの中日競争 

日本の対中経済政策が、今日ほど中国との取引を厳しく制限したことはない。今月23日に正式に施行される先端半導体製造装置などの中国への輸出規制は、中日の経済関係を優位性による相互補完から競争へと向かわせるもので、特にハイテク分野での激しい競争の始まりを告げるものだ。 

中国が半導体分野で日本を追い掛けるのは、確かに非常に難しい。だが第2次世界大戦後、中国が日米などによる経済制裁を経験したのは、何も初めてのことではない。1950年代と違い、現在の中国は世界で最も多くのエンジニアと研究開発者を抱えている。もっと違うのは、市場経済が巨大な役割を発揮しており、周辺諸国と極めて緊密な貿易関係を持っていることだ。 

この数十年、中国市場は徐々に強化され、参入企業は大胆に投資し生産を拡大すると同時に、技術の導入開発を望んできた。中国の生産は国際社会と有機的につながっており、より柔軟な生産方式で市場のニーズに対応できる。デカップリングや経済安全保障体制の下、このような有機的なつながりが分断され始めると、中国国内の産業チェーンが強化されることになる。中日は半導体や電池、5G(第5世代移動通信システム)、AIなどの分野で産業チェーンを構築しており、両国の産業チェーン間には競争関係が形成され、地域間の新たな競争が生じている。 

中国企業が優位な電池分野 

日本の企業は電池の分野で非常に多くの特許と生産技術を有しているが、電池の製造工場が不十分だ。パナソニックやトヨタが電池産業に投資しているが、中国企業の投資規模や研究開発のスピード、市場の利活用ぶりと比べると、その差はかなりある。筆者は、米ニューヨークタイムズ紙5月16日付の記事、「中国と何らかの形で協力しなければ、直接的であれ間接的であれ、電気自動車の分野で成功を収めることは不可能だ」に注目した。 

中国の電気自動車市場の規模と輸出規模は、いずれも日本企業の比ではない。電気自動車の中国での普及は、電池(バッテリー)が中国で発展した結果だが、逆に電気自動車の中国での発展も促した。電池もそうだが、他の産業もまたしかりだ。 

デカップリングや経済安全保障による影響を回避し、新たな自力更生の道を歩もうと、いま中国企業は努力している。


山東省青州市の経済開発区にあるロボットアーム製造工場(vcg)

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