ベトナムでの競争を協力に ASEANへ商機拡大に注目

2024-02-04 10:17:00

10日は春節(旧暦の元日)だ。現在、日本では旧暦で元日を祝う地方は少なくなったが、東アジアや東南アジアの多くの地域、中でも華人が多い地域には春節の習慣が色濃く残っている。中でもベトナムが春節(テト)を重視する程度は、決して中国に劣らない。中国とベトナムは陸と海でつながり、風俗習慣も近い。それは春節を過ごす習慣からも良く分かる。 

ベトナムを重視しているのは、中国だけでなく日本も同じだ。政治や軍事、外交の面からベトナムの役割を評価しようとする人は多い。だが筆者は、経済ニュースに携わるジャーナリストとして、経済の面からベトナムを見て、またベトナムから東南アジア諸国連合(ASEAN)を見て、中日とベトナム、そしてASEANの経済関係を分析したい。 

日本は特に経済安全保障を強調しているが、経済活動そのものは多国間の協力とウインウインが必要だ。ベトナムやASEANの問題で中日は競争もあれば、協力の基盤もある。 

対越経済関係を重視の中国 

昨年の中越と日越の貿易の最終データは、今月には発表されるだろうが、ベトナムを重視する中日両国の対外経済政策においてその内容は重要だ。 

駐ベトナム中国大使館の経済商務処が、中国商務部の公式サイトに発表したデータによると、昨年1~10月の中越間の貿易総額は約1400億で、中国はベトナムにとって最大の貿易相手国だ。また中国はベトナムの輸出入総額の2488%を占め、ベトナムにとって第1位の輸入国であり、第2位の輸出国だ(第1位は僅差で米国)。 

筆者の試算では、昨年1年間の中越貿易は約1700億だ。国際通貨基金(IMF)の見通しによると、ベトナムの昨年の国内総生産(GDP)は4333億で、4兆2308億の日本の10分の1程度だ。一方、ベトナムの対中貿易額は日本の対中貿易額の2分の1相当だ。2022年の中日の貿易総額は3574億で、昨年は大幅に縮小しており、筆者の見通しでは約3200億だ。このことからも、ベトナムと中国の経済関係は日越のそれを大きく上回っていることが分かる。 

ベトナムは、日本が主導する環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)の加盟国であり、また地域的な包括的経済連携協定(RCEP)にも積極的に参加している。中国はベトナムとの貿易を重視し、国際貿易の面でベトナムの有利な条件をうまく利用しなければならない。商務部が発表した関連データによると、昨年1~10月における中越の貿易収支は、中国が400億の黒字状態にある。 

中国が主要国との貿易で最大の黒字を得ている国は米国で、その次がベトナムだ。対米対越貿易の黒字で対韓対日の重要な機械分野での貿易赤字を補填し、またオーストラリアやブラジル、ロシアおよびマレーシアなどの国々に対するエネルギーや原材料面の貿易赤字を穴埋めすることで、中国の貿易はおおむねバランスを維持し、わずかな黒字となっている。 

貿易面だけを見れば、中国が今後ベトナムとの関係をいっそう重視し、対ベトナム投資を強化し、ベトナムとの貿易を通じて他国(主に米国)との貿易摩擦を緩和し、中国の一部の生産能力を移転することが、今年はさらに重要となるだろう。特に昨年12月に開かれた中央経済活動会議の後、中国はハイレベルの対外開放を拡大し、中国とベトナムの貿易経済関係もさらに発展する新たな機会を得た。 

日本第2の投資国ベトナム 

中国から見られる日本のメディアの報道では、日本のメディアは昨年、日本が開発途上国向け政府開発援助(ODA)を政府安全保障能力強化支援(OSA)に拡張したことに特に注目し、このような方法によってASEAN諸国と中国が軍事的な対立を引き起こすことを強調しているように感じられる。日本のASEAN諸国に対する重視、とりわけベトナムを重視していることについて中国で得られる報道は多くない。 

筆者は、日本の国際協力銀行(JBIC)が昨年12月に発表した『わが国製造企業の海外事業展開に関する調査報告』(2023年度海外直接投資アンケート調査結果)に注目している。そこから読み取れた重要な特徴とは、日本企業が今後3年間に有望視する投資国ランキングに、ベトナムが22年の4位から中国と米国を抜き、首位のインドに次ぐ初の2位に浮上したことだ。ベトナム中国米国の3国の得票率は大差ないが、ベトナムの躍進の速さは想像を上回るものだった。 

日本企業から見ると、ベトナムの人件費の優位性が高まっている。ベトナムは文化的に中国に近く、教養レベルも労働者のスキルも高い。中国の人件費が徐々に上昇すると、労働集約型の企業は当然、中国からベトナムへの工場移転を選択するし、中国の相当数の企業もそうしている。インドに不確定要素が多く存在すれば、もちろんベトナムは日本企業の重点投資対象国となる。日本企業にとって、こうした要素は今年も変わることはないだろう。 

インフラ構築で協力可能 

中日は共にベトナムを重視しており、同時にベトナムへの投資も強化している。これにより、ベトナムには鉄道空港港湾など一連の社会インフラのニーズが生まれている。中日両国共に社会インフラ分野の技術先進国として、ベトナムで協力する 

チャンスがある。またベトナムだけでなく、両国はベトナムを通じてASEAN諸国全体に健全な社会インフラの整備や現地の工業生産力の活性化を広げることができ、そこには巨大なビジネスチャンスがある。 

日本企業の中国における管理経験や中国企業の国内での管理方法、また両国の企業がベトナムで直面した問題とその解決方法などを共有することで、中日の企業は共に歩むことができる。もしベトナムの地で中日の企業協力が実現できれば、両国の企業がASEANのその他の国で経済活動の場を広げるための良好な基礎を築くことができる。 

べトナムは、国土面積総人口共に日本よりやや少ないものの、ASEANの大国である。ベトナムの生産能力などは数年以内に飽和状態となるかもしれないので、産業を海外移転し、中日などの先行国から関連する経験を学ぶ必要がある。 

中日とベトナムの経済関係、競争と協力にはどのような変化があるか――今年は特に注目される。 

 

陳言Chen Yan) 

日本企業(中国)研究院執行院長。1960年生まれ、1982年南京大学卒。中日経済関係についての記事、著書多数。現在は中国外文局アジア太平洋広報センター副総編集長。

 

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