中国企業が学ぶべきもの なお存在する日本企業の特徴とは?
文=陳言
今年の10月1月から8日までの中国の大型連休の間、筆者の周りでは友人の多くが日本を旅した。そのうち、大半の人々が東京や大阪といった人気の都市だけでなく、筆者のように長年日本で暮らした経験のある者ですら訪れたことのない地方都市に行き、よりディープな日本旅行を楽しんだ。
帰国した友人たちに日本を訪れた感想を聞くと、彼らはそれらの地方都市で、自分たちにとってなじみの深い20~30年前のような趣を見いだしたようだった。それは例えば、日本の寺院などの古跡の中に古代中国の文化的影響が見られ、一種の心の安らぎを感じるといったようなことだ。中国からの観光客は、数年前まで日本で「爆買い」に励んでいたが、現在では一家3人もしくは4人で日本を訪れても、キャリーケースを一つしか持っていかず、旅行中にたくさんのお土産を買うこともない。なぜなら、日本製品を購入するなら、北京もしくは上海の日系スーパーに行けば大概のものがそろっており、値段もそこまで高くないからだ。日本旅行は今や寺社仏閣などを巡って古き良き趣に触れ、心の癒やしを求めるものへと変わりつつある。

筆者のように40~50年間にわたって日本と関わり続けてきた者にとって、若い友人たちの話に耳を傾けるのはもちろん楽しいものだが、それと同時にいくばくかの違和感も感じてしまう。すなわち、彼らは日本を訪れても、もはや日本から何かを学ぼうとしないのだろうか、彼らは日本の製造技術や社会の仕組みの特徴を、しっかりと見てきたのだろうかといった懸念だ。
この違和感の根本にあるのは、われわれは今日、日本から一体何を学び続けるべきかという問いである。
日本の技術と企業マネジメント
1980年頃、筆者は日本の訪中団が大学で交流活動を行うために来ていた際、4色ボールペンをもらったことがあった。どの色も途中で書けなくならず、四つの色のインクを最後まで使い切ることができたのは、筆者にとって初の経験だった。その後、日本の友人がカラー写真を送ってくれた。それは、筆者にとって人生で初めて手にしたカラー写真だった。
同じく80年代、筆者が購入した家電はいずれも日本のブランドのものだった。当時、日本製品は中国の消費者から高い評価を受け、トヨタの「ジャストインタイム」や松下電器(現在のパナソニック)の「水道哲学」といった日本企業の経営モデルは、中国人にとって翻訳・学習し、目指すべき具体的目標だった。
筆者はスマートフォンの時代となっても相変わらず日本製品を愛用し、数年前までソニーの携帯電話を使っていた。だが、原稿書きでは、ここ数年でいつの間にかアップル製品を使うようになったことに気付いた。筆者は元来、ソニーが持つ音楽や映像コンテンツ、機敏な製品開発力に大きな信頼を寄せ、ソニー製のスマートフォンはアップル製よりも優れているはずだと考えていたが、筆者のような古くからのソニーユーザーも結局離れざるを得なくなった。実際、日本を訪れて長い付き合いの友人たちに会うと、今やソニーのスマートフォンを使っている者は誰一人としていなかった。
日本のIT企業は半導体やメモリ、ノートパソコンなどの分野でかつては世界最先端の地位を占めていたが、その栄光は過去数年でたちまち失われた。また、日本のメディアの報道によれば、ここ数年の日本企業の人工知能(AI)への投資は、大部分が米国に投じられ、日本国内向けは決して多くない。さらに、日本の企業家には、中国のBATH(百度、アリババ、テンセント、ファーウェイ)を超えるITプラットフォームを打ち立てようとする決意が今なお見られず、ましてや米国のGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に匹敵するものを生み出す意欲は感じられない。
日本研究に携わる数多くの中国の学者は、依然としてトヨタがバッテリー技術において先行的地位を保っていると強く信じているが、トヨタが電動自動車(EV)分野で中国企業を上回るはっきりとした傾向は今なお見られない。ソニーがiPhoneを超えるスマートフォンを生み出せるというかつての期待は水泡に帰したが、これまでに米国のゼネラルモーターズやドイツのフォルクスワーゲンを上回り、世界最大の自動車メーカーとなったトヨタが、EV時代においても引き続きその地位をキープするとの期待は、果たして今後実現するのだろうか?
日本企業が家電やデジタル製品、ガソリン車で一世を風靡して以降、スマートフォン、IT、AI分野で世界が注目する製品を生み出せていないのは、日本企業の製品開発や生産プロセスに問題が生じており、それを解決する上で困難があるためかもしれない。
だが、日本企業は基礎材料やきめ細かな企業マネジメント、グローバル経営などの面で、今なお強みを持っている。では具体的に、今日の中国企業は日本企業から何を学ぶべきなのだろうか?
日本企業の長所とは?
大規模生産やコストの迅速な削減が中国の製造業の特徴である一方、技術は日本企業の特徴だ。技術を土台として、日本独自の材料産業は一貫して発展を続け、今日もなお中国向けの主要輸出国の地位をキープしている。また、輸出される製品は大規模生産による化学工業製品ではなく、数量や種類がさまざまな基礎化学工業材料や機能性化学工業材料である。われわれにとって日常生活の中で接する機会のないこれらの分野は、中国の膨大な範囲に及ぶ工業体系と密接なつながりを保っている。これらの基礎材料の安定的な供給がなければ、中国の製造業が円滑に運営されることなど、まるで考えられない。
筆者はこれまで日本企業を取材してきた中で、経営者が自社の歴史について語るのを好み、そのような企業の多くが明治、大正、昭和の創業であることに気が付いた。一方、中国企業の取材では、経営者が創業時のエピソードを語ることは少ない。中国の場合、創業時期が比較的古い企業でも1980年代か90年代であり、より多くの企業がここ20年から30年の間に設立されている。一企業が百年にわたって倒産せず、存続するためにはどうすればよいのかを考える上で、日本企業の安定的な経営理念は参考となる。すなわち、何らかの「技」をベースとし、特定の事業分野に専念して、必ずしもお金もうけだけを事業目的にしないといった日本企業の特徴には、中国企業が長く学ぶべきものがあると筆者は考える。
国内市場で競争が激化する中、多くの中国企業は海外進出を考え始めている。だが、そのような現象が急に進めば、海外でも中国企業同士がしのぎを削ることになる。日本企業による海外投資では、基本的に海外市場における自国企業同士の競争が生じておらず、安定的に投資収益を得ることができており、現在では投資収益が製品輸出による利益を上回るのが常となっている。このような点も中国企業にとって学ぶ価値があるはずだ。
ただ、残念なことに、今日日本を訪れる中国からの観光客の多くは、日本を深く観察する機会がほとんどない上、日本が進める中国とのいわゆる「デカップリング」や「サプライチェーン断絶」といった経済安全保障政策は、両国経済の溝を広げつつあり、このような現状を変えるのは日増しに難しくなっている。
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